西地区4位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズが正念場を迎えている。主力にけがが相次ぐ中、15日に沖縄アリーナであった西地区2位の琉球ゴールデンキングス戦にわずか8人で挑み、74ー79で敗れて4連敗となった。通算成績は27勝13敗で、2位以上がチャンピオンシップ(CS)に進出できるワイルドカードの順位は2位。レギュラーシーズンが終盤戦に突入していく中、3位の群馬クレインサンダーズが4ゲーム差に迫ってきており、予断を許さない状況が続く。
前線からプレッシャーかけ10スティール
ただ、チームは下を向いていない。インジュアリーリストに入ったモリス・ンドゥールのほか、リーグを代表するガードコンビの齋藤拓実と伊藤達哉、日本代表の張本天傑、得点力の高いレイ・パースクジュニアもけがやコンディション不良で欠場した琉球戦で、それを体現した。
少ない人数にも関わらず、須田侑太郎や中東泰斗らを中心に前から激しいディフェンスを仕掛け、チーム全体で10のスティールを記録。203cm、120kgの体格を誇る新加入センターのアラン・ウィリアムズはインサイドで体を張った。得点力で圧倒的に劣る中、第3Qには最大で20点以上の差を付けられたが、第4Qには全員でオフェンスリバウンドに飛び込む積極性を見せ、コティ・クラークやスコット・エサトンが得点を重ねて猛追した。
ショーン・デニスHCは「キーとなる選手がいない中で、琉球という素晴らしいディフェンスのチームに対してアドバンテージをクリエイトできず、難しい状況でした」と振り返る一方で、
「チームを誇り高く思っています。オフェンスがちゃんと繋がって最後まで戦えたことや、オフェンスリバウンドに飛び込めた事はとても良かったと思います」と語り、エナジーを持って戦い続けた選手たちを讃えた。
チームに合流後、初出場にも関わらず、18分44秒の出場で10得点、6リバウンド、2スティール、1ブロックを記録したウィリアムズについても「試合前に練習は3回しかしてなかったのですが、彼のフィジカルの強さはインサイドで早速生きていました。今後もっとチーム内で機能していけば、大きな助けになると思います」と高く評価した。
須田「CS出場が危うくなる危機感はある」
中でも存在感が際立っていたのは、数少ない出場可能な主力選手である須田だ。持ち味である激しいディフェンスはもちろんのこと、手を叩いたり、積極的に声を掛けたりしてチームメートを鼓舞していた。
指揮官と同じく、須田も「結果は負けてしまいましたが、40分を通してファイトし続けたということはすごく価値があることだと思います。最近はずっと誰かしら選手がいないという試合が多いのですが、誰一人言い訳することなく、今日は全員でしっかり戦うことができました」と話し、試合内容に一定の満足感を得ていた。
激しいCS進出争いに身を投じる中で、1週間前にあったホームでの西地区7位・京都ハンナリーズ戦を3点差で落としてしまったことが一つの転機になったという。須田が続ける。
「京都戦で負けてしまい、もう一度個人としても、チームとしても自分たちを見つめ直すことができました。その次のゲームだったので、琉球戦はとても大切な試合でした。その中で、自分が先頭を切ってプレーや声でチームを鼓舞するということは特に意識して入りました。試合によってチームに波があるので、残りのシーズン、この強度をスタンダードにしないとCS出場も危うくなるという危機感はあるので、試合を通して成長していきたいです」
脇役もステップアップを 逆境を力に
シーズンは残り20試合。名古屋Dは2ゲーム差で追い掛ける西地区3位の広島ドラゴンフライズと3試合、西地区1位の島根スサノオマジックと1試合、東地区2位のアルバルク東京と2試合があるほか、各地区中位以上のチームとの対戦を多く残している。CSに進出するために鍵になることを問われたデニスHCは、笑いながら「まず健康になることです」とポツリと言った後、こう言い切った。
「小さい部分で修正していかないといけないところはありますが、今日の第4Qで証明したように選手たちが一丸となり、インテンシティを高くプレーできれば問題ないと思います。けが人が多い中、強い琉球相手にここまで戦えたことは素晴らしいです。(CSに進出する)自信はあります」
琉球戦では、平均出場時間が10分に満たない菊池真人や坂本聖芽もそれぞれ28分54秒、18分30秒のプレータイムを得た。もともと須田や中東などサイズや機動力のあるペリメーター陣が強みのチームにあって、主力不在のこのタイミングで脇役がステップアップする可能性もある。須田も「今日はシーズン中にあまりないラインナップでスタートしましたが、全然良かったと思います。新しい可能性を感じています」と話し、厳しい現状の中でプラスの要素を見出していた。
今シーズンは現在リーグ2位の平均得点(86.1点)を記録する圧倒的な攻撃力を武器に、大混戦の西地区で上位争いを続ける名古屋D。レギュラーシーズン終盤での逆境を力に変え、さらにチーム力を底上げしてCS進出争いを勝ち抜きたい。
(長嶺 真輝)