
昨シーズン、中地区4位(ワイルドカード3位)で惜しくもチャンピオンシップ進出を逃したBリーグ1部の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。シーズン序盤にはけが人などの影響もあり出遅れたものの、終盤には9連勝を記録するなど、尻上がりに調子を上げていったところでシーズンを終える形になった。
迎える2025-26シーズン、名古屋Dはショーン・デニスHC体制を継続し、主力選手たちも残留。リーグ随一の得点力を誇るアーロン・ヘンリーや帰化枠のカイル・リチャードソン、3季ぶりの復帰となったアラン・ウィリアムズらを新たに加え、優勝を目指してチームは始動している。
ドルフィンズの心臓ともいえるポイントガードの齋藤拓実は30歳の節目となる。所属6期目を迎える司令塔に、昨シーズンの振り返りや今シーズンへの意気込み、日本代表への思いなどを聞いた。(※取材日は2025年8月25日)
今季はけが対策で早めに始動
――新チームが始動していますが、印象はどうですか?
そうですね。やっぱり(ロスターの)半分近くが新しい選手になって、バスケット自体も新しいこと、システムに取り組んでいます。去年はちょっとフェーズを飛ばしながらやり過ぎてしまったというのが、シーズン後半や中盤に響いてしまったので、そこもコーチとも反省して、今年はしっかり段階を踏みながら慌てずに。あくまでも開幕の10月4日に合わせていくということでやれているので、始まったばかりですけど、本当に感触としてはかなりいいのかなと思います。まだまだ段階を踏んでいるからこそ、伸びしろを余計に感じるので、そこは楽しみだなと感じています。
――選手の入れ替えがあり、チームが若返り、練習を見ていてもとても雰囲気が明るく感じます
自分が年を取ったのは感じますね。今シーズンは早めにバスケットを始めたのもそうなんですけど、現状なんやかんやで腰が今ちょっと調子が良くなくて、そのケアしながらうまくやれてはいるんですけど。今村とかには「ちゃんと30歳じゃん」って結構いじられたりとかして(笑)。
外国籍選手はアーロンとかもまだ若いので、フレッシュな部分ももちろんそうですけど、経験値の部分はまだまだ足りない選手はやっぱり多くいます。その辺りは自分たち「95年組」と言われる3人(齋藤、今村佳太、佐藤卓磨)が、中東、張本に次ぐ三番目に年齢が高くなっているので、中堅選手として、若い選手たちにも経験値の部分や自分たちの持っているものを還元できたらなと思います。
――オフシーズンはどう過ごしましたか
一旦バスケットから離れはしたんですけど、今年は例年より早くワークアウトするようにしました。その理由としては、まず足首のけが(昨シーズン3月の捻挫)がまだ完治していなかったので、そこをしっかり治すために家では体幹トレーニングや足首のリハビリとかはずっとやっていました。それが治ってからは週3ぐらいで結構早い段階でバスケットに触れるようにしていました。ちょっとしたそういう怪我であったりが、年齢を重ねるごとに徐々に増えてきたのかなと感じるので、ちょっとアプローチを変えなきゃいけないのかなと、少し早めにバスケットを始めました。

