Bリーグ1部(B1)は23日と24日、各地でレギュラーシーズンの第27節が行われ、西地区7位の大阪エヴェッサはアウェイのホワイトリング(長野市)で中地区7位の信州ブレイブウォリアーズと対戦。第1戦は89-86、第2戦は78-70と両日とも接戦を勝ちきり、敵地で貴重な連勝を飾った。
第2戦ではショーン・ロングが両チーム最多の33得点、アンジェロ・カロイアロが17得点したほか、新加入のイ・ヒョンジュンも得点こそ5得点に留まったものの、要所で3ポイントシュートを沈めるなどチームの勝利に貢献した。
NBAステフィン・カリーの母校出身「50-40-90」も達成
19日に韓国出身のイ・ヒョンジュンとの契約を発表した大阪エヴェッサ。ヒョンジュンはチームに加入するやいなやスターティングメンバーで起用され、ここまで3試合で平均25分37秒の出場で14.0得点をマークしている。特に注目すべきは初陣となった20日の琉球ゴールデンキングス戦。前年王者相手に3本の3ポイントシュートを含む24得点を記録。試合には惜しくも敗れたが、鮮烈なデビューを飾った。
現在23歳のヒョンジュンは201cm、95kgと恵まれた体格を持つシューターだ。オーストラリアのNBAグローバル・アカデミーを経て、NBAゴールデンステイト・ウォリアーズで活躍するステフィン・カリーの母校でもあるデイビッドソン大学(NCAAディビジョン1)に進学。2年次の2020-21シーズンでは、フィールドゴール成功率が50.8%(195本中99本)、3ポイントシュート成功率が44.2%(120本中65本)、フリースロー成功率が90%(50本中45本)という成績を残し、優れたシューターの証である「50-40-90」を達成した。3年次には全米チャンピオンを決めるNCAAトーナメント「マーチ・マッドネス」にも出場している。
22年にはNBAドラフトへアーリーエントリーをし、NBAウォリアーズ傘下のGリーグチームであるサンタクルーズ・ウォリアーズでプロキャリアをスタートさせた。今季は昨年7月にNBLイラワラ・ホークスに加入し、32試合に出場。1試合平均7.3得点、3.7リバウンド、0.9アシストというスタッツを残した。
大阪の黒木雄太ゼネラルマネージャーによると、「かねてからリストアップして注目していた選手」で、ヒョンジュンが所属するチームが3月中旬にシーズンを終了したことで、直ちに移籍すれば登録期限に間に合う状況であったことや、自身の成長の場を求めるヒョンジュンとクラブ側の意向が一致したことで今回の加入に至ったという。
要所でショット沈め信州戦2連勝に貢献
信州戦でも琉球戦同様に素晴らしい活躍を見せたヒョンジュン。第1戦ではターンオーバーやファウルトラブルに苦しみながらも、13得点をマーク。残り1分22秒には逆転3Pショットを沈め、チームの勝利に貢献した。第2戦では5得点に留まったものの、第4Q残り6分53秒に同点となる3Pを決めるなど、要所での活躍が光った。
第2戦は終始大阪が試合をコントロールしていたものの、第4Q残り7分16秒で信州に初めて逆転を許す展開に。さらに、その流れを断ち切るべくマティアス・フィッシャーヘッドコーチがタイムアウトを要求したが、オフィシャルに伝わらずプレーが続行。それを審判に抗議した結果テクニカルファールとなり、信州に流れが傾いていた場面だった。その悪い流れを断ち切ったのが前述のヒョンジュンのショットであり、勢いに乗ったチームはそこから16-8と試合を締めくくった。
値千金のショットについてヒョンジュンは「アンジェロ(カロイアロ)が自分のことを信じてくれてパスを出してくれたし、ショーンが良いスクリーンをかけてくれてシュートを決めることができたのでチームには感謝したい」とチームメイトに感謝。続けて、「自分は世界一のシューター、リーグ一のシューターだと思っているので、あの場面で決めるのは当たり前だと思っている。しっかりと信じてどんどんシュートを極めていきたいなと思う」と自信をのぞかせた。同時に「今日の試合の中で自分自身がセルフィッシュ(自分勝手)にプレーしすぎたかなというのがあった。シュートもポンポン打ってしまったので、それをチームに謝りたい」と今後の課題も口にした。
Bリーグで武者修行「すごく新しい経験ができている」
Bリーグデビューからわずか3試合で存在感を放つヒョンジュンだが、将来的にはNBA挑戦の道を模索しており、夏に行われるNBAサマーリーグに向けてさらなる成長を望んでいると報道されている。武者修行の舞台に選んだBリーグについては「自分のキャリアの中でバック・トゥ・バック(2日間連続)で試合することは今までなかったことなので、体力的にもフィジカル的にもすごく新しい経験ができている」と充実感を見せる。
指揮官も「非常にタレント性があるし、まだまだ若い選手でもある。オフェンス面ではすごい武器を持っているし、コーチングもすごくしやすい選手。こちらからインプットをしてもよく聞いているし、それを遂行しようとコートでも表現している。まだ2回しか練習できていないので上手くいかない部分はあるが、これからチームとして一緒に練習したら、彼のリズムや役割を見つけてくれると思う」と熱い期待を寄せる。
ハ・スンジン以来2人目となる韓国人としてのNBA入りを目指し、韓国代表としても未来のエースとして活躍が期待されているヒョンジュン。BリーグではNBAでのプレーや各国代表としてのプレーを経験している選手も多く、個人としての成長を求めるヒョンジュンにとっては悪くない環境だといえる。
「バスケットボールはチームスポーツなので、チームの役割や担当している部分をしっかりとこなしていきたい。オフェンスの部分では1on1のスキルなどを上達させていきたい。ディフェンス部分はどういうふうにマッチアップするのか。スクリーンが来たらチェイスしないといけないし、フィジカリティであったり、ディフェンスの部分をしっかりと改善していきたいと思う。自分は2メートルを超えているので、ショーン(ロング)やアンジェロをディフェンスだけじゃなくてリバウンドでも助け、チームに貢献してこれからも頑張っていきたいと思う」
自身のエゴだけでなくチームや仲間のことも思いやれる人間性からか、既にチームからの信頼も厚いヒョンジュン。信州戦で2連勝に貢献したように、チームの勝利を助けることができれば、それもバスケットボール選手としての評価につながることは間違いない。さらなる成長を見せ、韓国人選手として史上2人目のNBA選手になれるか。残り15試合でのヒョンジュンの活躍に注目だ。
(芋川 史貴)