史上最速B1昇格から5勝1敗 快進撃を見せる長崎ヴェルカの強さの秘密とは
長崎ヴェルカの馬場雄大(中央)©Basketball News 2for1
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 今季Bリーグ1部(B1)に昇格した長崎ヴェルカが快進撃を続けている。

 第1節では昨季最高勝率の千葉ジェッツにホームで連勝すると、第2節では富山グラウジーズにアウェイで勝利し、開幕4連勝でB1初年度をスタート。10月20日から22日にかけて行われた第3節はジョシュ・ホーキンソン田中大貴らを加え大型補強をしたサンロッカーズ渋谷と対戦した。第1戦は78-85で今季初の敗戦となったのものの、第2戦は91-74で勝利し、現時点で5勝1敗と強豪ひしめく西地区で3位につけている。

 チーム創設からわずか3年でリーグトップクラスの成績を残す長崎の強さの理由とは-。

快進撃を見せる長崎ヴェルカ©Basketball News 2for1

SR渋谷に初黒星も第2戦でしっかり修正

 SR渋谷との第1戦、前半からオフェンスでリズムをつかみ最大13点のリードを築くも、後半は相手の堅い守備に苦しみわずか27得点と失速。逆転負けを喫し、今季初黒星となった。15日の第2戦は前日と同様、前半を終え54-41と13点リード。第3クォーター終盤に一時2点差まで迫られるも、勝負の第4Qで21-10とアドバンテージをつかみ、前日のリベンジを果たした。

 試合後、前田健滋朗HC「昨日と同じような展開だったので、ロッカールームに行ったときに選手たちは『後半だ』と選手たち同士で話をしていたので、そこは選手たちがすごく頼もしかった」と語ったように、後半も気を緩めることなく試合を進めた長崎。第1戦では後半の失点が45だったのに対し、第2戦では33失点に抑えるなど強固なディフェンスを披露。オフェンスではゲームハイ28得点を記録したジャレル・ブラントリー森川正明が重要な場面で得点を決め、粘るSR渋谷を引き離した。

 後半のプレーについて指揮官は「チームでまとまって踏ん張り切ったことによって、相手のスコアを止めることができ、落ち着いてオフェンスを展開することができて、試合を進めることができたと思います」と手ごたえ。チームで20アシスト、3Pショットの成功率は60.9%(14/23)を記録するなど、今季の躍進を支えるチームプレーを存分に見せつける試合となった。

馬場雄大も加入 “速いバスケ”でリーグを席巻

 史上最速でB3からB1まで駆け上がってきた長崎ヴェルカ。その強さの秘密は「速さ」「スモールボール」にある。

 ここまでの6試合を終えて、ペース(平均ポゼッション数)ではリーグ3位(77.6)、平均得点はリーグ2位(89.8)、3P成功率はリーグ2位(40.3%)、EFG%(3Pの重要性を加味したフィールドゴール成功率)ではリーグ1位(58.1%)と、あらゆるオフェンスの指標でリーグ上位の数字をたたき出している。外国籍選手を含め選手全員が203㎝以下という“センター不在”の小さなチームながら、全員が外から打てるシュート力と速攻に走れる脚力を持っており、チームのスタイルを体現している。

 またディフェンスでも試合を通してガード陣が前線から激しく当たり、ターンオーバーを誘発。平均スティール数でもリーグ2位(8.0)を記録するなど、激しいディフェンスから速い展開につなげることが出来ている。今季は荒谷裕秀森川正明、さらに日本代表の馬場雄大といった攻守で活躍できる新戦力を加えており、長崎が掲げる「Has it」(HARD、AGGRESSIVE、SPEED、INNOVATIVE、TOGETHER)のスタイルはさらに強固なものになっている印象だ。

