【会見全容】信州ブレイブウォリアーズ、26年新B1参入へ「背水の陣」 初回二次審査で基準クリア目指す
信州ブレイブウォリアーズ記者会見に臨む(左から)柳澤安慶氏、荻原健司長野市長、木戸庸行社長©Basketball News 2for1
バスケットボールニュース2for1代表。スポーツニッポン新聞社の編集者・記者を経て、2020年に現メディアを立ち上げる。日本代表やBリーグからNBA、WNBAまで国内外さまざまなバスケイベントを取材。スポーツライターとしても活動している。

 Bリーグ1部(B1)の信州ブレイブウォリアーズは5日、長野市内で記者会見を実施。チームの運営会社である株式会社NAGANO SPIRITの株59.2%を所有するオーナーで取締役の柳澤安慶氏、運営会社の新社長に就任した木戸庸行氏、長野市長の荻原健司氏が登場した。会見では、2026-27シーズンから新たに開幕する新リーグ(通称・新B1)への参入について、2024年10月に実施される初回審査での基準クリアを目指すことが改めて発表され、そのための運営体制の強化や長野市との連携についても言及された。

取締役・柳澤安慶氏のコメント概要

初回審査での新B1参入を目指す理由

 新B1の審査基準は、「売上12億円・ホーム平均入場者数4000人・ホームアリーナのリーグ指定の基準をクリアすること」の3点が条件です。次のシーズン(2023-24シーズン)にこの基準をクリアするというのが、初回審査の条件です。この初回審査は一次審査、二次審査3次審査と基準が徐々に緩和される形となっており、最大18チームまで新B1に入れることができる。当社はその二次審査を目指したいというふうに考えています。

 初回の審査を仮に逃してしまうと、翌シーズン(2024-25)とその次のシーズン(2025-26)に基準達成しなければならないので、最低でも新しくできたB2に2シーズン以上は在籍しないと新B1には参入できなくなる。これは当社の置かれている状況やリーグ全体を見回しますと、新B2の方に2シーズン籍を置くということは、その後トップリーグ(新B1)にもう一度戻るということは非常に厳しい、非常に難しいのではないかというふうに考えております。

 こういう理由で当社は、是が非でも23-24シーズンにて初回審査の二次審査基準である売上12億円、平均入場者数4000人を実現し、アリーナの基準をクリアした上で新B1に参入できるようにしたいと考えております。

初回審査突破の見込み

 初回審査の2次審査を突破する蓋然性について、22-23シーズンの決算が確定してない予測の数字ではありますが、(売上)8.1億円程度を見込んでおります、21-22シーズンが6.2億円程度ですので、そこから売上は順調に伸びております。次のシーズンは大体9.5億円ぐらい(の売上の見込み)。この2次審査突破するという目的の上、ここにプラス2.4億円売上を上乗せしたい。そういうチャレンジをしたいと考えております。

 ホームの平均入場者数についても、終わったシーズンが平均入場者数2879名で前のシーズンと比較すると1133人増加している。次のシーズン、4000人に到達するためには1121人増加が必要になりますので、これは昨シーズンと同じことをもう1シーズンできれば、十分手の届く数字ではないかと考えております。

 それと、B1ライセンスを保持するためには3シーズン連続で赤字ができないという基準なんですけども、当社が終わったシーズン(2022-23シーズン)に1億3000万というちょっと大きな赤字を予想しておりまして、その前のシーズンが5400万の赤字ということですので、次のシーズンは新B1の参入審査基準を目指しながら、確実に黒字を目指していくということになります。

会見で話す柳澤氏©Basketball News 2for1

赤字が出ている理由

 大きな赤字が出ている理由ですが、当社のチーム編成費の変遷を見ていただければ一目瞭然なのですが、B1になってから1億6000万円、2億6000万円、終わったシーズンが3億7000万円ということで、急激にチーム編成費が上昇しています。これはB1の中で戦っていくチームを作るうえではある意味やむを得ないんですけれども、リーグ全体で選手年俸の高騰というのが起きておりまして、結果赤字ということになっている。この状況をどうすればクリアできるかというと、スポンサーの売上高を上げていくしかないというような状況。黒字を目指す=スポンサーの支援をお願いするということをもう一段と強化していかなければいけないと考えております。

