岸本隆一に並里成、ハーパー ジャン ジュニアも…「沖縄ボーラー」の絆が見えた特別な一戦
試合後、抱き合う群馬クレインサンダーズ並里成(手前)と琉球ゴールデンキングス岸本隆一(中央)©Basketball News 2for1
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 Bリーグ1部(B1)の琉球ゴールデンキングスは1月28日と29日にアウェイの太田市運動公園市民体育館(群馬県太田市)で群馬クレインサンダーズと対戦し、第1戦は83-74、翌日の第2戦はOTにもつれた末84-77で勝利。アウェイで2連勝を飾った。

【群馬vs琉球】第2戦は延長にもつれる激戦を琉球が勝利

 昨オフに琉球から群馬に移籍した並里成が元チームメイトと初めて対戦することで注目を集めた今回の試合。第1戦では1クォーター(Q)中盤から琉球がリードを広げ、4Qに群馬が追い上げたものの最大21点差をひっくり返すことはできず、琉球が逃げ切った形となった。

 第2戦では群馬のエースであるトレイ・ジョーンズが欠場するアクシデントが発生した。そんな中、チームをけん引する活躍を見せたのが並里成だ。

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 並里は序盤からフローターや華麗なアシストで琉球のディフェンスをほんろう。琉球は岸本隆一、今村佳太、小野寺祥太らが代わるがわるマンツーマンディフェンス仕掛けるなど様々なディフェンスを駆使するも、並里は止められず。群馬は2Q残り8分33秒からリードを譲らず、試合の主導権を握る形となった。

 3Qには最大10点差をつられたものの、琉球は焦りの色を見せなかった。桶谷大HCは「リードされ続けながら我慢してボディブローを打ち続けたことで、ターズースキー選手が4ファール、キーナン選手が4ファールになり(群馬の)ディフェンスがソフトになった結果、そこを攻めることができた」と振り返る。

 苦しい展開を耐えた琉球はそこから反撃を開始。ジャック・クーリーのリバウンドからの得点やジョシュ・ダンカンが3ポイントショットを2本沈めるなど徐々に差を詰めると、4Q残り7秒でアレン・ダーラムのレイアップで同点に追いつきオーバータイムへ。延長戦では琉球が地力の強さ見せつけ、同一カード2連勝を果たした。

 勝利した琉球はクーリーが20得点20リバウンド(OREB6、DREB14)、今村が19得点、岸本が14得点を記録。群馬は並里が両チームで最長の38分30秒出場し、チーム最多20得点8アシストと気を吐いた。

元チームメイト同士の沖縄出身ガード対決が5季ぶりに実現

 この2連戦は「岸本対並里」の元チームメイト同士による沖縄県出身ガード対決が注目された。昨季までは琉球でチームメイトとして共に戦った両者だが、敵同士としては公式戦では並里が滋賀に在籍していた頃から5季ぶりのマッチアップ。オフェンス・ディフェンス共に激しくやり合うシーンが多くあり、会場に集まったファンや画面越しに見守るファンを魅了した。

 2連戦を終えた岸本は移籍した並里を「自分たちと一緒にプレーしている時に比べて人を落ち着かせる雰囲気が増した」と形容。「間違いなく彼が群馬のリーダーだと思いますし、負けてられないなという気持ちでやりました」と盟友の新天地での活躍に刺激を受けた様子だ。並里とマッチアップした際には笑顔を見せながら「もう疲れてるんじゃない?代わったら?」と冗談を交えて“口撃”するなど特別な時間を楽しんでいた。

記者の質問に答える岸本©Basketball News 2for1

 一方、並里は元チームメイトたちとの戦いを「率直に楽しかった」と振り返る。岸本に対しては「親友であり、バスケットボール以上の絆もありますし、いつになっても良いチームメイト、良いライバルで彼から学ぶこともたくさんある。離れていても切磋琢磨できる・刺激し合える仲」と語り、特別な一戦に思いをはせた。

 沖縄からも多くのファンやブースターが駆けつけたことにも触れ、「今週末、沖縄からもファンの皆さんが駆けつけてくれて、会場でも16番のユニフォームを配ってもらう機会も作ってもらえて、幸せ者だと思う」と感謝の思いを述べた。

