来月3日に開幕するBリーグ2024-25シーズン。B2・信州ブレイブウォリアーズは26日、ことぶきアリーナ千曲(千曲市)で練習を行い、実践形式を交えながらフォーメーション等を確認。10月5日、6日の開幕戦に向けて、約2時間にわたり汗を流した。開幕節ではアウェイ(セーレン・ドリームアリーナ)で今季B3から昇格した福井ブローウィンズと対戦する。
昨季まではB1で4シーズンを過ごした信州だったが、今季はB2へ降格。1年でのB1復帰を目指すべく、オフには日本代表の渡邉飛勇や2季連続でBリーグベスト5に選出されたペリン・ビュフォード、B2でMVPの受賞経験もあるテレンス・ウッドベリーら実力派の選手たちを多く獲得し、B2でも有数の層が厚いチームとなった。
今季で所属7季目を迎える勝久マイケルヘッドコーチは、昨シーズンを「今までで一番辛いシーズンになった」と振り返る。日本一のチームを目指すべく、B2から再出発する今シーズンを前に、勝久HCに話を聞いた。
大変なオフシーズンも「いい編成で終えらえた」
ー今年はどのようなオフシーズンを過ごされましたか?
今年もとても大変で、ずっと編成に取り掛かっていました。大変なオフシーズンでしたけど、終わってみれば良い編成で終えられたと思うので、よかったです。昨年の夏と比べて2、3日多く家族と過ごせたので、編成とは関係なく、大変でしたけど昨年の夏より良い夏でした。
ー家族とはどのように過ごされたのですか?
ハワイに2、3日いました。ずっと交渉を続けていた選手が飛行機に乗る前にちょうど合意まで持っていけたので、昨年と違って自分のメンタル的にも、一安心した状態で家族と時間を過ごすことができました。
ー長いキャリアの中で、昨シーズンのようなアップダウンが激しいシーズンを過ごした経験は今までありましたか?
あれに一番近いのは、(bjリーグ時代に)横浜(ビー・コルセアーズ)にいたときに、怪我人が続いてしまって、確か10連敗を1回挟んで、また10連敗ぐらいして。あのときのルールは「オン(オンザコート)3」だったと思うんですけど、我々は「オン1」だったり、外国籍を4人登録できる中で、1人や2人しかいなかったり。怪我人がたくさん出てしまったシーズンに、ずっと暗いトンネルがあるようなシーズンは一度あったんですけど、昨年はそれとはまた別物で。怪我もそうですけど、我々が作ってきたカルチャー、メンタリティ、スタンダードとは違う毎日だったので、それが何よりも辛かったので、ああいうシーズンになる材料がいろいろ揃ってしまったシーズンは初めてでした。
ー「カルチャーを守るバトルの日々」とも仰っていましたが、HCのメンタルはいかがでしたか?
1シーズンではなく、あの1年間は、その前のシーズンが終わったところから始まったので、自分の健康や体調にも、夏の時点から影響はありました。でも、最初はスタントン(キッド)もウェイン(マーシャル)もまだ怪我する前で、トレーニングキャンプにみんなで取り組んでいたときは、自分もそこでみんなに元気をもう1回(もらって)。もちろん自分の準備をちゃんとして、しっかりとコーチングができる準備をしていたんですけど、良い人たちと良い取り組みを最初はできていました。特にスタントン、ウェインのラインナップだったり、継続しているメンバーだったり、新加入でも学ぶためにハングリーな選手だったり。そういう人たちと取り組んでいたトレーニングキャンプは元気をもらって、ある程度良い状態にはなれたと思っているんですけど。
そこからは今までで一番辛いシーズンになった。こういうビジネスだとはもちろん分かっているので、そういうときもあると分かっていながらも、負けるのも辛い、悔しい。バスケットをリスペクトしている者として、日々どういう取り組み方をしたいか、どういうチームを作りたい、どういうカルチャーを作りたい、という思いを持っている人としては、負けるのも辛いですけど、プロセスも辛い部分があった。メンタル的にも今まで一番タフな1年で、当然、それによって健康にいろいろ影響が出るとやっぱりいろいろ考えてしまうような1年間ではありました。
