Bリーグ1部(B1)第19節を終えて、4勝28敗とリーグ最下位に沈む滋賀レイクス。1月21、22日にホームで行われた島根スサノオマジック戦に連敗し、15連敗と長いトンネルを抜け出せずにいる。
今季はテーブス海をはじめとする期待の選手を獲得するも、インサイドの柱であるイヴァン・ブバの怪我やジェイコブ・ワイリーの帰国など外国籍選手の度重なる離脱に悩まされている。さらには、昨年11月16日にルイス・ギルヘッドコーチ(HC)との契約解除も発表。チームを揺るがす出来事が何度も起こり、なかなか体制を整えられないまま前半戦を終えた形となった。
そんな中、短期契約選手として11月2日にチームに加入したのがスペイン出身の41歳、デイビッド・ドブラスだ。
長年スペイン1部リーグで活躍し、ギリシャやアルゼンチンなど海外のチームを渡り歩いた後、2018年からはBリーグでプレー。滋賀に加入するまでにレバンガ北海道、ライジングゼファー福岡、熊本ヴォルターズ、バンビシャス奈良、大阪エヴェッサとB1とB2合わせて5チームを渡り歩き、平均27.3分の出場で13.9得点8.1リバウンドを記録している。滋賀に加入後は23試合中19試合で先発を務め、平均10.0得点6.5リバウンドとビッグマンが手薄なチームを泥臭く献身的なプレーで支えている。
Bリーグ6チーム渡り歩いた苦労人 ファンなどへの感謝忘れず
21日の島根戦の後、ドブラスは記者会見室に姿を現した。
「皆さん、お疲れ様です」
流暢な日本語で記者に挨拶をしてから席に着く。試合の総括についての質問が飛ぶと、ドブラスが語った言葉に驚かされた。
「まず、今日の試合がどうだったかよりも私が伝えたいことは毎試合会場にお越し頂いているブースターの皆様、チームをサポートして下さっているスポンサーの皆様、球団の皆様への感謝の気持ちです。皆様が会場に来て下さっていることが自分たちの大きな力になっているので本当に感謝しています。スポンサーさん、球団、ファンの皆さんは、今シーズン、自分たちのために高いレベルで尽くしてくださっていると思っています。ただ、それに対して自分たちのパフォーマンスレベルがそこに到達できていないということを我々選手の方ではしっかりと受けとめています。コーチングスタッフも試合に向けていろいろな準備をしてくれているので、自分たちがもっと高いレベルに達しないといけないと思っています」
試合の総括や自身のプレーについてではなく、まずファンや関係者への感謝を口にしたドブラス。過去にも下位で苦しむチームに所属した経験もあるドブラスだからこそ、大変な時にチームをサポートしてくれるファンのありがたみや大切さをよくわかっているのだろう。
メンターとしても貢献「若い選手のロールモデルに」
敗れはしたものの、島根との第1戦ではチーム最多の16得点5リバウンドを記録したドブラス。保田尭之HC代行は「チーム内では唯一、インサイドで身体を張れる選手だと思っています。コート外では選手間の接着剤的な役割もしてくれていますし、チームのために献身的にプレーしてくれている代表的な選手だと思っています。ですので、彼のコート内外での働きには常に満足と敬意を持っています」とドブラスを称賛。若い選手が多く在籍し、強いリーダーシップを必要としているチームの中で、プレー面だけでなく年長者としてオフコートでもチームのメンターとしての役割をも担うドブラスの貢献度の高さを説明した。
ドブラス自身もメンターとしての役割を受け入れているという。
「それが自分のプレースタイルであり、役目。あとは自分が経験のある選手というところからも、若い選手がいる中で自分が教えられることをしっかりと教え、ロールモデルになることが球団から求められていることだと思います」
あるときは広報カメラの前でパフォーマンスをし、試合中には倒れた相手選手に手を差し伸べ、判定に不満があった時でも審判に対して日本語で丁寧に話す。何事にも真摯に対応する姿は、若いチームメイトにとっても良いお手本となっているだろう。
苦しい状況を抜け出すため、何よりも必要になってくるのがコート上での奮起だ。
「今日(第1戦)は25分プレーしましたが明日(第2戦)は15分になるかもしれないです。プレータイムはどうなるか分からないですが、出場している時間帯に自分ができる100%を出すことが一番重要ですし、チームにとっても一つになるため、エネルギーをもたらすために必要だと思っています」とドブラスはパフォーマンスで示すことの重要性を口にする。
難しい状況の中で少しずつではあるが、チームの中ではポジティブな部分も出てきているという。星野京介を例に出し、「今日(第1戦)は約4分しか出場していないですが、彼のエネルギーは本当に素晴らしかったです。彼のプレーを見て、自分ももっとやらなきゃというメッセージを受け取りました」と称賛。同じように野本大智についても「彼のスタイルを使ったドライブでスコアする場面もあったし、そういったものが観ている人にだけでなく、一緒にプレーしている自分にも伝わって来ました」と語り、出場時間は短かったもののエナジー溢れるプレーで会場を盛り上げた若手2選手を称えた。
今季2度目のHC交代 若いチームを導く存在に
1月26日、アウェー仙台89ERS戦を前に保田HC代行の契約解除、ダビー・ゴメスACのHC就任が発表された。今シーズン2度目のHC交代となった滋賀レイクス。若いチームにとっては新たな試練となるが、そんな時にドブラスのようなベテランの存在が重要になってくることは間違いない。
リーグ最下位、15連敗という苦境に立たされたいま、ここからどう戦うかでチームの真価が問われるとドブラスは語る。
「こういった状況はメンタル面がすごく難しく、重要だと感じています。自分も似たような状況を経験してきたからこそ、ここから間違った方向に進んでしまうとどうなるのか分かっています。今、チームのために何ができるのかということに焦点を当てて行動しています」
シーズン途中に加入し、短期契約ながらもコート内外でチームのために全力を尽くすドブラスの姿は、チームメイトにどんな影響を与えるだろうか。頼もしいメンターに引っ張られ、躍動する新体制の滋賀を見てみたい。
(田名 さくら)