Bリーグ1部(B1)は10日と11日、各地でレギュラーシーズンの第23節が行われ、中地区7位の信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリング(長野市)で西地区4位の広島ドラゴンフライズと対戦。第1戦は68-79、第2戦は74-96で敗れて7連敗とし、ホームでは13連敗と苦しい状況が続いている。
年明け2勝11敗もアンガス・ブラントの加入は光明
昨年の12月は勝率5割以上の相手に全敗を喫するなど、「エナジーのムラ」や「遂行力の低さ」が課題となっている信州。年明け以降は長崎ヴェルカ、横浜ビー・コルセアーズ、アルバルク東京、レバンガ北海道、三遠ネオフェニックス、シーホース三河、佐賀バルーナーズ、広島ドラゴンフライズと対戦し、2勝11敗と大きく負け越し。第23節終了時点で24チーム中22位となる6勝33敗となっており、富山グラウジーズ(4勝35敗)、茨城ロボッツ(5勝34敗)と残留を争う展開となっている。
そんな中でも、1月12日に茨城ロボッツから信州に移籍したアンガス・ブラントはチームによい影響を与えている。勝久マイケルヘッドコーチ(HC)はブラントが信州で初出場した横浜BC戦のあと、このように評価している。
「彼が来た初日に『自分に何を求めている?』と聞いてくれた。今、我々が何よりも必要なのが「プロフェッショナルさ」。毎日の練習、ビデオミーティング、ウォークスルー、ディテール(細部)、最初から最後まで意識高く、プロフェッショナルに。これが今足りなくて、まずはそこという話をした中で、今日(横浜BC戦)の評価に繋がるが、来たばかりなのに、遂行力やメンタルのミスが非常に少なかった。それは毎日意識高くやってくれているからだと思う。ノートをとって、覚えようとして確認をしにくるなど、毎日の練習、最初から最後まで集中していることは彼の目を見て分かる。そうじゃない人も目を見れば分かる。なのでまずはそこのメンタリティの部分を評価している」
プロとしての姿勢だけではなく、プレーでもチームの大きな助けになっているという。指揮官は続ける。
「コート上の役割としては、よいスクリーンをかけて、ゴール下でスペースを作るように身体を張ってフィジカルにプレーすることを毎回やってくれる。1つ1つディテールの角度が若干違くてタフシュートで終わったプレーもあったが、毎回よいスクリーンをかけようとして、毎回身体を張ってシールしてくれようとして、そこも今までウェイン(マーシャル)が抜けて無かった部分。声がけもチームにしていた。本当に今日の彼は素晴らしかったと思う」
マーシャルがケガで離脱して以降、インサイドで強さを発揮できていなかった信州だが、ブラントが加入してからは攻守両面でインサイドを支えている。もちろん途中加入でチーム内での練習がほとんどできていない状態のため、まだまだミスも多いが、指揮官が言うようにエナジーや遂行力といった基本的な部分を表現し、献身的なプレーでチームに貢献している。
コミュニケーション不足指摘「ダメといえる勇気が必要」
チームが成長する兆しがある一方で、問題点も山積している。特に気になる部分は、指揮官がシーズン序盤から口にしているチームの課題が「エナジー」、「遂行力」、「ディテール」と変化していないことだ。
この問題点について、指揮官のバスケットを長くプレーしている三ツ井利也と栗原ルイスに話を聞いた。
「例えば、ミスをしたときに、これもチームメイトだからこそだと思うが、ダメなことをちゃんとダメと言える勇気が必要だと思っている。僕自身、時より声を荒げることもある。僕がすごく気になるのは、例えば、ミスが起きたときに、前向きな言葉をかけるもの大事だと思うが、チームとしてやるべきことをやっていないときに『本当にダメなことなんだよ』と伝えるには、多少強い口調で言わないと本人もどれだけ大事か分からない。そういうのは正直嫌われてもいいから、そういう声をあげるときもあるし、僕だけでなくてチームメイト同士でちゃんと伝えあってはいる」(三ツ井)
三ツ井は続ける。
