ディフェンスで魅せた“最年少20歳”の金近廉、千葉Jの先輩・原修太から学び 日本代表がチャイニーズ・タイペイに92-56で勝利
日本代表の金近廉©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 8月25日に沖縄などで開幕する男子W杯に向け、日本代表(FIBAランキング36位)は9日、静岡県の浜松アリーナで国際強化試合を行い、チャイニーズ・タイペイ(同69位)に92ー56で勝利した。強みである3Pを21本決めて108ー86で勝った前日から一転、この日は3Pの成功が9本にとどまったが、ディフェンスを修正して失点を抑えた。

出場直後にブロック2連発 196cmで高い身体能力

 Bリーグがオフシーズンに入っていることなどの影響で「みんなのコンディションがバラバラだった」(トム・ホーバスHC)と、第1戦はチームディフェンスの強度が明らかに不足していた日本。そのため、3Pは高確率で入っていた一方で、守りから速攻につなげる場面が少なかった。

 その反省から、一夜でディフェンスのシステムを変更。この日はスタートからピックプレーに対しショウディフェンスを徹底したり、ローポストでダブルチームを仕掛けたりと、度々トラップでボールマンを追い込んだ。第1QからSF吉井裕鷹やSG馬場雄大がスティールしてそのままダンクを叩き込むなど流れをつかみ、早々に大量リードを奪った。

 その勢いをさらに押し上げたのは、今回の登録選手13人の中で最年少20歳のSF金近廉だ。第1Q残り3分34秒で吉井と代わってコートに入り、最初のディフェンス。PF井上宗一郎が3Pをブロックされ、トランジションから相手に速攻を仕掛けられる。しかし、素早く戻った金近がゴール下シュートに対し背後から飛び、両手で空中のボールをボードに押し付けるようにしてブロックした。

 直後のディフェンスでも、右サイドからドライブを仕掛けてきた相手選手のレイアップを左手で豪快にブロック。身長196cmという上背に加え、高い身体能力を備えていることを改めて体現した。

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必要性を感じる「ベタつき」ディフェンス

 その後、ボールマンとの間合いを詰めてオフェンスファウルを誘ったり、積極的にディフェンスリバウンドに入ってボールを奪取したりして、献身的なプレーを続けた。

 最近はシュートタッチに苦しんでいたというが、この日は1本目のシュートで得意の3Pを成功させ、最終的なスタッツは7得点、4リバウンド、2スティール、2ブロック。出場時間は11分46秒とチームで3番目に短かったが、リバウンド数はホーキンソンに次いでチーム2番目、スティールとブロックの数はいずれも最多だった。

 今年2月にあったアジア地区予選のイラン戦で3P6本を含む20得点と鮮烈な代表デビューを果たし、オフェンスの印象が強かった金近だが、ここにきてディフェンスでも強いインパクトを残した。変化の背景には、今年4月から千葉ジェッツで練習生として活動していることがある。影響を受けている選手名も挙げてくれた。

 「ジェッツで試合を見てる中で、原(修太)さんのディフェンスを練習中から意識しながらやっていました。(千葉Jには)腕が長い選手が多く、少しでも間合いがあると上から打たれてしまうので、原さんのようにもっとベタ付きのディフェンスができるようになるといいかなと思っています」

 身近にBリーグの“ベストディフェンダー”がいる環境を、しっかり成果として表現した。大学までは主に4〜5番を担い、代表ではSF登録。「3番のディフェンスは慣れるまでに少し時間がかかった」というが、それも千葉Jの練習の中で徐々に馴染んできた感触を得ている。「この3、4カ月でやってきたことが出たと思いますし、今後の合宿も含めてやっていきたいです」とさらなる成長を求める。

千葉ジェッツの先輩・原修太からディフェンスを学んでいるという ©Basketball News 2for1

生かす「4〜5番」の経験 高いリバウンドの意識

 学生時代にインサイドを守ってきた強みは強烈なブロックにも現れているが、それ以上に代表チームにとって大きな意味を持つのは「4リバウンド(OR1本、DR3本)」だ。この2戦は207cmのC渡邉飛勇が体調不良で欠場し、ビッグマンが208cmのC/PFジョシュ・ホーキンソンと204cmのC川真田紘也のみ。そのため金近が4番プレーヤーにつく場面もあった。

 相手には自身よりも体の幅がある選手が多かったが、「多少筋肉も付いてきたので、受け身ではなく、自分から当たりに行こうという気持ちです。体のコンタクトにネガティブな感じはありません。リバウンドだったりで負けないように、ということは意識してやりました」と振り返る。その言葉通り、ディフェンスで積極的に間合いを詰めたり、体を張ってボックスアウトしたりすることを徹底していた。

 八村塁の欠場が決まったこともあり、今後渡邉が復帰したり、206cmのSF渡邊雄太が合流したとしても、W杯本番で対戦するドイツやオーストリアなど世界トップレベルの国と対戦する際はサイズで不利になることは間違いない。このチーム課題に対する自身のアプローチを聞くと、明確な答えが返ってきた。

 「ビッグマンは高さの部分でしんどい中でも体を当てて、ディフェンスリバウンドでボックスアウトをしっかりやってくれています。だから2番、3番の選手が飛び込んだりしてリバウンドに参加することはとても大きな意味があります。自分もこれまでビッグマンの役割をしてきたので、そういう選手がいたらありがたいというのも実感しています」

 さらに続ける。

 「ディフェンスについてもスイッチでやっているので、ガードがビッグマンについたりする場面もあります。その時に自分が近くにいたら、その場でマークマンを交換したりして、臨機応変にやりながら、高さのアドバンテージを取られないようにコートの中でしっかりとコミュニケーションを取っていきたいです」   

          

 これまでのプレー経験を土台に、自身の役割を冷静に分析し、身を置く環境を生かしてさらにプレーの幅を広げている金近。対戦国のFIBAランキングが上がっていく今後の国際強化試合で、世界のトップレベル相手にどれだけ通用するか。現状では最終12人に残るハードルは極めて高いが、若手で経験が浅い分、短期間での急成長も見込めるため、活躍次第ではロスター入りを射止める可能性は少なくない。

(長嶺 真輝)

ワールドカップ本番でのロスター入りが期待される金近 ©Basketball News 2for1

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