バスケットボール男子日本代表(FIBAランキング26位)は25日、FIBAアジアカップ2025予選(Window1)で中国(同29位)に76-73で勝利。22日に行われたグアム(同79位)戦も77-56で勝利し、ホーム2連戦を連勝で終えた。
テーブス海(アルバルク東京)は2戦ともにベンチから出場し、グアム戦では約21分間の出場で7得点5リバウンド3アシストを記録。中国戦ではやや出場機会が減ったものの、約12分間の出場で5得点1リバウンド4アシストと存在感を見せた。
昨夏のワールドカップでは惜しくも代表入りを逃していたテーブス。アジアカップ2試合で見せた成長や心境の変化、今夏のパリ五輪への思いに迫る。
W杯前は「与えられた役割が果たせなかった」
「自分に与えられた役割を果たせなかったっていう意味で、落とされたんだなって理解しているので」
昨夏のW杯前、強化合宿に参加しながらも、最終的には12人の日本代表メンバーに残ることができなかったテーブス。ポイントガードとしては大柄は188㎝の長身を生かし、ドライブやペイントアタックからオフェンスをクリエイトできる能力は日本にとっても大きな武器となるはずだった。
しかし、ディフェンス力やターンオーバー、好不調の波が激しいなどの不安要素から、W杯ではロスター枠を勝ち取ることが出来ず。その後の日本代表の躍進は知っての通りで、テーブスが悔しさを感じていたことは想像に難くない。当時の状況について、テーブスはこう振り返る。
「やっぱり唯一サイズのあるガードとしては、ペイントアタックする。それから(オフェンスを)クリエイトする。オープンのシュートを決め切る。ディフェンスで流れを引き寄せる。そういうところを出来たときもあればできなかったときもあって、その波が激しかった。次こその安定性を保ちながら、その役割を果たせたらなと思います」
アルバルク東京での経験「プレー生きている」
悔しさや課題を持って挑んだ今シーズン。テーブスは滋賀レイクスからアルバルク東京へと移籍し、選手として大きな成長を遂げている。出場時間の減少によって得点こそ昨季の12.4得点から10.3得点と下がっているものの、フィールドゴール成功率(37.2%→41.4%)、3P成功率(29.2%→33.1%)、フリースロー成功率(71.9%→74.3%)などシュートの確率は軒並みアップ。ターンオーバーは昨季の2.9本から1.7本に減り、スティールでは自己最多の1.0本を記録するなど、安定性やディフェンス面での成長も見られる。
「全く違うバスケットをやってるとはいえ、やっぱりプロバスケット選手としての経験っていうのは間違いなく代表の方でもアルバルクの方でも生きてると思うので。常に経験を積み重ねていって成長していけたらなと思います」
課題の一つとなっていた判断力という部分でも成長を見せている。アジアカップの2試合では自身のペイントアタックや3Pショット、チームへのアシストなどをバランスよく組み込み、司令塔としてオフェンスをコントロール。2試合で7本のアシストに対しターンオーバーは1本のみに抑えるなど、高水準のプレーを披露した。こういったプレー面での成長も、A東京での経験が生きているとテーブスは話す。
「アルバルクでも別にシューターという役割ではないので、流れを引き寄せるシュートだったりとか、オープンだったら決め切る。そういう意味では、代表と変わらないかなと思いますし。自分にボールが回ってきたときにノーマークであればシュートを打つ。ディフェンスがいればドライブするっていうシンプルな判断。そういう意味では、アルバルクでのプレーも生きてるのかなと思います」
富樫勇樹・河村勇輝との同時起用が武器に
ポイントガードとしての成長はもちろん、「コンボガード」として新たな価値を発揮したことも収穫だった。アジアカップの2試合では富樫勇樹や河村勇輝とともに出場する機会も多く、そういったケースでは2番ポジションでプレー。ボールコントロールに加え、ペイントアタックから富樫や河村の3Pショットを演出する場面もあった。富樫や河村が得点力の高いガードなだけに、その得点機会をクリエイトできるテーブスの存在は、今後の日本の武器にもなりえる。