でも、それは自分だけではないので。バスケット業界でなくても、皆さんいろいろな仕事をされていて、いろんなストレスはみんなあると思いますし、でもバスケットの世界で言ったら、他のヘッドコーチと相談すると、例えば「体を大事にしないといけない」とか「自然の中を散歩する」とか。それは(名古屋ダイヤモンドドルフィンズHCの)ショーン・デニスさんだったんですけど。自分だけじゃなくて、みんな長いキャリアの中で大変なシーズンはあるので。家族や自分の健康というのは大事にしないといけないなと思いました。
そこからこの大事に思っているチームが降格してしまって、シーズン終わってしばらくは悔しい思いなど、感情的になるのがコントロールできなかったですし、スポンサーの方だったり、ブースターの方だったりに優しい言葉や温かい言葉をいただくだけでも感情的になってしまったり。あとは自分自身どうするかという考えをしているときにも感情的になったりすることが続いていたんですけど、徐々に回復していきましたし、この夏で少しずつ健康面でも体やメンタルが戻ってきたと思います。ドラマチックに聞こえますけど、多分自分だけじゃなくてみんなそうなので。そしてバスケット業界に限らずみんな頑張っているので。でも今は大丈夫です。
「ディフェンス・ファースト」のメンタリティが重要
ープレシーズンや天皇杯を終えて改めて今季はどのようなチームになりそうですか?
(石川)海斗だったり、P(ペリン・ビュフォード)だったり、元々IQも高くて視野も広くて、我々のメインのプレーメーカーの2人になりますけど、やっぱり本当に良い判断ができる。そしてウェインのように必ず正しい場所にいて、周りをベターにして、一番勝ちに貢献するグレートなプレーヤー。相変わらずウェインが自分の中ではNo.1なんですけど、そういう選手がさらに周りをやりやすくする、そして良いシューターも揃っていると思うので、その選手たちが最初から良い判断ができると思っています。
チームとしての遂行力はまだまだですし、これからスカウティングされて、対策されてどんなことが来ても準備できているチームに成長していかないといけないという、道はまだ長いと思うんですけど、オフェンスでのポテンシャルはすごくあって、でもディフェンス面ではプレシーズンゲームでの失点はすごく多い。トランジションディフェンスから始まり、ハーフコートディフェンスの我々のルールを覚えることから習慣にすること。そして、メンタリティ的にもディフェンス・ファーストでやりたいということを理解してもらう。
エナジーをその面で全力で使うことのメンタリティだったり、スカウティングを我々は大事にしていて、40分間の中の一つ一つのプレーの大切さとかそういうメンタリティ。ディフェンスの全ての面で成長が必要で、チャレンジが必要。オフェンスももちろんまだまだこれからですけど、本当にタレントのある選手たちがいるので。チャレンジはディフェンス面だと思っています。
ー今季の意気込みとブースターへのメッセージをお願いします
ティップオフイベントでも話しましたし、チーム内でも最初の練習の日だけ話してそれ以降は口にしていないんですけど、やっぱり我々の目標はB2優勝して1年でB1に戻ること。ただ、プロセスに集中しないと、日々成長を成し遂げないと最後に一番強いチームにはなれないと思います。そして、昨年の話はあまり話したくないんですけど、昨年は試合の結果だけでなく、日々のプロセスもチームとして辛いところがあったので、もう一回純粋に、毎日の一つ一つのやるべきこと一つ一つの練習、毎日成長することにみんな夢中になってほしい。それがやっぱりバスケットをやっている中で充実して楽しんでることに繋がると思うので。
今年も、どのシーズンとも同じようにアップダウンはあると思うんですけど、6年前とは違って、一度B1にいたチームがもう一度上がることを目指している。まだ悔しい気持ちだったり、まだいろんな思いがあるかもしれないですけど、我々はプロセスにフォーカスしたい。最後笑って終われるように、そのために1試合1試合大事に戦っていきたいと思うので、ブースターのみなさんの応援はいつも感謝しています。一緒にそのプロセスを、先を見すぎずに、まずは1試合1試合楽しんで応援していただけたらと思いますので、今シーズンも応援よろしくお願いします。
(芋川 史貴)