オーストラリア遠征を行ったSR渋谷と琉球…両チーム2連敗も「価値のある経験」積む、新シーズン開幕に向け手応え
豪州遠征に参加したサンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生(左)と琉球ゴールデンキングスの岸本隆一©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグからサンロッカーズ渋谷琉球ゴールデンキングスが参戦しているプレシーズンゲームの国際大会「Perth Wildcats International Series」は9月14日、最終日を迎え、オーストラリアの(以下、豪州)のパースにあるPerth HPC(パースハイパフォーマンスセンター)で2試合を行った。

 1試合目でサウスイースト・メルボルン・フェニックスと対戦したSR渋谷は72-85、2試合目でパース・ワイルドキャッツと対戦した琉球は93-103でいずれも敗北。反対の相手チームと行った二日前の1戦目に続き、両チームとも2連敗で遠征を終えた。

 ただ、SR渋谷、琉球とも二日前の1戦目よりプレー強度や連係が目に見えて改善し、NBLの強豪と試合を重ねたことでチームがより仕上がってきている印象だ。10月に開幕する新シーズンに向け、貴重な機会になったことは間違いないだろう。

構築途中の「新しいシステム」徐々に手応え SR渋谷

 SR渋谷にとっては今季のプレシーズンゲーム2試合目となったフェニックス戦。序盤から高い強度で試合に入り、トロイ・マーフィージュニアの3ポイントシュートやトーマス・ウェルシュのブロックなどで互角の展開となる。さらに第1Q途中でコートに入ったジョシュ・ホーキンソンが連続得点を決め、19-19でこのクォーターを終えた。

 しかし、第2Qに入ると相手のプレッシャーに押され、じわじわとリードを広げられる。ドンテ・グランタムの力強いポストプレーなどで応戦したが、35-49で前半を折り返した。

 後半はディフェンスで我慢を続け、再び競り合う展開に。ベンドラメ礼生ジャン・ローレンス・ハーパージュニア田中大貴の3人のガードを同時起用し、機動力が増す時間帯もあった。第4Qはホーキンソンの連続3Pシュートやグランタムの強烈なダンクで追い上げたが、逃げ切られた。

 試合後、カイル・ベイリーHC「フィジカルの部分では、1試合目のパース戦よりもしっかり対応できたと思います。2試合とも本当にフィジカルが強く、サイズもあるチームでしたが、その中で今日は確実にフィジカルで戦えたと感じています」と言った通り、二日前に比べて明らかにプレーの強度が上がった。

 ベンドラメが5ファウルで退場するなどガード陣を中心にファウルは混んだが、ハッスルした証左の一つだろう。ワイルドキャッツ戦ではチーム全体としてホーキンソン一人の5回のみだったがファウルドローンも、この日は15回に増えた。

チームの大黒柱ジョシュ・ホーキンソン(中央)©Basketball News 2for1

 ホーキンソンも「今日の試合ではアグレッシブにフィジカルで負けずに戦うことができたと思います」と手応えを感じた様子。「ここで学んだフィジカルで戦うことの重要性を、これからどれだけ発揮していけるかが大切になります」と続けた。

 昨シーズンの終盤に前ヘッドコーチのルカ・パヴィチェヴィッチ氏を解任し、アシスタントコーチからヘッドコーチに昇格したベイリー氏が継続して指揮を執るSR渋谷。グランタムやディディ・ロウザダ野﨑零也狩野富成など新戦力も多く、今はチームを構築し直している段階にある。

 ベイリーHCは今回のオーストラリア遠征を通し、「今シーズンは選手もスタッフも新しくなり、新しいシステムを取り入れている部分もあります。その中でまずはお互いを理解しながら、いい形のオフェンスを作れてきているのは収穫です」と一定の手応えを感じたよう。一方、「まだ構築の途中であり、これから改善すべき部分も多くあると感じています」とも言った。

 今後、新シーズンの開幕に向けてどのようなチームに仕上がっていくのか、注目だ。

海外アウェー戦が多いEASLへ貴重な経験に 琉球

 ホームのワイルドキャッツと対戦した琉球。高さやフィジカルの強さがある相手に対し、序盤からリバウンドに対する意識が高く、流れをつかむ。ジャック・クーリーがゴール下で存在感を発揮し、他の選手もボールムーブをしながら内外からゴールを射抜き、リードを奪った。

 第2Qは脇真大が武器のドライブでスコアをけん引するが、相手も素早いトランジションや高さのあるオフェンスリバウンドから加点し、54-52とハイスコアな展開で前半を折り返した。

 後半も一桁点差のまま競り合いが続く。第4Qの残り2分を切った時点でも琉球の2点ビハインドと僅差だった。しかし、試合のクロージングで相手に立て続けにペイントエリアから得点を奪われる。一方の琉球は佐土原遼やローのシュートが外れ、勝負を決められた。

 試合後、桶谷大HCも開口一番で「最後にリバウンドを取られたり、ターンオーバーをしたりして、いいクロージングゲームができませんでした」と悔しそうな表情で振り返った。一方、チームの最大の強みであるリバウンドの本数で43本対41本と相手を上回り、ターンオーバーは7回で二日前の試合から半減した。

 それを念頭に、指揮官は「前からピックアップしたり、セイムページでオフェンスをしたりして、一昨日の試合で出た課題をクリアできた部分もありました。フィジカルが強い相手にも、自分たちがやるべきことを遂行すれば、こういうゲームができるということが分かりました」と収穫を口にした。

琉球の佐土原遼(中央) ©Basketball News 2for1

 豪州遠征で2試合とも先発でコートに立った岸本隆一「二日目の試合は自分たちがビハインドを背負った状態から始まったので、その反省を生かして、今日は高い位置からのディフェンスで試合に入れたので、その部分は良かったと思います」と手応えを語った。

 一方、岸本もゲームクロージングでは課題を感じたよう。「試合終盤で、僕自身はもう少しいい判断、選択があったと思います。そこはしっかり反省して、次につなげれたらいいかなと思います」と語り、今後の戦いに生かしたい考えだ。

 琉球は今シーズンもBリーグに加え、海外アウェー戦が多い東アジアスーパーリーグ(EASL)にも参戦する。新加入の小針幸也や佐土原らはEASLを戦った経験がない。そのため、桶谷HCは「日本国外のアウェーの地で戦うことは、肌で感じないと分からない部分も多くあります。EASLを戦ったことがない選手もいる中、本当に価値のある経験をさせてもらえました」と振り返る。

 その言葉通り、10月にBリーグとEASLの開幕を控える琉球にとって、NBLで最多10回の優勝を誇るワイルドキャッツのホームで戦った経験は、今後の戦いに必ず生きてくるはずだ。

(長嶺真輝)

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