長野市との関係強化

 ホームタウン長野市との関係の強化で、今回2000万円をご出資いただきまして、(株式会社NAGANO SPIRITの株を)約8%を保有する大株主になっていただきました。株主上位10位までの中で、(柳澤氏に次いで)長野市が第2の大株主という状況です。長野市副市長の松山(大貴)氏にも外取締役会へボードメンバーにいただきました。これによりまして、人の連携をさらに強化していきたいと思います。新B1を目指すにあたって、ホームアリーナの基準をクリアするということは非常に大きな課題となっているわけですが、ホームアリーナであるホワイトリングは長野市さんの持ち物です。市民の活用を大前提に、どのような形で(新B1の)基準を満たす改修を行っていくかということについて、さらに親密な情報交換をしながら進めていきたいなと思っております。

運営体制の変更

 今回、経営体制を刷新させていただきました。株式会社信州スポーツスピリットという名前で、過去、運営させていただきましたが、今回、株式会社NAGANO SPIRITという社名に変更させていただいております。これは今までの過去にとらわれない新しいスタートを、新B1の経営基準に準拠した体制に移行するという決意として社名変更をさせていただいております。取締役会も大きく刷新いたしまして、旧取締役会取締役8名のうち5名に辞任いただき、新しい取締役として新任2名を選任して、5名で組織いたしました。代表取締役も交代いたしましたが、この大きな目的は、新B1参入へ求められている経営の基準に準拠していくためのガバナンスということです。

 それと、営業・マーケティング組織の内部化を今年の頭から進めています。過去、当社は少人数で運営していたのですが、営業・マーケティングを外部委託していたため、どうしてもお客様の情報や、営業展開していくと、数字が積み上がっていくのかという部分が非常に弱かった。これを一旦内部に全て取り込んで、我々自身が考えて、我々自身が直接お客様の方に提案していくという体制に切り替えました。この体制をもちまして、次のシーズン、10月からスタートになるわけですけれども、何とか9月までに新B1へのめどをつけたいと思います。

運営会社の社名変更に込めた思い

 「NAGANO」という名前にした理由は、長野県・長野市の皆様と、もう少し密着できるような会社になりたいということ。従前、「信州スポーツスピリット」という社名で、「スピリット」という言葉を使っておりましたが、この言葉はチームを0から作り上げた皆さんのご苦労があって今があるということ。その情熱を社名の方に込めさせていただいて、「NAGANO SPIRIT」ということです。

社長交代の経緯とタイミング

 なぜこのタイミングで社長交代、経営体制変更をしたかということですが、一言で申し上げますと「ガバナンスの強化」ということ。2期連続の赤字、大きな赤字を出しております。いま求められているバスケ運営チームの経営としましては、もっと早い段階でしっかり経営サイドで決断し、現場が動き、それを実現していくという体制をとっていくこと。それができないとこのあとトップリーグ、あるいはBリーグの中で経営を続けていくのは、難しいのかなと。

 新B1は、次のシーズンの結果をもって新B1にいけるかいけないか。私どもとしては、今の状況はまさに背水の陣というような状況で、これを乗り越えられないとチームは新B2の方に在籍しなければならない。

 今シーズン、B1の方は数字がコロナ前に回復していますが、B2の方は残念ながらコロナ前の状況に戻っていない。今後のことを考えると、B1とB2の差はますます広がっていくんだと認識しております。そうすると、選手のモチベーション、ブースターの皆さんのモチベーションもそうですし、我々会社スタッフのモチベーションも含めて、B2で戦うことになった場合は、非常に厳しい状況に追い込まれるという予測。そういうことを踏まえますと、先ほど申し上げた「背水の陣」というのは、初回審査で新B1参入を果たさなければ、我々の存在自体が厳しい状況になるということ。そういうことで時間のない中で、通常なら株主総会が6月の決算ですから、9月に新体制への移行という流れになるんですけれども、ここを1日でも時間が欲しいということで、できるだけ前倒しして準備した結果、先日、体制変更がようやくできた、という背景です。

 (木戸氏の社長就任の経緯)この新体制への移行ということを私の方で取締役会と取締役会の方に諮りまして、他の取締役の同意をいただいたのが昨年の11月でした。もう少しさかのぼりますと、昨年の6月に私が第三者割当増資を引き受けて、持ち株の比率が過半数を超えました。このタイミングで、私の方はそれ以前とは違う形で経営の中身をもう少し深く入り込んで見させていただいたところ、非常に状況としては厳しいものがあった。