「一番修正しなければいけないのディフェンス」
――昨シーズン、チームに足りなかった部分はどんなところだと感じていますか
欲を言えば、選手それぞれの判断であったりとか、その都度の判断に問われるIQの高さだったりというのはすごく大事になると思うんですけど、そこは求めるハードルとしては高い部分になると思います。ただ、言われている最低限の部分であったり、気持ちの部分だったりとか、そういうところで遂行しきれていないことがあった。チームとして本当に一丸になれているか、ちょっと疑問に感じてしまう部分があったので。それは自分もチームのポイントガードとして、チームづくりをして行く上で、あってはいけないことだったと思います。
ある意味、本当に自分のキャリアの中ではいい意味で価値のある、経験値が高くなるシーズンだったのかなと思います。自分としても後悔する部分があったので、「もっとこうしておけばよかった」というタラレバはかなり出てきてしまったシーズンなのかなと思います。
――昨シーズンの成績を踏まえて、ここは改善して新しいシーズンを迎えたいというポイントはありますか?
昨シーズンは3Pシュートの確率であったり、ディフェンスのレーティングもそうですし、失点もちょっと多かったというのがあります。今シーズンはインサイドが昨シーズンに比べて強力になっているので、アラン・ウィリアムズ選手、カイル・リチャードソン選手といった選手が入ったことによって、中を信じて、より気持ちよく外が打てるようになるのかなと思います。
オフェンスのところはそんなに心配していないというか、個の能力もある選手が多いですし、このシステムでやっていければ全然問題はないのかなと思うんですけど。やっぱりディフェンスで、守った後のリバウンドや3Pは、去年かなり多くやられてしまったのがうちの特徴の一つです。なので、ディフェンスのシステムのところを、今段階を踏みながらではあるんですけど、そこを一番修正しなきゃいけないのかなと感じています。
ーー昨シーズンは新加入選手も含めた全員がシステムを覚えて、それを信頼して遂行するのに時間がかかってしまったとHCや選手から聞きました。今シーズンも外国籍選手がかなり入れ替わりましたが、今シーズンはいかがですか?
去年はサイズが少し小さかったので、やったことのないファイブアウトの形をやったんですけど、それがやっぱりはまらなくて。結局、その前の年(二年前)にやっていたようなシステムを取り入れました。その前のシステムは、僕ら長くいる選手はずっとやっていたバスケットだったのでスッと入れたんですけど、去年からの新加入選手は、そのファイブアウトをやってしまったせいで、対応するのに時間かかってしまいました。
昨年(の取材で)言っていたのはそういう部分だったんですけど、今年は僕らもちょっと新しいシステムなので、新しく入ってきた新規の選手だけじゃなくて、長くドルフィンズでやっている選手も新しいことにチャレンジしています。その中でも段階をしっかり踏んでいるので、チーム全員が新しいことにチャレンジしていますけど、それぞれの良さを生かすシステムにもなっていると思います。今までドルフィンズがやってきたバスケットもやらないのかっていうのはコーチに話したんですけど、そこはまだ段階的に取り組んでいないだけであって、今までやってきたバスケットと今やっている新しいシステムのところがうまくミックスしていければ、本当に楽しみでしかないというのが率直なところです。
――外国籍選手では、得点力もありハンドリング能力もあるアーロン・ヘンリーが加入しましたが、ヘンリーの印象は
やっぱり彼がいると、僕が(ディフェンスに)ディナイされた時であったりとかに、ボールを運んでこられるので、そういった時のオプションであったりとかバリエーションというのはかなり広がるのかなと感じています。

日本代表入り意識「還元のチャンスある」
――今シーズン、対戦が楽しみなチームはありますか?
僕はどことでも早く試合がしたくて。北海道って言おうとしたんですけど、開幕戦で戦うので。北海道が開幕戦の相手だからというわけではなくて、ジャリル・オカフォー選手、富永啓生選手というネームバリューの高い選手が入ってきている中で、北海道に限らずいろんなチームで「この選手が日本に来たんだ」となっているので。対戦してみたいチームはありますね。
普通に一Bリーグのファンというか、バスケットを見る側として楽しみなのは、長崎ヴェルカです。やっぱりイ・ヒョンジュン選手が日本にシーズンの最初から来るのは初めてですし、馬場も長崎に戻ってきて、レイカーズにいたスタンリー・ジョンソン選手も来て、それに加えて山口選手やベテランのシューター森川選手とかウィング陣の豊富さがすごいなと思うので。最初に挙げた3人の選手がどう共存していくのか。それぞれの良さをしっかり生かせるバスケットにしていくのか。その辺りは早く見てみたいし、楽しみだなと思いますね。
-オフシーズンには日本代表選もありましたが、ご覧になりましたか?日本代表に対する思いは
基本的に見られる時は見るようにしています。親善試合、練習試合、アジアカップも含めて、本戦で今いる選手の100%の良さが出せたかというとそうは見えなかった。そういった意味では、各々の選手がより良いパフォーマンスを発揮するにはもっとこうした方が良いなとか、「僕がポイントガードだったらもっとこうしたな」とか、「チーム全体としてもっとこうすればいいのにな」という考えも持っていました。その辺りはやっぱりちょっとうずうずした気持ちにはなりました。
(代表選出に)このBリーグの結果というのはものすごく大事になると思いますし、代表が求めているバスケットと、自分たちがやっているドルフィンズのバスケットというのはやっぱり似ていると思うので。自分も日々シーズン通しながら成長して、日本代表に呼んでいただけるチャンスがあるのであれば、そこはしっかり自分の良さであったり、もっとこうした方がいいんじゃないかって思っている部分は、還元していけるチャンスがあるので、頑張りたいなと思います。

(高久理絵)






