インターハイの雪辱!「運」もつかんだ開志国際が福岡第一を破りウインターカップ初制覇
初優勝を祝う開志国際高の選手たち©Basketball News 2for1
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019年ワールドカップ等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。

喜びを爆発させたというよりは、噛み締めたと表現するほうがふさわしいように思えた。

29日。2022年全国高等学校バスケットボール選手権大会・男子決勝が行われ、開志国際高校が今夏のインターハイ決勝で敗れていた福岡第一を88-71で下し、初優勝を達成した。

ウインターカップの通称のほうが通りがいいこの大会で、新潟県勢が頂点に立ったのは男女を通じて初となった。

「(これまで)ウインターカップ勝てなくて悔しかったんですけど、子どもたちのおかげで勝たせてもらいました」

開志国際の富樫英樹監督は試合終了直後のインタビューで、感極まった思いを独特のしゃがれ声に乗せた。

決勝戦で喜びのジャンプをする開志国際高・富樫英樹監督(中央)©Basketball News 2for1

1年生・平良宗龍やエース介川アンソニー翔がオフェンスをけん引

インターハイではわずか1点差で敗れた相手を、今回は凌駕した。試合開始直後から11-2のランでペースを掴んだ開志国際。第2Qは相手を9得点に抑える一方で、オフェンスでは1年生の平良宗龍の4本を含む5本の3Pを決め、前半を47-36とリードして終えた。

後半、福岡第一は焦りからかシュートが入らず、開志国際は徐々に差を広げる。第4Qの頭には18点にリードを広げた。

福岡第一は得意のディフェンスのギアを上げ、反撃。フルコートでかけるプレッシャーを強め、相手のターンオーバーからの得点を重ねるなどで同Q中盤には8点差にまで詰めよるが、開志国際は慌てず、この日30得点を記録した介川アンソニー翔(3年)の得点などで突き放し、念願のウインターカップを手にした。

バシール ファイサル モハメッド(左)や介川アンソニー翔の活躍が光った©Basketball News 2for1

開志国際は3Pを47.1%(17分の8)決めたことと、リバウンドで64-36と圧倒したことが、勝因だったと言える。

留学生のバシール ファイサル モハメッド(3年)や介川、アンダーカテゴリーの日本代表・武藤俊太朗(3年)など、サイズも含めた選手のタレントレベルでは、開志国際が優位だというのは戦前からわかっていたことだが、決勝を含めて大会を通して十全に「使いこなした」ことも大きかった。

開志国際は福岡第一との決勝で22のターンオーバーを許している(福岡第一は9)が、バシールや介川が相手のディフェンダーが集まってくると冷静にオープンの選手へパスし、得点の停滞を防いだ。

福岡第一が必死に追い上げる試合残り4分半。開志国際はトランジションから介川が先頭でボールをもらうが、相手のディフェンダーが待ち構えているのを見てその選手の裏にいた武藤へ冷静にアシストパスを決めた。開志国際はこれで17点差。相手の心を折るような、試合を決定づける場面だった。

「今年に入って自分で(ボールを)プッシュする力をつけようと思って、ドリブル練習とかもやってきました。(あの場面は)一瞬、自分で行こうかとも思ったんですけど、俊太朗がいいところにいたので、パスを出しました」

バシール、武藤とともに大会のベスト5に選出された介川は、そう振り返った。バシール、介川はそれぞれ16得点、30得点と得点源として活躍した一方で、アシストもそれぞれ6本と4本マークしたのは、彼らがいかに落ち着いてパスを回したかの証左と言えるだろう。

大会ベスト5に選出された(左から)開志国際の武藤俊太朗、介川アンソニー翔、バシール ファイサル モハメッド、福岡第一の轟琉維、城戸賢心©Basketball News 2for1

夏の悔しさを糧に成長 福岡第一対策が「勝ちにつながった」

2019年大会以来、5度目の優勝を狙った福岡第一。激しいディフェンスを信条とするチームの88点という失点について井手口孝監督は、オフェンスにミスがありシュートが入らなかったことで、リバウンドやハリバック(素早くディフェンスに戻ること)ができなかったことが敗因となったとする一方で、「ボールに対する執着がわれわれには足りなかった」と振り返った。

富樫監督を始め開志国際の面々のほとんど全員が、夏にインターハイで敗れた悔しさの大きさを口にし、それが今回、同じ相手に対して「リベンジ」を果たせた原動力になったと話した。

「自分たちはインターハイで悔しい結果に終わってみんな、絶対もっと強くなるために練習もハードにして、どうしたら福岡第一を倒せるかの対策をしてきて、今日のリベンジマッチでは対策してきたことが十分、発揮できたので、勝ちにつながりました」(武藤)

福岡第一のエースガード、轟琉維(3年)と懇意で、優勝直後も彼のことを気遣って声をかけた介川も、「インターハイで福岡第一に負けて悔しい思いをして、頑張って練習をしてきて、ウインターカップでまた福岡第一をやれて、今回リベンジできました。高校バスケを気持ちよく終われて嬉しい」と破顔した。

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インターハイ準Vから感じた「風」

ウインターカップ自体でも、開志国際はこれまで運に恵まれなかった。2018年大会では富永啓生(ネブラスカ大)の桜丘相手に3回戦で敗れ、翌年は強豪・福岡大学附属大濠に2回戦で当たり、敗退。20年は対戦相手の関係者に新型コロナウイルスの陽性反応者が出たことで仙台大学付属明成との3回戦を辞退。そして昨年は、最終的に頂点に立った大濠と1回戦で対戦し、敗戦している。

「けっして日頃の行いがいいわけでもないですよ。苦しいときもありますからね」

28日の準決勝で藤枝明成(静岡県)を僅差で下し決勝進出を決めたあと、勝因を「運」だとした富樫監督。ウインターカップ制覇は「まわりが運を持ってきてくれるんじゃないですか」とチーム全体の努力の結晶であるという風に述べた。

ただそのなかで、今年は背中を押す「風」を感じたという。インターハイにしても「コロナ禍で練習ができず、けが人だらけでぶっつけ本番みたいだった」状況から、準優勝という好結果を得たのも、それを示していた。

「それであそこまで行けたっていうことは…これでウインターカップ前に『あれ、後ろから風が来ているかな』と感じましたね」(富樫監督)

インターハイでの悔しさと、福岡第一を倒すという目標を、自分たちの原動力としてきた。それを、ウインターカップ決勝という高校バスケットボール最高の舞台で実現した。

今まで確かに、運はなかったかもしれないが、今年のウインターカップでそれを一気に返した形となった。

(永塚 和志)

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