
ショーン・デニスHC体制5シーズン目を迎えるBリーグ1部の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。おなじみとなった速いテンポのスタイルのバスケを基盤に、今季はリーグ随一の得点力を誇るアーロン・ヘンリーや帰化枠のカイル・リチャードソン、3季ぶりの復帰となったアラン・ウィリアムズらを新たに加え、より若くて強力な布陣が完成した。
そんなチームの中でも、期待がかかるのが所属2季目を迎える今村佳太だ。今季は中東泰斗とともにダブルキャプテンに就任した今村。チームを導く思いや、昨シーズンの振り返り、「Bリーグユナイテッド」での経験、今季への意気込みなどについて、話を聞いた。(※取材日は2025年8月25日)
昨季のCSでは“先輩”柏木真介から刺激
――加入1季目となった昨シーズンを終えての感想を教えてください
個人的にはけがから入ってしまって、スタートダッシュの部分で協力できなかったのは申し訳ないなと思っています。チームとしても途中、後半は9連勝もして、少しずつ形は見えてきたものの、チームとして勝ち筋、出ている5人もそうですし、チームとして納得してできた試合というのが、本当に数えられるぐらいの試合数だったので、改めて勝つことの難しさを痛感させられました。だめだったところだけではなくて、個人的には速い展開だったり、速いペースの中でのディシジョンメイキング、状況判断の部分はすごく自分のバスケットボール人生にとってもプラスになるものになったかなと思っています。
ぱっと見の結果だけ見てしまえばチャンピオンシップ(CS)も出られなかったですし、個人的にもチーム的にも誰よりも厳しく、次のシーズン生かさなきゃいけないと思うんですけど、もちろんプラスのところもあったと思うので。トライアンドエラーをこれからも続けていかなきゃいけないと思いますし、今シーズンは結果を出していかなきゃいけないなと思っています。

――CSのセミファイナル3戦目を観戦に行かれていましたが、琉球の選手たちとどんな会話をしていましたか?
あのタイミング(バスケットライブで映っていた時)は多分、琉球がファイナルを決めたタイミングだったんです。まずは「おめでとう」みたいな感じの話をしたのと、マジで世間話です(笑)。別にバスケのことを話した記憶は一切(ない)。
――3戦目を選んで行かれたんですか?
一つ、柏木真介さんが僕の新潟時代でお世話になった方でもありますし、いろんなことを教えてもらった方でもあるので、(引退か現役続行か)どうなるか分からない試合もあったので、見える距離で応援というか、見に行きたいっていうのもありました。(柏木のことを)「わぎさん」って言ってるんですけど、わぎさんが最後になるかもしれないって思っていたので、そういう姿をちゃんと最後見たいなというのがありました。結果的に真介さんはああいう形で、あの年齢でもできるっていうことを証明して引退されたと思うんですけど、あの姿を見ていると、もちろん琉球がファイナルに行ったってことも素晴らしいことですけど、僕として真介さんがああいう姿を見せてくれたことっていうのは、すごく大きかったなと思いますし、見に行ってよかったなと思っています。
――ファイナルはご覧になりましたか?どういう目線で見ていましたか?
見ました。全部見たと思います。ゲーム3のときは僕は旅行に行ってたんですけど、旅行先でも見ていた記憶はあります。僕はもう名古屋ダイヤモンドドルフィンズとしてプレーしていますし、琉球ゴールデンキングスは琉球ゴールデンキングスとして戦っているというので、一バスケットボールプレーヤーとして、その試合を見て。ファイナルで戦うには、こういうことが必要だよなとか、どっちを応援するというよりも、前所属したチームで一緒に戦ったメンバーもいるので、琉球ゴールデンキングスというチームに思い出もあるので。(琉球に)思いはありますけど、そこはもう全部フラットに(見ていました)。
――ファイナルの舞台にドルフィンズとして立つために必要なことは
細かいところでいったらリバウンドであったり、遂行力であったり、オフェンスの質だったり、いろいろ挙げたらいっぱいあると思うんですけど。理屈じゃないところをどれだけ頑張れるか。どうしても、こうすれば勝てるとか、これをやれば強くなるとか、いろんなことがあると思うんですけど、実際、そういうのって不透明な部分が多いと思うので。自分たちの能力を発揮しきれなくても勝ち切る力であったりだとか、やりきる力であったりとか、あとは個人個人のメンタル。どれだけ勝ちたいっていう気持ちが60試合の中で出続けて、その自信をCSでどれだけ発揮できるかという部分になると思います。
ファイナルで戦う2チームは、本当しつこいぐらいやり続けるし、体を張り続けるし、戦い続けるチームだと思うので、スタイルは違えど、僕たちには僕たちなりのそういう戦い方というのを理屈じゃなく続けられる強さがあれば、このチームはいくらでも伸びると思います。強豪といわれるチームたちの一角に入るか入らないかというのは、僕はそういうところだと思っている。そこがすごく大事になるし、ポテンシャルのあるチームだと思っているので、特に今年は。そこの自信をつけながら、タフさであったり、忍耐強さだったり、そういうものを身につけていく必要があるかなという思います。