 そこからどういうふうに状況改善、新B1への道筋を作ろうかという中で、昨年9月に取締役に就任いたしまして、取締役会に参加する中で、新しい執行体制への移行を取締役会に諮って、了承を得た上で、昨年の冬の入口ぐらいからさまざまな方にお会いして、経営体制をどうあるべきか、みたいなことをアドバイスをいただきながら進めてきました。その中で木戸社長の方に私の方から「こういう状況なんだ」と(伝えた)。

 そういう状況の中でもですね、できれば長野県の方、長野市お住まいの方に社長をお願いできる方、経営に加わっていただけるような方はいらっしゃらないかなと思いまして、私のほうで3月ぐらいまでいろんな方にお会いしてお願いしたり、話をさせていただいた。3月ぐらいに木戸さんに正式にお願いをして、そこから(会社の)中の状況や現場を見ていただいて、進めていました。

 5月の末にようやく社長就任となり、あと体制の変更や松山副市長に参画いただくとか、長野市からご出資いただくとか、そういうことも全部含めて進めてまいりましたので、ようやく新しい体制といえるような状況にいま至ってるということです。

©Basketball News 2for1

スポンサー収入の重要性について

 今シーズン(2022-23シーズン)のスポンサー収入が3.4億円ぐらい(の見込み)です。次のシーズンに目標としている数値としては約5億円。まずは5億円を達成したいと思っております。その上で、この5億円の達成というのが、今の当社の事業の推移として売上高9.6億円ぐらい(の見込み)です。この9.6億円で、まずは黒字化を達成したい。その上で、(12億円達成には)さらに2.4億円足りないわけですけれども、この2.4億円を売上として、ぜひ長野市、長野県の経済界の皆さんといろんな形で協調させていただいて、数字を作っていきたいと考えております。

2023-24シーズンのチーム編成費について

 チーム編成費は、今シーズンよりも次のシーズンの予算は編成費を上げております。わずかながらといった方がいいかもしれません。チーム編成費は増えているんですけれども、リーグ全体で選手年俸が高騰しているので、他チームとの相対比較だと、なかなか大変な中で勝久GM兼HCがチーム作りをしていくということになるかと思います。

 チーム編成費につきましては、大体売上高の45%前後(を想定している)。経済を回していくためには、そのぐらいが限度ではないかと考えているので、その辺りが一つの目安かなと思っております。Bリーグ今のライセンス維持基準ですと、3シーズンの赤字はNGなんですけれども、2シーズンまではOKということですので、3シーズンをうまく活用した形でどこかでアクセルを踏んでチーム編成をしたい。会社から考えるとチーム編成費=投資ということになりますが、投資を行えるような経営に持っていければいいなと考えております。

2023-24シーズンのホームゲーム開催地について

 ホワイトリングの方で28試合、あと松本の体育館で2試合予定を組ませていただいております。千曲市はチーム誕生の地でもあるし、試合を実施したいという思いはあるが、残念ながら先ほど申し上げた、新B1参入への初回審査の2次基準「平均入場者数4000名」を確保しなければいけないという状況を考えると、ことぶきアリーナの方は3000名収容が限界ですので、そこはなかなか難しい。今回は4000名以上を確保できるアリーナでの試合を設定させていただいているという背景です。

今後の千曲市の位置づけについて

 「ホームタウン」という言い方はホームアリーナがある場所という認識。長野市の皆さんと、千曲市の皆さんは特に特別だと考えております。私どものこの呼称で「マザータウン」というふうに呼ばせていただいておりますが、様々なイベントとか、千曲市および千曲市の皆さんの活動にチームとしても参加していくような形で、いろんな形で貢献させていただきたいと考えております。

 今まではことぶきアリーナもホームアリーナの一つというふうに捉えておりましたが、今後は新B1に移行するにあたり、ホームアリーナをホワイトリングということにさせていただきたいと思っております。

ホワイトリングの改修スケジュール

 ホワイトリングの改修ですが、今現在、調査設計等を進めておりまして、令和6年度には着手したいと考えております。リーグの基準でトイレの増設、スイートラウンジの設置などが求められており、あとはWi-Fiなどの通信環境の整備なども行っていければと考えております。

(長野市文化スポーツ振興部・鈴木氏が回答)

運営体制変更によるチーム編成への影響について

 (チーム編成への影響は)特にないです。基本的にチーム編成に関しては勝久さんに100%(任せる)という感じです。権限はお渡しして編成をいただいていて、勝久さんの方で相談が必要なことや悩まれるようなことがあったときに相談をしていただくというような体制でしたから、それは引き続きそういう体制を次のシーズンも取ります。

