Bリーグ2部(B2)は、18日から20日にかけて、各地でレギュラーシーズンの第3節が行われ、東地区・信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリングで同地区の青森ワッツと対戦。第1戦は74-66、第2戦は89-73と勝利し、ホーム開幕戦を白星で飾った。
第1戦、第2戦ともに第3クォーター(Q)終了時には20点差をつける展開となるなど、ディフェンスを含めてチームケミストリーが構築されつつある信州。4連勝と勢づいてきた要因としては、先発ビッグマン渡邉飛勇の成長と、チームにアジャストしてきたペリン・ビュフォードの“ホットライン”の活躍が挙げられる。
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飛躍の渡邉飛勇「ケミストリーは少しずつ良くなっている」
インサイド要であるウェイン・マーシャルが開幕直前の調整試合で足を怪我したことで、開幕節から先発として出場している渡邉。昨季まで所属していたB1の琉球ゴールデンキングスでは、ジャック・クーリーやアレックス・カーク、アレン・ダーラムなど、ビッグマンの層が厚く出場機会に恵まれなかった。
だが、信州に移籍した今季は、6試合を終えた段階での平均出場時間は昨季の4分49秒から23分44秒まで増加し、得点(1.2から10.8)、リバウンド(1.1から6.5)、ブロックショット(0.1から1.3)、フィールドゴール成功率(47.4%から71.1%)など主要スタッツも大きく飛躍。青森との第1戦では21分19秒の出場で、フィールドゴールが6/6で100%、3本のオフェンスリバウンド、2ブロックを記録するなど、マーシャルに次ぐビッグマンとして成長を続けている。
一方で、プレータイムが伸びたことで課題も多く見つかった。ディフェンス面での細かいチームルールを徹底することや、ピックアンドロールでのハンドラーとの連係など、まだまだ伸びしろは大きい。これらは決してネガティブな問題ではなく、この1つ1つが渡邉を成長させる道筋となっている。渡邉は語る。
「ウェインの部分を僕がカバーしないといけない状態。今日(第1戦)はペリンのパスをちゃんとキャッチして、フィニッシュすることができたので良かったですが、まだまだ。でも、ケミストリーは本当に少しずつだが良くなっている。ディフェンスは最初の3Qまで良かったが、最後は僕がオフェンスリバウンドに行きすぎて、マックス(ヒサタケ)にやられてしまった。全部のトランジションディフェンスを集中したい」
勝久マイケルヘッドコーチ(HC)は渡邉について「今日の試合内容の中でも、もっともっと成長してほしい部分ばかりを考えてしまうんですけど」と前置きをしつつ、「でも、本当に安定してコートに立てる良いプレーを続けています」と称賛。「プランの段階からそうでしたし、今も実際チームの主力メンバーとして責任を持って、コートに立って素晴らしいと思います。彼がいることにも毎日ありがたく思い、本当に良かったなと思い続けています」と目を細めた。
ビュフォードも手ごたえ チームに喝も「最終的な目標はゲームに勝つこと」
ビュフォードも徐々にチームにフィットしてきた。第1戦は29分47秒の出場で、18得点11リバウンド5アシスト。第2戦は30分32秒の出場で、19得点10リバウンド11アシストと、今季2度目のトリプルダブルをマークした。
注目すべきは、プレーの質だ。プレシーズンや福井との開幕戦ではパスや自身で得点を狙うタイミングをうかがっているシーンが多かったり、判断ミスからターンオーバーを犯してしまう場面も見られた。しかし、青森戦では時には自身で得点を狙い、ディフェンスが寄ってくれば周りを生かすアシストを出すなど、オフェンス時の判断力が格段に上昇。狩野富成やテレンス・ウッドベリー、渡邉との合わせなども多く見られ、個での打開ではなく、チームとしてオフェンスが機能しているシーンが多く見られた。
このことに関してビュフォードは「自分のリズムを見つけるのはすごく難しく、チームメイトのことをもっと知る必要がある。どのタイミングで攻めて、どのタイミングでパスをするべきか。パスをしすぎてミスに繋がることもあるが、そこは長いシーズンの中で改善できると思っている」と話す。まだ完全にチームメイトのことを理解しきれているわけではないようだが、確実に手ごたえをつかんでいるようだ。
