【バスケ日本代表】強豪相手でこそ輝く“スラッシャー”馬場雄大 日本に「フリースロー」をもたらす存在に
フランス戦でリングにアタックする馬場雄大©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 男子日本代表のトム・ホーバスHCが掲げる「アナリティック・バスケットボール」(データ分析に基づいて効率的な得点方法などを追究した戦術)において、3P、ドライブからのレイアップ、そしてフリースローはオフェンスに欠かせない要素だ。サイズの小ささを補うために、W杯ではこれらにスピードを上乗せして世界と対峙していく。

 ただ、17日にあったフランス戦(FIBAランキング5位)で一目瞭然だったように、個々の選手のプレッシャー強度が高く、さらにNBAトップ級センターで216cmのルディ・ゴベールなどのビッグマンが待ち構えるインサイドにドライブで割って入るのは容易ではない。それ相応のスピードやフィジカルの強さが必要となる。

 それは数字にも表れており、15日のアンゴラ(同41位)戦で31本放ったフリースローはフランス戦で10本に激減した。ただ、そんな中でも普段と変わらず果敢なドライブを仕掛けていたのが“スラッシャー”のSG馬場雄大だ。チームトップの24分29秒出場し、ゴールへのアタックを続けて戦う姿勢を示した。

フランス戦前の日本代表©Basketball News 2for1

リングアタックでハイペースな展開つくる

 フランス戦、日本は試合開始直後こそ相手のフィジカルや高さに面を食らう形で7連続得点を許したが、馬場が立て続けにドライブを仕掛けていく。さらにディフェンスリバウンドやスローインからの素早いトランジションで速攻の先頭を走り、日本がやりたいハイペースな展開に持ち込む役割を担った。

 前半については「スローインを早くして、ハイテンポ、ハイペースでバスケをしようというところで、最初はみんな体力もあっていい展開がつくれた」と振り返る。2年前、八村塁渡邊雄太らの活躍でフランスを81ー75で撃破した試合にも触れ、「前回は情けないプレーをした。立場も変わって、本腰を入れないとと思って最初から気持ちを入れてやりました」と続けた。

 後半も変わらずゴールに向かう姿勢を貫き、度々相手のファウルを誘った。最終的なスタッツは7得点、3リバウンド、1アシスト、1スティール。チームで放ったフリースロー10本のうち、4本を馬場のゴールアタックで生まれたものだった。

豊富な経験で築かれた“自覚”

 チーム全体で見ると、この試合でゴールに向かってドライブを仕掛けることができていたのは馬場、SG比江島慎、PG河村勇輝だ。3Pの成功率が29.5%と低かったとはいえ、アンゴラ戦を3本上回る44本打てたことは、この3人が相手ディフェンスを収縮させた効果が大きい。

 「やっぱり3Pはペイントに1回アタックしてからパスを出した方が、確率が上がるというのはデータとして出ています。外で回して打つより、誰かが中に切り込んで外にキックアウトして打つのが理想の形だと思う。そこは自分の役割なので、積極的にやりました」

 まだ27歳ではあるが、若手の多いチームでは年齢的にも上の方で、海外リーグや代表戦の経験も豊富だ。

 それを念頭に「フランスのような国とやるのが初めての選手もいるので、少し気後れしてペイントアタックしきれなかった選手もいると思う。みんな一度経験したので、ペイントアタックからの3ポイントはチームの意識として持っておきたいです」と共通認識を高める必要性を強調する。

 一方で「フリースローを獲得できる選手はこのレベルになってくると限られてくるので、それも個々の役割としてみんな理解している。ペイントアタックする選手、3Pを打つ選手。それは監督の求める形なのかなと思う」とも語り、それぞれの強みを生かすことの重要さにも言及した。

©Basketball News 2for1

「あのレベルでバスケができる幸せを感じる」

 ドライブで存在感を発揮する一方で、3Pは明確な課題だ。アンゴラ戦では2分の0、フランス戦では3分の0とネットを揺らすことができていない。フランス戦後も「3Pを決めてチームに勢いを与えたかったというのは正直なところです」と心境を語っていた。

 ただ「空いたら打つメンタリティーではあります。試合を重ねるごとにかなりメンタル的にも整ってきているので、本番に向けていい準備を進めてきたと思う。あとは決めるだけです」と言い、決してネガティブな状態に陥っている訳ではないようだ。

 前向きな思考は、他の質問に対する答えにも表れた。試合中、単独速攻からダンクに行こうとした際、後ろから2人に追いつかれてファウルで止められたシーンについて聞かれた時の回答だ。

 「最高っすね。僕も結構なスピードで行っていたと思うんですけど、あそこで追い付いてくる選手というのは最高です。あのレベルでバスケができる幸せを感じます。フリースローを獲得するのがチームとしてのコンセプトの一つでもあるし、受け身も得意なので、これからもガツガツいきます」

 飽く無き向上心を胸に海外に挑み続け、世界レベルと対戦できる状況を心から楽しんでいる様子の馬場。相手が強ければ強いほど、その真価を発揮してくれるに違いない。

(長嶺 真輝)

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