
東アジアスーパーリーグ(EASL)のプレーオフ「ファイナル4」は7日、マカオのスタジオシティ・イベントセンターで準決勝2試合を行い、予選グループB1位の琉球ゴールデンキングスはグループA2位の桃園パウイアンパイロッツ(チャイニーズタイペイ)に64ー71で敗れた。
琉球は3位決定戦に回り、9日にジェレミー・リン率いるニュータイペイキングス(チャイニーズタイペイ)と対戦する。
直近の過去2年間もEASLに出場し、いずれも予選のグループリーグで敗退していた琉球。さらに今月15日には天皇杯決勝を控え、2冠奪取という高い目標を掲げていただけに悔しい敗戦となった。
3P成功率が15.9%…オフェンスでリズム乗れず
試合は序盤から桃園ペース。岸本隆一を徹底的にマークされ、琉球の強みであるインサイドを固められた。その他の選手はオープンな形でシュートをしていたが、ことごとくリングに弾かれ、前半で放った22本の3Pシュートのうち成功はわずか2本にとどまった。
28ー37で迎えた後半も流れは変わらない。第3クォーター(Q)の出だしからほぼ外角シュート一辺倒となる中、岸本、松脇圭志、脇真大らの3Pシュートがリングを捉え切れず、このクォーター中盤に最大16点差までリードを広げられた。
その後はジャック・クーリー、ケヴェ・アルマ、アレックス・カークの3BIGラインナップでリバウンドを制し、さらにBリーグでは出場機会の少ない植松義也がコーナー3Pシュートやブロックなど躍動してじわじわと追い上げていった。第4Q序盤には一時逆転に成功。その勢いのまま先行していくかに思われた。
しかし、勝負所でまたも3Pシュートの試投数が増え、成功率が上がらない。ハンドリングミスなど簡単なターンオーバーも散発し、再び突き放されて敗れた。
試合後、桶谷大HCは「前半と3Qの入りでゲームに入れない選手がいて、経験不足が露呈しました。パスが回らなくなって全然シュートも打たない。本当に良くないオフェンスになっていたと思います」と敗因に触れた。
桃園は岸本以外の選手に対し、スクリーナーを交わす際にアンダーを通る場面が多く見られた。指揮官は、そのディフェンスを攻略し切れなかったことについても課題感を口にした。
「例えば脇のところは完全にアンダーを通られて、ヘルプに寄られてという守りでした。その中で、前半に隆一のアタックに対して脇がカットし、普段なら簡単にレイアップを決めるところを落として本人はリズムを崩したし、チームとしてもリズムが崩れていった。アンダーを通られるディフェンスに対し、自分たちはまだまだ強さがないなと感じます。こういう舞台でメンタルの話をしたら良くないと思いますが、やっぱり『決めて来い』という話です」

「コンセプトを理解し、シンプルにやる」
琉球の最終的な3Pシュート成功率はわずか15.9%(44本中7本成功)。リバウンドこそ50本対33本と圧倒したが、なかなかオフェンスで波に乗れず、得点が伸びなかった。中でも、先発としてコートに立った主力の松脇と脇は、普段の試合のような存在感が影を潜めた。
シューターの松脇は3Pシュートが5分のゼロ。第1Qでファウル2つをしたこともあり、15分50秒とプレータイムは伸びなかった。脇もわずか12分20秒の出場にとどまり、その選手が出場している時間帯の得失点差を示す「+/−」(プラスマイナス)はチームで最も低い「−15」だった。相手ディフェンスに距離を空けられ、打たされたような3Pシュートを外す場面もあり、なかなかリズムに乗れなかった。
悔しい敗戦から一夜明け、8日午後に試合会場で行われた公開練習。メディアに開放された最後の時間帯、コート中央付近で松脇と立ち話している桶谷HCの姿があった。どんな会話をしたのかを問うと、多弁に答えてくれた。
「昨日の試合では『マツ(松脇)をコートにいさせたい』という守り方をしました。コンセプトは『あなたにファウルをさせたくない』ということです。でも、簡単に二つ目のファウルをやってしまい、コートからいなくなる。シュートが入らない、だから自分はいなくていいよ、は違います」
その上で、選手として求める在り方に言及した。
「やっぱり役割があるから出てほしいし、そこをちゃんとくみ取ってほしい。それは、みんなそうです。コンセプトが何かを理解し、シンプルにやる。シュート入る、入らないは誰もコントロールできない。シューターとしてもちろんシュートは決めてほしいけど、コントロールできることをコントロールしましょうという話です」

「WINNERになろうぜ」に込める意味
脇については「日本代表に呼ばれたりはしていますが、まだ本当に勝たないといけない試合で力を出し切れていません」と見る。貴重な国際大会の場で、さらに殻を破ってほしいという思いがある。
「脇は(高い位置に手を置いて)ここまでは来ていますが、それを超える、突き抜けるという所まで行けていない。まだマインドセットのスキルが足りないと感じます。メディアなどで『シュートが入ったらいい選手になります』と言われたりして、もちろん入ることはいいことだけど、シューターのマインドになってどうするんですか、という話です。もともとやってきたこと、それ以外の強みがあるから『脇でしょ』と。そこを忘れたらいけない。『お前のやるべきことを忘れるなよ』という話をしました」
2人について言及した後、桶谷HCは「みんなWINNERになろうぜ」という言葉でそれらの内容を総括した。その真意について、ビッグマン二人が退場しながらも準決勝を勝ち切った広島ドラゴンフライズで、最後まで安定した活躍を見せたドウェイン・エバンスに触れながら、こう説明した。
「WINNERって何かと言ったら、自分の役割を理解して、やり続けることだと思います。違うことをやったり、違うマインドになる人はWINNERにはなれない。昨日のドウェイン・エバンスを見てください。ずっと変わらない。あんなにタフな状況でも(自分の役割を)やり続けた。ああいう選手が勝つ。キングスの若い、経験の浅い選手がやらないといけないことです。今回はそれが浮き彫りになった。松脇と脇には、そういう話をしました」
同じく公開練習でメディアの取材を受けた脇も、9日の3位決定戦が自身にとって大きな意味を持つ試合だということを自覚している。
「僕はこれまで国際大会でいい成績を残せていません。(3位決定戦で)勝てれば、今後のEASLや日本代表の試合に向けても自信になると思います。僕の今後のキャリアの中でも大事な一戦になると思っているので、しっかりやっていきたいです」
EASLのタイトル奪取という目標は叶わなかったが、天皇杯決勝という次のタイトル戦を直後に控えるチームとしても、そして選手それぞれが次のステップに進んでいくためにも、3位決定戦は負けられない一戦となる。

(長嶺真輝)