激しいディフェンスも強みの1つだ©Basketball News 2for1

元A東京メンバーがコートで同窓会

 この試合では、アルバルク東京で同時期に活躍した選手・スタッフが一堂に会した。SR渋谷には今季新たに指揮官に就任したルカ・パヴィチェヴィッチHC(A東京在籍期間:2017-22)を筆頭に、デュシャン・グヴォズディッチAC(2018-19、20-22)、田中大貴(2013-23)、小島元基(2017-22)、ジェフ・ギブス(2010-16)が所属。長崎には前田健滋朗HC(2015-18)、馬場雄大(2017-19)と“元A東京”7名がコートに立った。

 パヴィチェヴィッチHCの下でACとして活躍していた前田HCは“同窓会”をこう振り返る。

 「私とルカもそうですし、(馬場)雄大、(田中)大貴、ジェフ(・ギブス)とか、(小島)元基は今回残念ながら出られなかったですけども、いろんな関係がある試合だったかなとは思うんですけども、私も選手も試合になると良いパフォーマンスをする、かつ、勝ちたいっていう思いだけが先行してたのかなというふうに思っています。もちろん試合中に逆サイドにルカがいるっていうのは個人的には何か変な感じはしました」

試合後、SR渋谷のパヴィチェヴィッチHCと握手をする前田健滋朗HC©Basketball News 2for1

 今季、5季ぶりのBリーグ復帰となった馬場はこの試合について「楽しかった」と笑顔を見せた。A東京で2連覇を達成した際にともにチームを引っ張った田中とも試合前に談笑したとし、「怪我の状態やお互いのチーム状況、ルカの話など元チームメイトだから話せるこそ話せる内容を話しました。(田中)大貴と話すのも久しぶりだったので、変わってないなという印象でした」と元チームメイトとの再会を喜んだ。

 “恩師”であるパヴィチェヴィッチHCとは、試合中にパヴィチェヴィッチHCが審判の判定に熱くなった場面で近寄って手を伸ばし、「落ち着いて」というジェスチャーを見せる場面も。試合後は冗談交じりで「レビューが多いんですよ。何回レビューすんのって感じだったんですけど」と恩師への“いじり”を見せ、「敵チームであれど、すごくかわいがってくれてるので、それに関してもういい仲としてその瞬間瞬間が楽しめました」と大切なひと時を存分に楽しんでいた。

馬場(左)は恩師とハイタッチ©Basketball News 2for1

 一方、パヴィチェヴィッチHCは「プロの中で戦うのは時間が来れば、人もコーチも変わる。そういう中でやっているのがプロの世界。もちろん彼らとはいい関係性を築いていて、いい友人かもしれないけどコートに入ったら戦う相手として扱ってますし、コート上ではそれを抜きにして戦っています。表裏一体コインのような表では違う面もありますけど、逆を見れば戦うことということで彼らと接しています」とし、試合自体を楽しみつつも勝負に強くこだわる変わらぬスタイルを貫いた。

「もっともっと成長のスピードを速く」

 千葉JやSR渋谷から白星を挙げ、すでにB1の中でも強豪チーム相手にしっかりと実力を示せている長崎ヴェルカ。SR渋谷のパヴィチェヴィッチHCも対戦後には「長崎はB2からB1に昇格したばかりのチームだが、伊藤GM、前田HCがしっかりと素晴らしいチームを作っているという印象。選手層が厚く、ビッグマンも多彩なチーム」と称賛のコメントを残している。それでも、指揮官が満足することはない。以下は第2節の富山戦後、前田HCが語った言葉だ。

 「チームとしてはまだまだ。これからしっかり強くなっていかなければいけない中で、まだまだヴェルカのスタイルというのを表現出来ない時間帯が長くあるなと思っています。練習にどれだけフォーカスできるか。試合まで待っていると成長のスピードというのは遅いので。もっともっと成長のスピードを速くして、1日1日強くして、よりいい選手、コーチ、スタッフ、チームになっていきたい」

 強豪ひしめく西地区で現在5勝1敗で3位につけるなど、好スタートを切った長崎。次戦は25日に島根スサノオマジックとの対戦が控えるなど、まだまだ厳しいスケジュールが続く。史上最速でB1昇格を果たした勢いのまま、リーグを席捲できるか。長崎のスピードから目が離せない。

©Basketball News 2for1

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