Bリーグユナイテッドでプレー「いい機会に」
――新チームが始動しての感想は
本当に若い。エネルギッシュな選手が増えて、95年組といわれるメンツとも話すんですけど、自分たちはもう30歳になって節目という年に来て、全盛期がどこまで続けられるかという年齢的な戦いも出てくる年にもなってきました。いつまでも大事にしたいのは「バスケットボールを楽しみたい。かつ結果を出したい」というところがすごく強いので、若手のエネルギッシュさをよりいいポジティブなものに変えていくのは僕たちの仕事なのかなと思いますし、僕の仕事なのかなと思います。
今年はキャプテンという役職にも就かせてもらった。一回「Bリーグユナイテッド」で、あとは学生のカテゴリではあるんですけど、プロに入ってからは(キャプテンを務めるのは)僕は初めてなので。ショーン(デニスHC)だったり、いろんな方に選んでもらって、やってくれないかってお願いされるというのは、選手としてはすごく嬉しいことですし、自分としてはチャレンジしたいなと思ったことなので(就任した)。ただ、あまりキャプテン、キャプテンするタイプでもないと思っているので、自分の中でも、いろんなところにチャレンジして、もう一皮二皮むけるタイミングなのかなと思ったので、自分なりに毎日学びながら、やっていこうかなと思っています。
――Bリーグユナイテッドとして海外のチームとも対戦をしました。どんな経験になりましたか?
得たものしかないというか。プロジェクトとしては最初のことだったので、選手もそうですし、スタッフもそうですし、最初の参加している僕らもそうですし、参加していない方も含めて、いろんな不安であったりだとか、どうなんだろうって思いが結構あったと思います。興行の部分でもそういうところはあったと思うんですけど、参加した僕からしたら、すごくありがたい期間だったなと思っています。あの強度だったり、身体能力もそうですし、ああいう経験が国内にいてはなかなか得られない機会なので。これから自分がBリーグでもそうですし、レベルが上がったところで戦っていくとなった時に、一つの自分のプレースタイルをこれで突き抜けていくべきだなっていう部分がより明確になった。そこの質を上げていけば通用するんだなということも思ったので、自分の中ではすごく有意義な時間になりました。来年以降もあるか分からないんですけど、もしあれば参加したいと思うぐらいです。
今回、キャプテンという立場だったので、水野(宏太)ヘッドコーチとたくさん話をさせてもらったんですけど、その中でも、もし来年、再来年で続けていくのであれば、若手の選手にそういう経験をさせるというのは、すごく大事だと思います。最初のプロジェクトが始まるタイミングで僕も「やりたいです」と伝えてはいたので、もっともっとBリーグユナイテッドというプロジェクトの価値が伝わってほしいです。NBAサマーリーグのチームと練習試合をさせてもらえるなんてないことだと思うので、その機会は得るに越したことはないと僕は今回参加して思いました。いい機会をいただけたなと感じました。
巻き込む力とオフボールの動きに注目してほしい
――最後に、新シーズンに向けての意気込みをお願いします
昨シーズンはチームとしてなかなかできなかったんですけど、今シーズンはもっともっと周りを巻き込んでじゃないですけど、それぞれの選手の良さであったり、チームの良さであったりを引き出すようなプレーもそうですし、コミュニケーションもそうですけど、まとまり感というか、チームとしての結束力高く、それがプレーのシステムにつながってくると思っているので、そういう巻き込む力というのは見てもらいたいなと思います。
プレーに関しては、今シーズンはアーロン・ヘンリー選手という強力な、ハンドルもできるし、何でもできる選手が来た中で、自分の役割も少しずつ変わってくるのかなと思っています。オフボールのプレーは質を高めてやっていけば、もっとチームはうまくいくんじゃないかなと思っているので、オフボールでの僕の走り回ってる姿を見てもらえばなと思っています。
特に今年は少しオフェンスのところでのコンセプトというか、手を加えた部分がチームとしてあるので、そのスタイルは自分にも合っているなと思いますし、流動性を持って、一体感を持って、狙いだったりを理解した上で、5人がプレーできれば結構止めづらい動きになるなと思っています。変な話、昨シーズンは自分たちとしてなかなかうまくいっていないと言っても(平均で)82点取れてるんで。そこはネックじゃない。どうやっても、どのディフェンスをやられても点は取れると思っているので。本当にディフェンスの部分の質をどれだけ高められるかというところと、やっぱりディフェンスリバウンドですかね。ここ2年、僕がいない年からもそうだと思うんですけど、ディフェンスリバウンドが結構、名古屋ダイヤモンドルフィンズとしては、一つの課題だと思っているので。オフェンスリバウンドを取れるんですけど、ディフェンスリバウンドを一回でやりきるっていうところ。そのためにもアラン・ウィリアムズ選手も頑張ってくれると思いますし、チームとしてディフェンスリバウンドを一回で(取り切る)。ディフェンスを頑張ります。

(高久理絵)






