悔しさバネに“居残り練習”で躍動 信州ブレイブウォリアーズ狩野富成「負けるのは嫌だし悔しい」 福岡戦勝利に貢献
ダンクを決める信州ブレイブウォリアーズの狩野富成©Basketball News 2for1
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 Bリーグ2部(B2)は1日と2日の両日、各地でレギュラーシーズン(RS)の第20節が行われ、東地区・信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリングで西地区首位のライジングゼファー福岡と対戦。第1戦を82-94で落とすも、第2戦を86-81で勝利し、今季のRSでの福岡との対戦を2勝2敗の引き分けで終えた。信州は第20節を終えて25勝12敗としており、東地区2位をキープしている。

 ジョシュア・スミスジャスティン・バーレルら強力なインサイド陣を擁する福岡を相手に、信州は日本人ビッグマンの渡邉飛勇が欠場。そんな中、活躍を見せたのはもう一人の日本人ビッグマン、狩野富成だった。

「日本一のインサイド陣」に歯が立たず 第1戦は82-94で敗戦

 第1戦後の記者会見、そこには悔しさを滲ませた狩野の姿があった。10分18秒の出場で6得点1リバウンド、4ファウル。138㎏の巨体を誇るスミスを中心とした福岡のビッグマン勢に対抗できず、ペイント内の得点では信州の34得点に対し、福岡には54得点を献上。リバウンドやディフェンスでも力負けするシーンが目立った。

 第1戦、第1クォーター(Q)5分27秒で出場すると、いきなりバーレルにフィジカルの差を見せつけられる。しっかりとコースに入って守ってはいたものの、圧倒的なパワーで吹き飛ばされる。次のポゼッションではバーレルとのポジション争いでファールを吹かれると、残り2分46秒の場面ではスミスとのポジション争いで2つめのファールを吹かれ、ベンチへと退いた。

 次にコートに入ったのは第2Q残り4分57秒の場面だったが、わずか1分も経たない内に、スミスとの攻防で3つ目のファールを犯して交代。しかし、決して悪い部分だけだったわけではなく、収穫もあった。後半は相手のフィジカルにも徐々にアジャストし、オフェンスではレイアップシュートやダンクを決めたり、ディフェンスでも相手のビッグマンを守り切ったりするシーンも見られたが、結果的には点差を離され悔しい敗戦となった。

 狩野は自身のプレーを振り返って「特に修正しないといけないのはインサイドの点数。明日(第2戦)は今日(第1戦)とはまったく違うエナジーを最初から持っていかなきゃいけない試合」と反省の弁を述べた。

 試合中、勝久マイケルヘッドコーチ(HC)は熱い姿勢で狩野に言葉をかけていた。どんな言葉をかけていたかの問いに対する答えは以下である。

 「ディフェンスのインテンシティもそうですが、やっぱり走らないといけない。ペースを持ってプレーしないといけない。相手には日本一インサイドが強いスミスがいて、ディフェンスでポゼッションを取れば、とにかく走らないといけない。そんな中で出だしからジョグ(軽い走り)をしていたので、そういうところは強めに伝えました。

 彼はやっぱりほぼルーキーで、誰でもそうですが、頭がいっぱいになると動きが遅くなることはあるので、そのバランスを見極めないといけないんですけど、単純にハードに走るとか、あるいは毎日伝えているようなことを情熱を持って強く伝えました」

第1戦では福岡のビッグマンの対応に苦しんだ狩野©Basketball News 2for1

「リバウンドの特訓」成果 第2戦は10得点4OR

 悔しい敗戦から一夜明けた第2戦。信州はペリン・ビュフォード、福岡はバーレルが欠場するなど、ともに主力選手を欠いての戦いとなった。互いに第1戦とは異なるチーム状況ではあったものの、この日に躍動したのが狩野だった。

 第1Q残り4分57秒で出場すると、石川海斗との合わせで連続得点。第1Q残り44秒では、味方の外れたフリースローに飛びつき、加点。さらに第2Q残り7分42秒では、スミスにトリプルチームを仕掛けてボールを奪うと、ゴール下へとダッシュしてダンク。同じく第2Q残り5分21秒の場面では、日本人選手とのマッチアップで高さのミスマッチをついて深い位置でボールをもらうと、2本目のダンクを叩き込んだ。

 第2戦は18分22秒の出場で10得点、オフェンスリバウンド4本を記録し、勝利の立役者となった。第1戦で課題となっていたファウル数に関しても0に抑えるなど、攻守両面で存在感を見せつけた。

 2日連続で会見場にやってきた狩野は開口一番「とりあえず勝ててよかったですね本当に大事な、毎試合大事なんですけど、今日は勝ててよかったです」と安堵の表情を浮かべた。

会見で笑顔を浮かべる狩野©Basketball News 2for1

 自身の活躍については「負けるのは嫌ですし、悔しいんですけど、やっぱり落ち込んではいられないので、家に帰って反省点や修正点など試合を見ながら考えて 、なるべく早く切り返すようにしました」と振り返る。

 会見の途中、なにやら狩野が会見場の後ろを気にしていたので確認をすると、そこには小玉大智山崎玲緒の姿があった。試合中でも、狩野のプレーに喜びを爆発させていた2人だ。実はこの2人、第1戦終了後に狩野のリバウンド練習に付き合っていたという。

 「リバウンドは常に意識はしています。 でも昨日はオフェンスリバウンドを2個ぐらい取り切れなかったところがあって、そこが悔しくて試合後にリバウンドの特訓をやりました」

 後方にいる2人に向けて胸を叩くジャスチャーをしながら答えると、それを聞いた2人も胸を叩いて、活躍を労った。

会見場で狩野を見守る小玉大智(左)と山崎玲緒©Basketball News 2for1

日本を背負うビッグマンへ 「課題は遂行力とエナジー

 2日間にわたるインサイドでの過酷な試練を終えて、成長を見せた狩野。学ぶことが多かった2試合だったと話す。

 「(相手のインサイド陣に)身体の部分では100%勝てないので、そこはスピードを使ったり、ディフェンスも足を使ったディフェンスをしました。あとは、なるべく前に入って、パスを入れにくくさせることとか、そういうところは学びましたね」

 指揮官も「表情、ボディーランゲージからでも、クリアマインドでがむしゃらにプレーしているのが見えました。やるべきことはもう分かっていて、あとはもう激しくプレーするだけだっていうことが感じられるような。 そこは非常に良かったです 」と成長を見せたルーキーに賛辞を送る。

 一方で、課題も見つかった。後半は相手もアジャストしてきたことで、力を発揮できない場面があったという。そのことを念頭に、狩野はさらなる成長を誓う。

 「今後の課題は遂行力とエナジーです。コーチも言っていたんですけど、どんな戦術を練っても、結局は遂行するエナジーとタフネスがないといけない。あとは後半でアジャストされたときにどうやってそれに対応するか。その遂行力も必要です」

 仲間にも支えられながら日々成長を続ける狩野富成。信州には指揮官のバスケを熟知するウェイン・マーシャルや日本代表で活躍する渡邉ら、お手本となるビッグマンが多く存在する。チームメイトにもブースターにも愛される、23歳の期待のルーキー。信州の主力となることはもちろん、さらなる成長を積み重ねれば、渡邉とともに日の丸を背負う日もそう遠くはないのかもしれない。

試合後、ハイタッチをする狩野(左)©Basketball News 2for1

(芋川史貴)

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