“エースストッパー”小酒部泰暉がアルバルク東京5年ぶり王座復権のカギとなるか
千葉Jの富樫勇樹(手前)にマッチアップするアルバルク東京の小酒部泰暉©Basketball News 2for1
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 Bリーグ1部(B1)は23日と24日、各地でレギュラーシーズンの第26節が行われ、アルバルク東京(東地区2位)はホームの国立代々木競技場第1体育館で千葉ジェッツ(同3位)と対戦。第1戦を81-62で勝利、第2戦を69-70で惜敗し、千葉Jとの東地区上位対決を1勝1敗で終えた。

“宿敵”千葉J相手に連敗ストップ

 23日の第1戦。この対戦を前に35勝8敗とリーグ戦で好調を維持しているA東京だったが、対する千葉Jも1月から2月にかけては12連勝を記録。3月には昨シーズン史上最高勝率を達成した時のメンバーであったクリストファー・スミスもチームに加わり、東アジアスーパーリーグ(EASL)と天皇杯で2冠を達成するなど、上昇気流に乗っていた。A東京は1月に船橋で行われた今季初対決を含めて、2022年10月8日から千葉Jに6連敗を喫していただけに、ホームで負けるわけにはいかなかった。

 9,823人が詰めかけた第1戦は、第1クォーターにA東京が23-20とリードを奪って終えると、第2Qは開始から約5分間で14-4のランをつくる。10点リードで迎えた後半、一時は千葉Jに5点差まで詰められるも、堅いディフェンスと確率の高いオフェンスで再びリードを二桁に広げる。その後は一度もリードを失うことなく、終始試合をコントロールしたA東京は81-62で勝利。ビッグマンのアルトゥーラス・グダイティスをケガで欠くなど不安要素もあったが、“宿敵”相手に533日ぶりに白星をつかんだ。

 試合後の会見では千葉Jのジョン・パトリックHC「今日は19点差だったが、(内容としては)40点差ぐらいの試合だった」とコメント。A東京のデイニアス・アドマイティスHC「遂行力という点で、よくできたと感じている。それを千葉Jに対してできたことがポイントだったと思う」と語ったように、A東京が千葉Jに対して完璧な対策を行い、選手が完璧にプランを遂行したことで、点差以上の強さを感じさせる一戦となった。

「トップクラスのディフェンダー」富樫勇樹も称賛

 第1戦で特に活躍を見せたのが、小酒部泰暉だ。今シーズンはここまで平均5.5得点、1.8アシストと、昨シーズン(平均7.6得点、平均2.2得点)よりもスタッツは下降しているものの、この試合では10得点4リバウンド2アシストを記録。さらには千葉Jのエース富樫勇樹に対して1ブロックを記録しており、攻守でチームを引っ張る活躍を見せた。

 スタッツの減少について小酒部は「スタッツに残らないところも、チームに必要なところなので、自分だけではなくチーム全体で意識をできている。そういうところは引き続きチーム全体で意識をしていきたい」と語り、個人の活躍よりもチームの勝利にフォーカスできていることが勝利を積み重ねる要因になっていると語った。

 アドマイティスHCも小酒部の成長について「エネルギーとフィジカルを兼ね揃えている選手であるが、それ以上にコーチが求めたことをミスを非常に少なく遂行できるという点で、かなり良いプレーヤーになってきていると感じている」と評価している。小酒部自身も「アドマイティスHC体制2年目となり、コーチのやりたいことをチーム全体が遂行できている」と語るなど、チーム全体で指揮官のシステムにフィットをできていると手応えを語った。

記者の質問に答えるデイニアス・アドマイティスHC©Basketball News 2for1

 実際に小酒部自身のスタッツも得点・アシスト数は減っているものの、ターンオーバー数は昨季の約1.3本→約0.7本と半減、3P成功率も29.8%→36.2%に大きく向上させている。ミスが少なく要所で活躍が期待できる選手に成長しており、アドマイティスHCが高く評価をするのもうなずける。

 また、オフェンス面だけではなく、ディフェンス面での活躍も光っており、第1戦では今シーズン平均18.7得点をあげていた富樫を11得点(FG4/14)に抑えた。敗れはしたものの、第2戦でも富樫を10得点(FG5/16)に抑えており、3Pは2試合で16本中1本のみの成功に抑えた。小酒部は富樫とのマッチアップについて第1戦後、「11点は結構やられてしまったと個人的には感じている」と満足はしなかったものの、チームの勝利に大きく貢献したことは一目瞭然だった。

 もっとも、富樫自身がBリーグのレギュラーシーズンでは直近5試合での3P成功数が33本中2本とスランプに陥っており、今後調子が上がってきた際にどれだけ富樫を抑えられるかは注目ではあるが、富樫も「小酒部選手はリーグでもトップクラスのディフェンダー」と認めており、今後の活躍が注目される。

小酒部のディフェンス力は富樫も認める©Basketball News 2for1

5年ぶり王座奪還へ注目の終盤戦

 第2戦は千葉Jに1点差で惜敗したものの、A東京は36勝9敗で東地区2位につけ、リーグ首位の宇都宮ブレックスに2ゲーム差に迫っている。4月には宇都宮との直接対決を2試合、千葉Jとの対決も1試合残しているだけに、そこで勝利を挙げることができればチャンピオンシップ(CS)での第1シードの獲得も夢ではない。

 宇都宮には比江島慎、千葉Jには富樫勇樹と、同地区のライバルチームには絶対的な日本人エースが所属している。こういったチームに勝ち、CSで5年ぶりの優勝を目指すA東京にとって、小酒部泰暉がステップアップできるかどうかは大きなファクターになるだろう。

 この2シーズンはCSのクォーターファイナル、セミファイナルで苦杯を飲んだアルバルク東京。2019年以来の王者復権へ、攻守でカギを握る小酒部の終盤戦の活躍に注目したい。

(田中 隼翔)

ハドルを組むアルバルク東京の選手たち©Basketball News 2for1

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