テーブスとの2ガード起用について富樫は 「ボールハンドラーがもう1人増えるっていうのは僕にとっては嬉しいこと。ああやってペイントにアタックして、僕がシューターというか、そういうふうな役割でシュートを決めた場面あったと思うので、すごくやりやすく感じました」 と手ごたえを口にしている。
トム・ホーバスヘッドコーチも中国戦後の記者会見で「ワールドカップではよく相手がうちのポイントガードにディナイしていて、よく2番・3番がボール運びをしていた。そこのパターンが足りなかったし、ウチのオフェンスのリズムがちょっと崩れていた。海がいたら全然崩れなくなった」と称賛。「あのコンビネーションはこれからまた使います」と今後の2番ポジションでのテーブスの起用を示唆した。
自身でもコンボガードとしての起用に手ごたえがあったようで、「2番としてでもトムさんが僕を使ってくれたのは本当に感謝してますし、その中で何とかアピールできたのは嬉しいです」と納得の様子。
「富樫選手と出てるのか、河村選手って出るのかって結構変わってくると思うんですけど、富樫選手と出ているときは、今日(中国戦の)試合前に言われたのは、自分がもうちょっと1番の役割を果たして富樫選手は逆にシュートを打つことに専念する。それも結構できたと思います。逆に、河村と出てるときは、本当に2ガードで2人でペイントアタックしながらゲームを組み立てるっていう意味でのコンボカードかなというふうに思います」
課題の一つだったディフェンス面についても「オンボールディフェンスもうまくなった」(ホーバスHC)、「あれだけサイズがあってある程度の2番の選手には普通に付ける体を持っている」(富樫)と評価を得ており、このアジアカップ2試合でパリ五輪代表選考への存在感をぐっと高めた印象だ。
トム・ホーバスHCも高評価「また使います」
今年7月開幕のパリオリンピック。日本代表の目標は「パリでプレーすること(ベスト8進出)」だとトム・ホーバスHCから発表された。世界のトップ12か国が参加するオリンピックの舞台では、ワールドカップ以上に来厳しい戦いが予想される。そんな中で、テーブスがアジアカップで披露したような活躍を見せられれば、ガードポジションに厚みをもたらす存在になることは間違いない。
テーブスの活躍には指揮官も期待を寄せる。
「海もうまくなった。多分、ワールドカップのチームに入れなかったのは悔しかったと思う。その経験があって、もし彼が(落選で)怒ってたら『ダメだよ、そういう考えだったら』って良くないと思ったけど、彼は逆。うち(チーム)のことをよく見て、オンボールディフェンスもうまくなった。ターンオーバーも少ないし、判断もよかった。体も強い。彼とWユウキどっちでも。もし彼がペイントタッチしたらWユウキが3P得意じゃないですか。2番ポジションみたいに、富樫が結構チャンスを増やすと思う。あのコンビネーションはこれからまた使います」
ワールドカップ落選後も腐らず、努力し続けた結果が今回の活躍につながった。「安定性と経験を積み重ねていくところではまだまだだと思います」と課題も口にしたが、それでもこの2試合でのパフォーマンスが大きな自信になったのは間違いない。
「去年のワールドカップで落選したその悔しい気持ちというのは、自分のこの代表活動での原動力になっていると思うので、その熱い気持ちで、次こそパリオリンピックが出るという強い気持ちを持ってやってるつもりです。(アジアカップでの活躍は)自分がこの代表、今回の代表活動始まる前に理想としていた結果の一つであると思うので。2勝できて、自分でも持ち味も存分にアピールできたので、ちょっと笑顔で帰っていいのかなと思います」
ワールドカップで悔しい落選を経験し、さらなる成長を見せたテーブスが、日本に新たな武器をもたらすか。 今後の代表争いの行方にも注目だ。
(滝澤 俊之)