Bリーグ1部の「B1」に、また新たなチームが足跡を刻んだ。2022-23シーズンにB2で優勝を飾り、Bリーグ参入から5シーズン目にして初のB1昇格を果たした佐賀バルーナーズである。
5日、ホームのSAGAアリーナに昨シーズンB1で初の頂点に立った琉球ゴールデンキングスを迎え、2023-24シーズンの先出し開幕戦を実施。会場には平日夜にも関わらず7,022人もの観客が詰め掛け、佐賀県内の盛り上がりが垣間見られた。
一方、試合は63ー80で敗れてB1初勝利とはならなかった。オフシーズンに208cmで実績のあるベテランビッグマンのジョシュ・ハレルソンが帰化し、サイズ感が格段に向上。オフェンスの起点となる在籍4シーズン目のレイナルド・ガルシアも健在だ。“王者”を相手に何が通用し、何が力の差となって表れたのか。クラブにとって歴史的なゲームとなった一戦を振り返る。
第2Qで一時リード 3P成功わずか2本で突き離される
序盤はガルシアが「開幕戦のプレッシャーもあり、ちょっとチームが固かった」と振り返った通り、ワイドオープンなシュートを外す場面もあり、試合開始から5分が経過した時点で得点はわずか5点。琉球も決して連係が良かったわけではないが、岸本隆一に「4点プレー」を決められるなどして先行された。
流れを変えたのは、今季加入したヨーリ・チャイルズと佐賀県出身の角田太輝だ。ショットクロックの不具合で5分ほど試合が中断した後、チャイルズがゴール下で力強さを見せて加点。再び差を離されたが、角田が左45度からプルアップで3Pを沈め、続くオフェンスでは角田のプッシュに合わせたチャイルズが豪快にダンクを決めた。
第1Qを2点ビハインドで終えると、第2Qではハレルソンやチャイルズがミスマッチを突いて得点を重ね、一時リードを奪った。その後は琉球に高確率で3Pを沈められ、一気に二桁点差まで離され、11点を追って折り返した。
後半はハレルソンや日本人ビッグマンの満原優樹を一緖に起用するビッグラインナップでゾーンディフェンスを仕掛け、一定の効果を発揮。しかし、3P成功率がチームでわずか8.0%(25本中2本)のとどまったことが響き、最後までほぼ二桁点差を維持されて敗れた。
スタッツはチャイルズが23得点、5リバウンド、ガルシアは15得点、5アシストと存在感を発揮。ハレルソンは12リバウンド、角田は5得点、5リバウンド、4アシストを記録した。
角田太輝「もっとアタックしてワイドオープンを」
試合後の記者会見。宮永雄太HCは冒頭の総括で「初めてのB1の試合で、王者の琉球と初戦でやれたことは我々にとって非常に大きな一歩になったと思います」と語った。試合内容については、こう続けた。
「すごく経験の差が出たと思います。シュートの確率もそうですが、ハーフコートで落ち着いてしっかりと組み立てていた琉球のオフェンスが素晴らしかったです」
シュート成功率については、ガルシアも「差を感じたのはシュートの違い。自分たちもディフェンスをハードにやって最初は大差が付くことはなかったんですけど、途中からシュートが入らなくなった。30%でも入ってくれたら、違う結果になったかもしれないです」と悔やんでいた。
要因として経験の差や開幕戦での固さもあるかもしれないが、角田の分析が最も的を射ているだろう。ペイントタッチからのキックアウトでフリーをつくり、40本中14本の3P(成功率35.0%)を決めた琉球と比較し、こう語った。
「琉球はワイドオープンでシュートを打っている場面が多かったけど、こちらは絶対にコンテストされた上でのショットになってしまっていました。もっとアタックするところはアタックして、ハーフコートでワイドオープンをつくることが必要だと思います」
2シーズン連続でB1のベスト3P成功率賞を獲得したことがあり、今シーズン加入した狩野祐介も厳しいチェックを受けて3Pが3分の0。角田が指摘するように、ドライブの意識を高めて外のフリーを演出するプレーがより求められそうだ。
速攻とペイント内の得点で圧倒 “気球”ばりの存在感を
一方、指揮官や選手からは収穫も聞かれた。
「琉球のヴィック・ローやアレン・ダーラムは割とスモールサイズなので、(チャイルズが)インサイドで体を張って得点してくれた。そこはもう少し展開の中で狙っていきたいです」(宮永HC)
「オールコートでプッシュして途中流れをつくることができ、通用することが分かった。他チームとやる時もそこはどんどん出していき、突き詰めていきたいです」(角田)
2人の言葉通り、ペイントエリア内の得点は38対14、ファストブレイクポイントは15対2といずれも琉球を圧倒。3Pとは対照的に、2P成功率は自軍が51.2%だったのに対して琉球を37.0%に抑え込み、ゾーンを中心にディフェンスも効果を発揮していた。リバウンドやターンオーバーの数もそこまで大きな差がなかったため、3Pの部分を改善できれば7日の第2戦は十分に勝機があるだろう。
佐賀にとって、新たなステージでの挑戦はまだ始まったばかり。ガルシアも淡々とした表情で「自分たちはB1でも戦えることができるぐらいのチームだと思っている。まだレギュラーシーズンは59試合残っているので、これからもステップアップしていきたいです」と飛躍を見据える。チーム名の由来である“気球”が大空へと舞い上がり、見る者の視線を釘付けにするように、B1でも少しずつ存在感を高めていきたい。
(長嶺 真輝)