“速攻の意識”が高まる琉球ゴールデンキングス…オーストラリア遠征でつかんだ「素早いトランジションの秘訣」とは
プレシーズンゲームを戦った琉球ゴールデンキングス©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 昨シーズンまで4季連続でBリーグファイナルに進出した琉球ゴールデンキングスに、ある変化が見られる。ファストブレイクに対する意識の高まりだ。

 9月23、24日の両日に沖縄サントリーアリーナでアルティーリ千葉と対戦した「ISLAND GAMES 2025」では、ファストブレイクポイントが1戦目から順に14得点、8得点。昨季の平均はリーグで17番目の9.9得点だったため、数字上はそこまで大きく変わってはいないが、攻撃に切り替わる際のトランジションは明らかに早くなっている。

 前線から激しいプレッシャーを仕掛けるA千葉を相手に99-70、96-84で2連勝し、いずれもスコアが90点台に乗った要因の一つだろう。

 トランジションをより早くするという部分は、新チームが始動した段階から、桶谷大HCや選手が今季を展望する際に口にしていた要素である。リバウンド力を最大の武器とし、ポゼッションゲームにおける強みを持つ琉球にとって、速攻の増加はさらなる進化につながりそうだ。

基本を徹底…素早い「アウトレットパス」を

 2戦目の試合開始直後には、象徴的な場面が続いた。小野寺祥太が激しいディフェンスで相手のターンオーバーを誘い、すかさず前を走った佐土原遼にボールが渡る。強いフィジカルを生かしてそのままレイアップシュートを決め切った。

 ほとんど間を置かず、今度はジャック・クーリーがディフェンスリバウンドを掴み、パスを受けた岸本隆一がボールプッシュ。駆け上がったヴィック・ローにパスを繋ぎ、トランジション3ポイントシュートを射抜いた。この二つのプレーには先発の5人全員が関わっており、速攻に対する意識がチームに浸透してきていることがうかがえた。

 素早いトランジションについては、5試合を行ったプレシーズンゲームで徐々に形になってきている印象だ。桶谷HCによると、オーストラリア遠征の1試合目だったサウスイースト・メルボルン・フェニックス戦が一つのきっかけになったという。

「メルボルンと試合をした時に、アウトレットパスが遅いとボールを前に運べなくなると感じました。いかにアウトレットパスを早く出して、相手にディフェンスをセットアップさせないか、自分たちにコンタクトをさせないかが重要になります。そこを意識した結果、次のパース・ワイルドキャッツ戦でいい答えが出てたんです。A千葉も前からプレッシャーをかけてくるので、そこを徹底してやりましょうという話をしていました」

 オーストラリアNBLのチームは、個々の選手が高さと強さを備えていたため、「いかにコンタクトをさせないか」ということの重要性は肌で感じる部分が大きかったのだろう。素早いアウトレットパスは速攻を出す上で基本の一つだが、チームとして共通認識を深め、突き詰めていけば、大きな効果につながるはずだ。

記者の質問に答える桶谷大HC©Basketball News 2for1

質を高めたい「フィニッシュの精度」

 1試合目から順に20回、19回という多くのターンオーバーを相手から誘ったことも、速い展開につながった要因だ。琉球はもともとディフェンスの強度が高いチームではあるが、今季も小野寺、小針幸也、崎濱秀斗、平良彰吾らを中心に高い位置からプレッシャーをかけられる脚力のある選手が揃っている。

 チーム最年長となる35歳の岸本も、A千葉戦で積極的にプレッシャーをかけていた。さらに質を高められる感触もあるという。以下は1戦目の後のコメントだ。

「相手のターンオーバーを誘ったというところで、手応えはありました。僕的にも、結構『スティールを狙えるな』と思える場面が何度かあったので、トランジションはもう少しポイントを伸ばせたんじゃないかという感覚があります。修正というよりも、フィニッシュの精度を高めていきたいと思います」

 フィニッシュの精度については、松脇圭志「トランジションは早くなってるとは思いますが、その後の課題はまだあります」と語り、改善の余地を感じている。

 佐土原や脇真大であればレイアップシュートまで持って行くことに長け、岸本や松脇、ローらはトランジションスリーが上手い。選手ごとに得意な形があるため、速い展開の中でより適切な状況判断をしていきたいところだ。

 昨シーズンの準優勝メンバーがほぼ残留し、日本代表クラスの佐土原を補強して優勝候補の一角に挙げられる琉球。豪華な顔ぶれに甘んじることなく、チームとして新たな武器の研磨にも注力している。10月4、5の両日にある開幕カードは安藤誓哉を獲得した横浜ビー・コルセアーズと対戦し、翌週には今年3月の天皇杯決勝で対戦したアルバルク東京とぶつかる。

 新たに手にした力を遺憾なく発揮し、幸先の良い開幕スタートを切れるか。注目だ。

今季から加入した佐土原遼©Basketball News 2for1

(長嶺真輝)

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