「『ミーティングでこういうふうにやったよね』ということは伝えてはいるが、それが響いていないのか、そのミスに対して本人がどう思っているのかも正直、分かり得ない。『本当にダメだったんだな』と思っているのかも分からない部分が歯痒いといったらあれだが。もどかしい気持ちはずっと持ちながらプレーもしているし、そういう部分で一人ひとりが試合になかなか集中しきれない。そういう部分にフラストレーションを溜めてしまって、みんながいろんな方向にマインドが散らばってしまっているのが今シーズンうちの弱いところ」
チーム内でコミュニケーションは取ってはいるが、お互いが本音でぶつかっているか。上辺だけのコミュニケーションになってはいないか。在籍期間がチーム最長の三ツ井の表情からも、その苦悩が伝わってきた。
栗原も「どうしても40分間細かい部分をやり続けるということがチームとしてまだ理解ができていない。もちろんオフェンスやディフェンスでよい場面もあったが、悪い場面のときにどうやって我慢するか。例えタフシュートを決められても、思い通りの笛を吹かれなくても、次のプレーでどうバウンスバックするかという部分がまだ課題だと思う」と語り、チームのやるべきことに対して理解が深まっていないことや、チームとしてまとまっていないことを明かした。
確かに、1月17日の北海道戦のように1試合を通して集中力やエナジーを高く持ち、勝利をつかんだ試合もあった。しかし、11日の広島戦のように簡単なターンオーバーから相手に流れを渡すシーンや、コミュニケーション不足から起こるディフェンスでのミスが多くあるなど、試合ごとに出来不出来のムラが大きい。HCや選手たちから出る言葉を総合的に判断すると、組織として重要な「コミュニケーション」や「思いやり」などの基本的な部分がまだまだ不足しているのではないだろうか。
勝負のバイウィーク期間「気持ちが問われる」
冒頭でも述べた通り、現在、信州は残留争いの真っ只中にいる。今シーズンは24チーム中23位と24位の成績下位2チームがB2に自動降格となるが、信州は39試合消化時点で22位と崖っぷちの状態だ。この苦境を乗り越えるため、約3週間のバイウィーク期間は信州にとって非常に重要になってくる。
「日々成長」を掲げるチームがバイウィーク期間に取り組むべき課題は何なのか。指揮官は話す。
「まずは誰が健康で誰が(練習に)いるかによっても大きく変わってくる。またシーズン中、いろいろ変化があると、トレーニングキャンプがなかった選手が多い。オフェンスでもディフェンスでも一番大事なファンダメンタルの部分を一からやった上、今の課題と向き合って、少しでも修正しないといけないディテールがあるのか。ただできていなくて、もっと反復しないといけないのか。新しくなったチームで何試合か戦った中で、修正が必要な部分があるのか。両方に取り組んでいきたい」
ジャスティン・マッツやブラントなど、シーズン途中から加入した主力選手も多い中で、栗原ルイスなどケガから復帰した選手も加わり、チームとしてじっくり練習する時間が取れるのがバイウィークだ。
キャプテンの栗原は「技術的には上手い選手がいると思う。ただメンタル面がすごく課題だと思っている。悪いプレー、思い通りにいかないプレーのあとに次のプレーを遂行しないのか。次のポゼッションのディフェンスでルーズボールを取りにいかないのか。そういう部分は僕からすると人を問う。その人のやる気、気持ちが問われると思う。まずバイウィーク中にそのメンタルの部分を成長させたい」とバイウィーク期間でのチームの成長を期待する。
B1昇格4シーズン目にして、かつてない苦境に立たされている信州ブレイブウォリアーズ。昨シーズンや一昨シーズンも今シーズンと同様にケガに苦しみ、シーズン中に連敗を重ねることもあったが、最後はチームとしてピンチを乗り越えていった。ただ、昨シーズンまでのチームを支えていたアンソニー・マクヘンリーやジョシュ・ホーキンソンはもうチームにはいない。今チームにいる選手たちが置かれている状況をしっかりと理解し、全員が同じ方向を向いて戦っていくしか道はない。一人ひとりが成長することはもちろん、「チーム」として「組織」として成長し、残留争いを抜け出せるか。このバイウィーク期間での成長が、後半戦、そしてチームの未来の命運を握るといっても過言ではない。
(芋川 史貴)