最速30勝到達の三遠ネオフェニックス、リーグ首位も「誰一人満足していない」ことが強さに
中地区首位の三遠ネオフェニックス©Basketball News 2for1
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 Bリーグ1部(B1)は31日、各地でレギュラーシーズンの第20節が行われ、中地区首位の三遠ネオフェニックスはアウェイのホワイトリング(長野市)で同7位の信州ブレイブウォリアーズと対戦。今季3度目となる対決は75-62で三遠が勝利を収めて12連勝。リーグ最速で30勝に到達した。また、第19節終了時点で29勝4敗と並んでいた東地区首位のアルバルク東京千葉ジェッツに敗れたことにより、三遠がリーグ首位に躍り出た。

 三遠はヤンテ・メイテンが両チーム最多の21得点9リバウンド3スティール、デイビッド・ダジンスキーが17得点、コティ・クラークが14得点とチームの勝利に貢献した。

大野篤史HC体制2年目 新戦力も躍動

 三遠は第1Q(クォーター)出だしからクラークやメイテンが3ポイントシュートを沈めると、そこから激しいディフェンスをしかけ、ターンオーバーを誘発。サーティ・ラベナがイージーレイアップを決めて8-2とスタートダッシュに成功した。しかし、その後はお互いに譲らない展開が続き、前半を40-36で折り返す。後半に入るとマンツーマンディフェンスやゾーンプレスを織り交ぜて、ペースをつかんだ三遠が徐々に信州を突き放し、最終的には12点差での勝利とした。

 昨年12月23日の信州戦から勝利を積み重ね、今季リーグ最多となる12連勝とした三遠。好調を維持している要因を大野篤史ヘッドコーチ(HC)は「スタートの2人(佐々木隆成、細川一輝)が怪我してから、ステップアップしようとしてくれているプレーヤーがいるというところ。チームとしてやるべきことを徹底できていた試合が多かった」と分析する。

 佐々木(12.8得点、3.4アシスト)、細川(7.7得点)ともにチームには欠かせない主力選手だが、そういったピースが欠けるとチームが崩れることも珍しくない。実際、大野HC体制1年目となった昨季は、開幕直後こそ好調を維持し地区首位に立つこともあったが、主力の怪我などにより失速。結果的に23勝37敗の中地区6位でシーズンを終えている。

 しかし、今季は主力選手の不在となっても他のメンバーがステップアップできている。実際、佐々木が離脱後には先発ポイントガードとしてプレーする大浦颯太は9試合で平均10.9得点6.6アシストを記録するなど、素晴らしい活躍を見せている。

 新加入選手たちの活躍も目覚ましい。前述の大浦に加え、昨季名古屋ダイヤモンドドルフィンズで主力として活躍していたクラークや、ダジンスキーなど強力な新加入が加わり、各スタッツは大幅に向上。第20節終了時点で、三遠の平均得点数は90.4(リーグ1位)、オフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均得点)は118.1(同2位)とリーグ屈指の攻撃力を誇っている。ディフェンス面でも向上しており、昨季の平均失点81.9点から76.6点に改善、ディフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均失点)でも100.1(同3位)と攻守で隙のないチームに仕上がっている。

エースとして活躍しているコティ・クラーク©Basketball News 2for1

連勝を重ねる中で見えている課題「必要な努力を怠らない」

 リーグ首位に立った三遠だが、会見場に現れた指揮官や山内盛久は決してチームの現状に満足していない。信州戦では、69-50で迎えた第4Q残り4分49秒、信州に連続得点を許し、残り4分21秒で69-54と点差を15点まで縮められると大野HCがタイムアウトを要求したシーンがあった。

その場面について指揮官は「シュートが入る入らないというより、自分たちが、誰がどこで何をするか。ディフェンスの部分でも誰がどこで何をするかという部分を突き詰めていかないといけない。それがやはり1試合を通してコンスタントにやれなければいけない」とチームのあるべき姿について言及。

続けて、

 「今日の試合に関しては、『自分が』という思いが強くて、ドリブルが多かったり、チープなターンオーバーが多かった。『勝っているからいいや』というマインドが少し出てきているのかなと。そこはまだシーズン中盤ですし、自分たちの行きたい場所に行くために、必要な努力を怠らないっていうことは今日(の試合後)ロッカールームで話した」と反省点を口にした。

指揮を執って2シーズン目になる大野篤史HC©Basketball News 2for1

 チーム在籍3年目の山内も「結果的には勝ちはしたが、納得のいくゲーム内容ではなかったというのが率直な感想。終始自分たちのベースでバスケができていたかというとそうではなかった。自分たちがどこを目指しているのか、どこへ行きたいのかをもう一度チームで再確認して自分たちの現状をしっかり見つめ直したい」改めて気を引き締める。

 「負けてから気づくことは多いが、勝っているときだからこそしっかりと1つ1つの小さいことをチーム内で確認をして、隙のないチームになれたらいいなと思う。今12連勝しているが、誰一人連勝に対して満足していない。目の前の試合一つひとつ、自分たちのバスケットを40分間やることだけにフォーカスしている結果が、いい形に繋がっていると思う。勝っても反省点はあるし、誰一人満足していないというのがこの結果に繋がっているとすごく思う」

悲願のCS制覇に必要なのは「できる限りの努力や犠牲、献身性」

 リーグ発足以来、三遠がチャンピオンシップ(CS)に出場したのは16-17シーズンの一度のみ(クォーターファイナルで敗退)。しかし、大野HC体制になって2年目の今季はCSをホーム開催できる位置にまで上り詰めている。山内が語るように、勝利を重ねながらも課題点や反省点が得られていることはチームにとって大きな財産となっているはずだ。CSに向けて必要なことについて大野HCは「ゲームに対するマインドセットや準備のところ。自分のできる限りの努力や犠牲、献身性等。そういうところを一人ひとりのプレーヤーが持たなければいけないと思う」と語っており、優勝を知る名将の答えは明確だった。

 山内も「上を目指すというところで、(2月)バイウィークまでの残り5試合はすごく大事になってくると思う。どれだけ自分たちのバスケットが上のチームに対して通用するのか試せるチャンスだと思う。自分たちのバスケットを40分間できるようにチーム一丸となってやっていきたい」と意気込みを口にする。

 現在30勝4敗とリーグ首位を走る三遠ネオフェニックス。現状に満足せず、このままチームとして成長の歩みを進めていけば、シーズンが終わるときにはまだ見ぬ景色にたどり着いているかもしれない。

(芋川 史貴)

チームをけん引する山内盛久©Basketball News 2for1

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