Bリーグ1部(B1)は20日から21日にかけて各地でレギュラーシーズンの第18節が行われ、東地区首位のアルバルク東京はアウェイの松本市総合体育館(松本市)で中地区7位の信州ブレイブウォリアーズと対戦。第1戦は信州に一度もリードを許さず、87-57と圧倒した。一夜明けての第2戦では、第4クォーター(Q)中盤まで互角の展開となるも、最後は堅守から得点を重ね83-61で勝利。連勝を7に伸ばした。
第2戦では激しい守備から試合の流れを引き寄せた橋本竜馬をはじめ、レオナルド・メインデルが3Pシュート3本を含む19得点、セバスチャン・サイズが16得点15リバウンドを挙げるなど4人が二桁得点を記録した。
27勝4敗の基盤は「ディフェンスとコミュニケーション」
第18節終了時点でA東京は27勝4敗とし、三遠ネオフェニックスと並んでリーグ最高勝率を誇っている。同地区2位の宇都宮ブレックスにも3ゲーム差をつけており、東地区首位の座は譲らない。デイニアス・アドマイティスヘッドコーチ(HC)は好調の要因について「ひとつ取り上げるとしたらディフェンスだと思う。昨年よりしっかりと我々のチームは成長して、そこのディフェンスの部分でも強度が上がり、それが結果に繋がっていると思う。しっかりと選手、チーム全員で我々のやりたいディフェンスを遂行している結果、現在の順位にいると思う」と分析する。
現在、A東京の平均失点数は66.3(リーグ1位)、ディフェンシブレーティング(DRtg:100ポゼッションでの平均失点)は96.3(同1位)とリーグ屈指のディフェンスチームとなっている。昨季も平均失点数が71.0(同1位)、DRtgが104.4(同5位)であり、リーグ有数のディフェンスチームであったが、そこからもう一段階ディフェンスが進化しているのは驚異的としかいいようがない。
その中でも、サイズ、ライアン・ロシター、メインデル、アルトゥーラス・グダイティスのビッグマン勢は各チームにとって脅威となっている。第2戦ではチーム全体で47本のリバウンドと36本のフリースローを獲得。内ビッグマン4人でのスタッツはリバウンドが38本(80.6%)、フリースローが28本(77.8%)を占めていた。第4Qの中盤まで接戦を繰り広げていた信州も、ジャスティン・マッツやデオン・トンプソン、マシュー・アキノといったビッグマンが次々とファウルトラブルに陥り、A東京はその穴を的確に突いていた。
しかし、強さの理由はディフェンスやビッグマンの活躍だけではない。キャプテンのザック・バランスキーは「コミュニケーションを全員でしっかりとれていることがすごくいい。今シーズン新しい選手が5人加わった中で、元々いる選手とのコミュニケーションを最初からしっかり取ろうという意識が強く、チームになっていくのが早く感じた」という。
バランスキーは続ける。
「それぞれのキャリアですごい成績を残した選手とかが集まっている中で、みんなチームのために自分のエゴを捨てるときもあれば、チームのためにエゴを出すときもある。常にチームのために 『何が一番いいか』と考える選手が集まった結果、今、いい結果を残せているのかなと思う」
流れを引き寄せるプレーを連発 橋本竜馬の存在感
外国籍に限らず、日本代表でも活躍を見せた吉井裕鷹をはじめ、小酒部泰暉、テーブス海など若いタレントも多い。その中で、堅実にプレーするベテラン・橋本竜馬の存在感も光っている。特に信州との第2戦では試合終盤まで拮抗した展開が続いていた中で、橋本が流れを引き寄せる場面がいくつもあった。
第2Qの残り4分12秒、23-25の場面。オフィシャルタイムアウト明けに、ディフェンスに捕まり、ターンオーバー。好守から得点を決めれば信州が流れをつかみそうな場面で、信州ボールのスローイン。橋本がボールを受け取ろうしていた石川海斗に激しくプレッシャーをかけ、スティールし、ファストブレイクでレイアップを沈めた。
