Bリーグ1部(B1)は12月29日から1月1日にかけて各地でレギュラーシーズンの第15節が行われ、信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリング(長野市)で宇都宮ブレックス(東地区2位)と対戦。第1戦は59-73、第2戦は55-77でそれぞれ敗戦した。11月8日の川崎ブレイブサンダース戦から続く連敗を止めることはできず、チーム史上最多の15連敗となった。
12月全敗 強豪との連戦で見えたエナジーのムラ
12月は信州にとって試練の1か月だった。秋田ノーザンハピネッツ、シーホース三河、琉球ゴールデンキングス、島根スサノオマジック、サンロッカーズ渋谷、三遠ネオフェニックス、そして宇都宮。第15節終了時点で、対戦した全チームが勝率5割以上をキープしており、まさに強豪との連戦だった。
ただでさえ厳しい状況の中で、ケガ人にも悩まされた。12月6日の三河戦では、今季好調を維持していた栗原ルイス主将が第2腰椎右横突起骨折の怪我を負い離脱。同じく星野京介も負傷し、一時離脱を余儀なくされた。
負けが続く中でも、12月9日と10日に行われた琉球との試合では、王者相手に勝利目前まで迫るなど、チームの成長を見られる試合もあった。だが、その翌週の島根戦では大差で連敗するなど、エナジーを欠いているように見える試合もあった。12月20日のSR渋谷戦後、勝久マイケルHCはこう話した。
「両節(琉球戦、島根戦)準備してきたことを大事なところで我慢できなかったり、遂行できない時間があった。そういうのは経験だと思う。準備してきたことを40分間遂行することもやらなくてはいけないが、なによりムラがあってはいけないのはエナジーの部分でそこは当たり前。その当たり前ができていないのが今シーズンの我々。鏡を見ないといけない」
そのような問題を抱えながらも、宇都宮戦では「基本的には選手たちはやるべきことをやろうとはしていたと思う」と指揮官が振り返ったように、第2戦ではオフェンスリバウンドやルーズボールに飛びつき、セカンドチャンスポイントは宇都宮の「10得点」に対して「13得点」を獲得。チームがなにより大切にしている「エナジー」の部分では改善が見られた。
石川海斗「より一層チームにフォーカスしないといけない」
エナジーの次に課題としてあるのが「遂行力の低さ」である。勝久HCのシステムは非常に細かく、理解に時間を要する。新加入選手が多い中で、指揮官のバスケを熟知していたアンソニー・マクヘンリーやジョシュ・ホーキンソンの退団、ウェイン・マーシャルの離脱の影響は「相当大きい」とHCは語る。
どうすれば遂行力を向上させられるのだろうか。司令塔の石川海斗は話す。
「まずはミスに対して自分にベクトルを向けられているのか。練習でやってきたことや準備してきたことが頭に入っているかどうか。そこも遂行力に関係してくる部分だと思う。選手たちにも言っているが、『やっているつもり』と『やろうとしている』のには雲泥の差がある。やっているつもりが一番よくない。『俺やっているんだけど』ではなく、『やっていないから勝てていない』ことを全員が理解しなければいけない」
一言一言を慎重に選ぶように語ってくれたキャプテンの言葉には、チームに向けての思いが込められていたように感じた。石川は続ける。
「まだまだハドルを組むのが遅い。今勝てていないのなら次のプレーを遂行するために早く集まって、全員で共通認識を持つことがもっともっと必要。24時間は練習できないけど、24時間プロバスケットボールとして、プロとしてやるべきことはたくさんあると思っている。勝てていないならより一層チームにフォーカスしないといけないし、もっとチームがよくなるために全員が考えていくことが必要」
負けが続くと、「その理由やその責任がコーチにもあるのではないか」と思う気持ちは自然である。そういった意見について石川は「僕はコーチのバスケットをやれば絶対勝てると思っている。それはずっとコーチが証明してきたこと。僕はコーチに矛先が向くのが一番悔しい。コーチのバスケットをやっていて勝てていないなら矛先が向くのはしょうがないと思うが、やっていなくて、やれていなくて向くのは非常に申し訳ないと思う。何度でも言うが、コーチのバスケットは日本一、スペシャルだと思っている。言葉を大げさに言うとすれば、本当に全員がリスペクトを持ってそこに向かっていくことがもっと必要」とチームへの提言を口にした。
生え抜きの三ツ井利也が浮上誓う「このまま終わりたくない」
勝つためには正しいことをやり続け、経験を積み、チームとして成長していくことが大切だ。その一方で、現在信州は4勝26敗と24チーム中22位に沈み、降格圏内の富山グラウジーズとはわずか1ゲーム差となっている。
そんな状況を選手たちはどう感じているのか。「焦っている様子は見えない。焦ったりしても、そんなことはチームのためにはならない。やらなきゃいけないのは成長することによって勝利に近づくということ。焦りは問題だが、毎日の練習に対する一つひとつやるべきことを習慣づける。一つひとつ吸収して積み重ねることに対する危機感がもしなければ、それは問題。それをもう少し感じてほしい人間はいる」と勝久HCは語る。
Bリーグ初年度からチームに在籍する三ツ井利也。ルーキーシーズンのチーム成績は14勝46敗で、長い連敗も経験した。そのときのことを引き合いに出し、三ツ井は語る。
「僕自身、このような連敗をしている状況はルーキー時代以来。これはあくまでも自分の感想だが、(当時)2月に加入して、連敗が続いていたときの、当時のチーム状況というのは、空中分解といいますか。一人ひとりが別の方向を向いているように感じていて。『このまま終わるんだろうな』という印象だった」
三ツ井は続ける。
「今のチーム状況は、もちろん結果も伴っていないし、チーム全体としても攻守でもどかしい状況ではある。けれど、チーム全体として諦めていない。『何か変えなきゃ』と思っている選手がまだまだチーム内にもいる。これが結果に結びつくには、まだまだ努力しないといけないし、このままずるずる終わりたくないというのはチーム全体で思っていると思うので、もう一回、共通認識を持ってやりたい。僕もベテランの域に入っているので、みんなが少し別の方向に行ったときに、引き戻せるような立ち振る舞いをしていけたらいいと思う」
過去最多となる15連敗中と、長いトンネルを抜け出せずにいる信州ブレイブウォリアーズ。苦しい状況ではあるが、12月からチームでプレーするジャスティン・マッツが信州では平均15.1得点と調子を上げていることや、生原秀将がインジュアリーリストから復帰するなど、光明も指している。今週末はアウェイで長崎ヴェルカと戦う信州。2024年初勝利を飾り、浮上のきっかけをつかみたいところだ。
(芋川 史貴)
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