圧倒的な実力と闘争心を持ち、常に勝利を目指して全力でプレーするビュフォード。シーズン前の会見で勝久HCはそんなビュフォードの加入について「そういう(闘争心にあふれるような)リーダーシップスタイルは『吉と出るか凶と出るか』という部分はあると思うが、我々は去年、そういう部分に欠けていたというのが1つある。タイミングとしては、むしろ(ビュフォードのように)それぐらいコンペティティブ(競争心にあふれるような)な選手はめちゃくちゃウェルカムだった。そういう闘争心を望んでいた」と話していた。
実際、チームメイトに対しても妥協を許さず、喝を入れるシーンも見られる。渡邉や狩野といった若手選手に対しては特に熱い思いをぶつけている。福井との第1戦、合わせのプレーがうまくいかなかった後に狩野の胸ぐらを掴んでいたシーンは印象的だった。
はたから見ればチームメイトとの関係性が心配になるような出来事だが、すべてはチームがよりよくしていくために必要な行動だという。ビュフォードは語る。
「そういう全てのことは、自分たちの中でお互いの関係性を積み重ねて作っていくものだと思う。その中でトヨ(狩野)はルーキーだが、自分は彼への期待度は高い。そのため、もっとよくなるように彼にアドバイスをしている。ヒュー(渡邉)に関しては、ある程度経験があるので、自分がやろうとしていること、やってほしいことをお互いが共通認識を持てるようにしている。最終的な目標はチームとしてゲームに勝つことなので、関係性を良くして、同じ考えを持ってチームで勝つことを意識している」
ビュフォードとビッグマンの合わせはオフェンスの武器にもなっている。その中でより強力なタッグになるために、チームで勝つために若手だろうが高いレベルを要求するし、しっかりとコミュニケーションを取る。
このことに対しては渡邉も「ペリンが自分に何をしてほしいのかをちゃんと伝えてきてくれるので、ペリンにとってベストなビックマンになろうとしているところです」と理解を示しており、信州の新たなホットラインは脅威となっていくだろう。
勝久マイケルHC「プレミア参入は信州の未来にとって非常に大きなこと」
第1戦の2日前、17日には、2026-27シーズンから始まる新トップリーグ「Bプレミア」のライセンス交付クラブ発表会見が開かれ、Bプレミアへの参入チームが発表された。昨シーズンに基準をクリアした信州も無事に2026-27シーズンからBプレミアへの参入が決定した。
その発表を受けた後のホーム開幕戦ということもあり、ホームに集まったブースターは特別な思いを持って開幕を迎えたに違いない。指揮官も次のように語る。
「2026年にはBプレミアというものができると初めて知った後、常に(前社長の)片貝さんとミーティングを続けてきました。自分が信州に来た1年目と比べて、まだBリーグ全体の中では、売上だったり予算だったり、編成費だったり、周りと比べたら低い方だったかもしれないですけど、毎年どんどんどんどんクラブは成長していって。その努力に柳澤オーナーも木戸社長も新たなパワーをビジネス面で、加えてくださった。昔からのフロントのメンバー、新たなメンバーみんなが本当に素晴らしい努力をして、そしていろんな方の協力があってのBプレミアなので、信州の未来にとっては非常に大きいこと。応援する方も、将来長野県でバスケをする子供たちもBプレミアのチームを見ることができる。それって、子供たちにも影響があると思いますし、いろんな面でも関係者みんな本当に素晴らしい大きいことなので、昔から知っている自分としてその成長を見てきた自分としてはクラブが誇らしいと思います」
信州のBプレミア参入については「だいぶ前から木戸社長からは『絶対行ける』と言い続けてくださったので、名前を呼ばれたときはびっくりはしませんでした」と笑顔を見せた。
それでも、信州のHCに就任して7年目のシーズン。B2で優勝してもB1昇格ができなかったことやB1でトップチーム相手に戦えるカルチャーを築いたこと、そして昨シーズンのB2降格から今シーズンの新たな挑戦。多くのことを経験してきた勝久HCだからこそ、島田チェアマンの口から出た「信州ブレイブウォリアーズ」という言葉を聞いた瞬間は言葉にできない思いがあっただろう。
Bプレミアへの参入が決定し、ホーム開幕戦も2連勝で終えるなど、勢いに乗る信州ブレイブウォリアーズ。23日にはホームでライジングゼファー福岡との対戦を控えている。ジョシュア・スミスやパブロ・アギラール、ジャスティン・バーレルらB1でも活躍したビッグマンが多く在籍する福岡に対して、チームの成長を示すことができるか。渡邉飛勇とペリン・ビュフォードのホットラインを中心に、より強固なチームをつくっていくことが必要になる。Bプレミアへの参入が決まったから終わりではない。信州の未来を背負った戦いはまだ始まったばかりだ。
(芋川 史貴)