第4Qの残り6分38秒。信州のロン・ジェイ・アバリエントスが3点差に迫る3ポイントシュートを沈めて、A東京がタイムアウトを要求。タイムアウト明け、テーブスに変わり橋本が投入されると、落ち着いたボールコントロールから小酒部の得点をアシスト。続くポゼッションでは、信州のターンオーバーから橋本が速攻でレイアップを沈め、相手に傾きそうな流れを断ち切った。その後も残り3分5秒にはリードを7点に広げるバスケットカウント・ワンスローを決めるなどして、相手を突き放すことに貢献した。
チームが最も必要な時に必要なプレーでチームを助ける橋本。35歳のベテランは自身のマインドセットについてこう話す。
「やはり、いいディフェンスからイージーバスケットっていうのはチームとしてコンセプトもあります。自分に限らず海もしっかりプレーをオーガナイズしていると思うが、そういったところで全員がそういう意思統一、自分たちのバスケットっていうのが分かっているからこそできると思っている。それが崩れた時間っていうのは今日もどうしても難しかった。その時間を少しでも短くして、自分たちのいい流れの時間を多くしなければいけないなっていうふうに毎回思っている」
今季、レバンガ北海道からA東京に移籍した橋本。シーズン前、A東京への移籍を「挑戦」としたと語っていたが、シーズンの半分を終えて「どこのチームに行っても難しさはあると思うし、それをしっかり自分が求めてきている。なので、そういったことに向かっていける楽しさだったり、そこを改善していったりとか、自分を見つめ直すというところではすごくよい時間になっている。今ある時間をすごく大切にしたいと思うし、こういう道のりをチームとして楽しみつつ、自分の人生の中でもよい時間にしていきたいなと思っている」と充実感を口にした。
激戦必至の後半戦「パーフェクトに近い戦い方を」
第18節を終え、レギュラーシーズンの折り返しを迎えたBリーグ。後半戦はチャンピオンシップ(CS)や優勝争いを目指し、激しい戦いが予想される。アドマイティスHCは今後に向けてこのように話す。
「昨日(第1戦)今日(第2戦)のタフな戦いをアウェイで勝てたことは非常に我々にとってプラスだと思う。今後の試合、残りの後半戦に向けて弾みが出る。土日の戦いに関しては、我々の5名の新加入選手もいるし、昨日今日の戦いは非常に今後のチームの経験、成長に繋がると思う」
指揮官は続ける。
「特に昨日のGAME1に関しては30点差で勝った。ただし今日のGAME2に関しては、前半やトータル的に簡単には勝てないということが我々もしっかりと見えたので、そういった部分でもメンタル部分。ここへのアジャスト。一戦目勝ってから簡単に二戦目を勝てるという形ではないので、特にフリースローの数字に関しては23/36と13本も落としている。そういった部分で今日のGAME2に関しては今後の我々の課題にも繋がる。いかに一戦目、二戦目で4Q、80分をなるべくパーフェクトに近い戦い方をすることが今後の我々の目標です」
東地区首位のアルバルク東京。昨季はセミファイナルで敗れ、3度目の優勝にはあと一歩届かなかった。橋本は「本当に積み重ねだと思う。自分たちが積み上げてきたものを崩さずにしっかりとまた上積みできるように、チームとしてよいバスケットを展開していきたいと思う。チャンピオンシップに向けてチームとしていい形を醸成していきたい」と後半戦への意気込みを口にする。
個々の能力だけに頼らず、積極的にコミュニケーションを取り、チーム一丸で前半戦を駆け抜けたA東京。リーグ首位の成績を残しながら、さらなる進化を追求するその姿勢こそが現在の強さに繋がっているのだろう。このままチームとして成長を続けることができれば、2019年以来の王座獲得も現実味を帯びてくることは間違いない。
(芋川 史貴)