記者会見に臨む並里©Basketball News 2for1

沖縄出身ガードの新星 ハーパーが今季初戦で12得点の大活躍

 コート上で輝きを見せた沖縄県出身ガードは並里と岸本だけではない。沖縄県出身で現在東海大学所属のハーパー ジャン ジュニアは1月3日に群馬と特別指定選手として契約し、第2戦で今シーズン初出場。2季前に琉球でBリーグデビューを果たしたハーパーは、当時の最年少得点を記録したり、高校生ながらダンクで決めるなど、琉球ファンにとってもなじみ深い存在だ。

 今季は契約してから出場機会がなかったハーパーだが、水野HCが「アグレッシブなディフェンスをしたかったので、彼がどう振舞えるのか見てみたいなと思い、今日は出場機会を与える可能性が高かった」とコメントするように、持ち前のディフェンス力を期待され第2Qから出場。コートインしてからすぐに並里からパスを受けると、立て続けに2本の3Pショットを決め存在感を発揮。水野HCの期待にも応え、4Qには激しいディフェンスからスティールを奪いレイアップを決めるなど、B1トップレベルの選手ともそん色のないハイレベルなプレーを披露した。

 終わってみれば12得点2リバウンド2アシスト2スティールを記録。2季ぶりのB1での出場も“鮮烈デビュー”となった。

攻守で活躍を見せたハーパー ジャン ジュニア©Basketball News 2for1

 桶谷HCはハーパーのディフェンスに対して「B1でもトップレベルのボールプレッシャーのかけ方。1on1ではなかなか剥がせられず、ボールを運ぶのも苦労した」と絶賛。2季前にともにプレーした岸本も「ディフェンスではプレッシャー+堅さが以前よりも増していて、一緒にプレーした時より成長しているなと思った」とコメントするなど、“後輩”の確かな成長に目を細めた。

 また、ハーパー自身も「バスケを始めたころからディフェンスメインのチームだったので、そこで鍛えてもらったからこそこの舞台で自分の技術を発揮できた」とB1トップレベルの相手に対しても通用した自身のプレーに好感触を得たようだ。

同じルーツを持つ“兄弟” 並里「一緒に成長してバスケット界を盛り上げたい」

 同郷ということもあり、幼少期からハーパーとの交流を持っていた並里。年代は違うものの、沖縄市立コザ中学校、福岡第一高校と同じチームで活躍。ハーパーが高校生の時に特別指定でBリーグ入りした際にも「並里選手がいたから」と琉球でのプレーを選択し、今回の群馬との契約も「憧れである並里選手がいるから」というのがチーム加入の理由だった。

 試合後、ハーパーは「憧れの選手と琉球のデビュー戦で一緒に出て、群馬でも一緒に出ることができて自分の夢がかなった」と笑顔で語り、並里と同じチームで再びコートに立てたことに感無量の様子だった。

会見でコメントするハーパー©Basketball News 2for1

 並里はハーパーの活躍について「さすがですね。もう新人とは思えない。間違いなくスーパースターの道をたどっていくと思うので本当に頑張ってほしい」と賛辞を惜しまない。「小さい頃から知っているので彼の将来を全力でサポートできたらと思います。彼と一緒に成長してバスケット界を盛り上げたい」と“弟”の成長をサポートしていくことを誓った。

 琉球ゴールデンキングスが地域に根付き、日本でも屈指のバスケ熱を誇る沖縄県。岸本や並里、ハーパーをはじめ、津山尚大(島根スサノオマジック)、山内盛久(三遠ネオフェニックス)ら多くの沖縄県出身プレイヤーがBリーグで活躍している。今後も沖縄から羽ばたいた選手たちがトップレベルで競い合い、日本のバスケットボールを盛り上げてくれるに違いない。離れていても、沖縄ボーラーの心は繋がっている。そんな絆が感じられた一戦だった。

(吉本 宗一朗)

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群馬クレインサンダーズの記者会見映像
琉球ゴールデンキングスの記者会見映像

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