勝久マイケルHCとの話し合いについて

 体制変更のお話などもヘッドコーチとさせていただきましたし、運営会社としては初回審査で、何とか新B1のライセンスを取得したいというお話をさせていただきました。勝久さんは、今シーズンけが人がすごく多かったりだとか、チャンピオンシップに行けそうで行けなかったということがすごく悔しかったと思うので、次のシーズンをどうするのかということで、頭がいっぱいと感じだった。「我々は今まで以上に勝久さんがいろいろ物事を決めるプロセスが決めやすくなるようにしたいと思っているので、安心してください」と伝えました。

木戸庸行社長のコメント概要

目標達成への具体的な施策

 社長就任の前から現場に入りながら、まず現状把握をしてきました。それからBリーグ全体の状況も把握しながら、(今後の)ビジョンとしては、やはり単に売上を上げるということじゃなくて、いかにこの信州ブレイブウォリアーズの価値をどう高めていくのかというところをまず主眼に置きながら、その上で皆様にご活用いただけるような、単なる広告を売るということではなくて、きちんと我々を通じた中でどういうようなメリット、それから共感を得ていただけるような、そういう内容の解決型ソリューション提案をしていく。「ガラリとアプローチの仕方を変えよう」とスタッフ一同には申し上げております。

 そこを通じたいろいろな策というのが今までと違ったメニュー、チケットも含めて出てくると思います。これからについては、いろいろな施策を発表してまいりますので、そこをご覧いただきながら、今まで以上に価値をどういうふうに高めていきながら、長野市中心に、それから長野県全体に愛されるようなチームを動員していくのかということを考えていきたいと思っております。

会見で話す木戸社長 ©Basketball News 2for1

自身のバスケットボールとの関りについて

 バスケットについては、実は中学校3年間バスケットボール部でした。あと息子も2人おりまして2番目の息子はやっているのは野球なんですけど、NBAは昔から大好きで、横でずっと聞いております。今年もアメリカに行って一緒にNBAを見に行きました。そういった意味でバスケットボールにゆかりがあり、今回のお話を受けるときにも、よく信州ブレイブウォリアーズの試合を何度も見て、決断に至ったということが経緯としてあります。

荻原健司長野市長のコメント概要

信州ブレイブウォリアーズとの関係強化について

 ブレイブウォリアーズの試合もいつも楽しみにしていますし、チャンスがあれば、試合をいちファンとして楽しませていただいています。そういう中で、この長野市が四つのプロチームがあって、もちろん勝つことの方がよっぽどいいとは思いますけども、やはりこのチームの皆さんが、やはり真剣に評議に向き合い、一つ一つの試合に真剣に臨まれるそういう姿っていうものがどれだけこの市民の皆さんを励まし、勇気づけ、あるいは喜ばせているか。これはなかなかあの測定できるものではないかもしれませんけども、私としてはこの四つのプロチームの皆さんの活躍というものが長野市のですね、元気良さを支えていただいてるというふうに思っておりますし、特にプロチームの皆様が競技だけでなく、市の様々な課題地域課題・社会課題に向き合っていただいて、例えば子供たちへのスポーツ指導であったり、あるいは市民の皆様との交流を持っていただいているというのは、本当に単にスポーツを超えてですね、この四つのプロチームは本当に長野市になくてはならないものです。

会見で話す荻原健司長野市長 ©Basketball News 2for1

 その上で長野市としては、2000万円を用意させていただき、増資をすることによって市との関係性をより深めていきます。市の様々な政策とブレイブウォリアーズが持っている資源・資産を使わせていただきながら、この長野市を元気にしていきたいと思っています。

 その上で松山大貴副市長が取り締まり法にも参画をさせていただくことになりました。松山副市長は経済産業省キャリアでうちに来ていただいているんですけど、ご自身の経験の中ではスポーツ庁にも在籍されていまして、ます日本国内外さまざまなプロスポーツのにも非常に造詣が深いです。彼が(信州の)経営の方にも参画をするということで我々としてもチームの皆さんにお世話になりますけども、一体となって活躍を支えていきたいというふうに思っています。

 長野市としては、特にホワイトリングの高機能化進めていきますし、今のところホワイトリングは「体育館」という感じですけど、これをより一層「アリーナ仕様」にしていきます。よりエンターテイメント性が高まるような、あるいは選手の皆さんがプレーしやすい、あるいは観客の皆様が見て楽しんでいただけるような施設に変えていきます。

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