Bリーグ1部(B1)の千葉ジェッツは1月21日と22日にアウェイのホワイトリング(長野県長野市)で信州ブレイブウォリアーズと対戦し、第1戦は89-70、翌日の第2戦は71-70で勝利。連勝をクラブ最多タイの「14」に伸ばした。1月4日に行われた天皇杯クォーターファイナルでも対戦した両者。天皇杯でも千葉Jが延長戦までもつれた試合を89-82で制しており、1か月で3度対戦した信州に対して全勝でシリーズを終えた。
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今季全試合でスタメン 出場時間、得点などでキャリアハイ
21日の第1戦では前半こそリードを許す展開となるも、後半はプレーの強度を高め第3クオーター(Q)には信州を6点に抑える堅い守備を披露。そのまま主導権を握り89-70で勝利した。
翌22日の第2戦、信州はクラブ史上最多の6,014人の観客を動員。ホームコートアドバンテージのある信州を相手に、出場停止となったギャビン・エドワーズを欠く千葉Jはなかなかリードを奪えないまま終盤を迎える。68-70と2点ビハインドで迎えた第4Q残り11秒、富樫からパスを受けた原修太が値千金の3ポイントシュートを沈め、71-70と逆転に成功。最後もポゼッションでも堅い守備で信州の得点を許さず、激戦を制して連勝記録更新に望みをつないだ。
信州との2連戦、攻守でチームをけん引したのは背番号31の原だった。
Bリーグ初年度から千葉J一筋7季目を迎えた生え抜きフォワードは、今シーズンここまで全32試合に先発出場。出場時間(27.5分)、得点(10.2)、リバウンド(2.0)、スティール(0.6)、ブロックショット(0.3)と多くのカテゴリーでキャリアハイの数字を残している。
キャリアベストのシーズンを送っている原の「進化」を、オフェンスとディフェンスの両面から見ていく。
信州戦で逆転3Pショット 攻撃面で多彩さ光る
まずはオフェンス面。第1戦ではエドワーズに次いでチーム2番目に長い29分29秒の出場で14得点を記録。エドワーズが欠場となった第2戦ではチーム最長の37分55秒プレーし、逆転ショットを含む16得点で勝利に大きく貢献した。
今シーズンは3Pの試投数が昨季と比べて倍増(2.1→4.4)。成功率は32.4%と特筆すべき数字ではないものの、信州との2戦では8本中4本と高確率で沈めている。また、持ち前のフィジカルを生かした積極的なアタックも増え、フリースロー試投数でもキャリア最高(2.1)の数字を残している(成功率は78.8%)。第1戦ではチーム最多タイの5アシストを記録したように、ゲームメイクの面でも成長を見せており、「外からのシュート」「ゴールへのアタック」「ファウルを誘う」「チームメイトを生かす」などオフェンス面でのバリエーションが増えていることが原の武器になっている。
フィジカルだけではなく、メンタルの強さも光る。第2戦、2点ビハインドで迎えた最後のオフェンスでは、富樫がボールコントロールをする中、自らパスを要求。信州の三ツ井利也のチェックを受けながらも3Pショットを沈め、逆転勝利に貢献した。
勝負強さを見せた原に対して、ジョン・パトリックHCは「あれは経験と自信とタレント(才能)。いくらシューティング練習をしても、ディフェンスが目の前にいて、一番大切な時間に打つのは本人たちが勇気を持っているから」と称賛を惜しまなかった。
全ポジション守れる万能性「日本人ナンバーワン」
ディフェンス面では元々定評のあった原だが、守備に重きを置くパトリックHC体制の今季のチームではその重要度がさらに増している。ガードポジションの選手にもマッチアップできるフットワークと俊敏性を持ちながら、外国籍選手のプレーにも対応できるフィジカルを持つ原は、1番から5番まで守れる唯一無二の存在だ。
信州戦ではリーグ屈指のスコアラーである岡田侑大に主要ディフェンダーとしてマッチアップ。2試合で31得点を許したものの、フィジカルなディフェンスで岡田のフィールドゴール成功率を31.3%、3P成功率は18.2%に抑えるなど、効率の良いオフェンスをさせなかった。
原の執拗なディフェンスは最後の信州のオフェンスにも影響を与えていた。71-70と千葉Jの1点リードで迎えた信州のラストポゼッション。信州は熊谷航がトップからドライブを仕掛け、右コーナーにいた三ツ井にキックアウト。ほとんどオープンの状態で放った三ツ井の3Pショットはリングに嫌われ、千葉Jが辛くも逃げ切っての勝利だった。
結果だけ見ると、逆転ショットは決まらなかったにせよ信州のオフェンスはうまく遂行されたように見える。だが、この11秒の攻防の中で“一瞬のリズムを狂わす”原の貢献があった。
第2戦後の会見で信州の勝久マイケルHCに最後のポゼッションについて尋ねると、第1オプションは岡田にボールを持たせてプレーを始めることだったという。「マック(アンソニー・マクヘンリー)がボールをもらった後のオカ(岡田)がジョシュ(ホーキンソン)にスクリーンをもらう角度とタイミングが0.〇秒の話だがずれていて、オカがボールをもらえなかった」と振り返る。そのズレを生み出したのが原のディフェンスだったと岡田はいう。「コーチが自分にボールをもらいに行くセットプレーを用意してくれたが、原さんのディナイと身体の強さにボールをもらわせてもらえなかった。意地でもボールをもらいに行くべきだったと思う」
原が試合を通してタフにディフェンスを継続したことで、最後の場面で岡田に一瞬の迷いを与え、結果的にそれが千葉Jの勝利につながったのだった。
パトリックHCは原のディフェンスについて「原は日本人にしても外国人にしても、いつも相手のトップ選手とマッチアップしている。日本人ナンバーワンのディフェンスのプレイヤーだと思う」と絶賛。「(富樫)勇樹とともにうちのエースです」とその貢献度の高さを表現した。
新体制でディフェンス強化 リーグ首位の成績で後半戦へ
オフにHCを含めスタッフが大量に入れ替わり、パトリックHC体制で新たなスタートを切った千葉ジェッツ。最初の5試合を3勝2敗としたものの、その後は25勝2敗と圧倒的な強さを見せ、第19節を終えて14連勝中と乗りに乗っている。
「(新体制になって)ディフェンスの部分もオフェンスの部分も変わってきたかなと思う。チームとしては良いリズムで出来ていると思うし、ディフェンスの部分はどう守るかがはっきりしている分、すごく良いディフェンスが出来る時間帯があるのは自分たちの強み」と富樫がいうように、平均失点は昨シーズンの76.8点から74.4点(リーグ5位)まで減少。ディフェンシブレーティングも106.0から102.5(リーグ3位)まで減少したことから分かるように、ディフェンス力でもリーグ屈指のチームとなっているのが今季の強みである。
「ハイスコアでもロースコアでもここぞという時に点数を離す力は、今年はこのリーグで一番あると思う」と原が手ごたえを口にするように、ディフェンス力に加え終盤での勝負強さを発揮できていることがリーグベストの成績につながっていることは間違いない。
昨年はまさかのチャンピオンシップ(CS)クォーターファイナル敗退と悔しさと向き合った千葉J。新体制となった今季はディフェンス重視という新たなスタイルの中、原の進化にも助けられ圧倒的な強さで前半戦を駆け抜けた。このまま千葉Jが快進撃を続けるのか、ここに待ったをかけるチームがあるのか。後半戦も“シン・千葉ジェッツ”から目が離せない。
(芋川史貴)