Bリーグ1部(B1)の信州ブレイブウォリアーズは12月31日と1月1日にホームのホワイトリング(長野県長野市)で宇都宮ブレックスと対戦し、第1戦は83-61、翌日の第2戦は70-62で勝利。大みそかと元日の2日間を貴重な2連勝で飾った。
第1戦では第1クオーター(Q)こそ重い立ち上がりとなったが、第2Qで岡田侑大の10得点などで宇都宮を35-21と突き放す。その後着実に得点を重ねた信州が勝利を収めた。
第2戦では信州がリードを保つも、5点差以内の攻防が第3Qまで続く接戦に。第4Q残り3分42秒で宇都宮・竹内公輔がフリースローを2本沈めて57-57と同点に追いつくが、信州はマシュー・アキノの値千金の3ポイントシュートや岡田のペイントアタックで得点を重ねるなど、重要な局面でビッグプレーを成功させ、70-62で勝利。Bリーグ開幕後初めて宇都宮相手に勝利をつかんだ。
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2試合で42得点 川崎戦の反省生かし精神面で成長
この2日間で目を見張る活躍を見せたのは信州の岡田だった。
第1戦では29分29秒プレーをし、チーム最多の27得点をマーク。第2戦では過去に2度ベストディフェンダー賞を受賞した宇都宮の遠藤佑亮による厳しいマークにより、前半は6得点と沈黙。「リーグ屈指のディフェンダーである遠藤さんのペースに付き合ってしまいフラストレーションを溜めてしまった」と試合後に語った岡田だったが、試合を左右する終盤では、ウィリアム・モズリーのアリウープを演出するアシストや、24秒ギリギリでのリードを広げるショット、ペイントアタックによるバスケットカウントなど後半だけで9得点5アシストを記録。15得点を挙げ、エースとしてチームを勝利に導く活躍を見せた。
ここ数試合、岡田はフラストレーションとの向き合い方が課題となっていた。12月28日に行われた川崎ブレイブサンダースとの試合では前半は14得点と躍動したが、第3Qには徹底的にマークされ無得点に3ターンオーバーと精彩を欠き、第4Qには出場機会がなかった。川崎戦の第4Qに岡田のプレータイムがなかったことについて勝久マイケルヘッドコーチ(HC)は「せっかく良いプレーをしているのに、すぐフラストレーションが溜まってしまって次のプレーに影響が出ていた」とメンタル面の問題を指摘していた。
宇都宮との第2戦、前半から厳しいマークをされフラストレーションが溜まる展開となったが、気持ちを切り替え質の高いプレーをし続けていた岡田。「川崎戦と同じくフラストレーションが溜まる状況だったが、コーチが『この前と一緒のことが起きている』と話してくださった。ここからどう切り替えるかが、自分が成長できるかできないかのポイントだということを伝えてくれたので、しっかり切り替えることができました」とメンタルでの成長が活躍につながったことを強調した。
エースとしてチームを勝利に導いたことに関しては「得点面だけではそれが仕事なので自分にとっては当たり前」とコメント。続けて「それよりもディフェンス面ではまだまだダメなところが三ツ井さん(三ツ井利也)や航さん(熊谷航)に比べてたくさんあるが、それでもメンタル面を含めて立て直せたことは良かった」と反省点を述べながらも手応えを口にした。
シックスマンに挑戦「流れを変えるのは好きだし面白い」
今季は25試合中24試合でベンチスタートと、シックスマンとしてプレーしている岡田。昨季とは異なる役割については「個人的にはスタートで出る方が得意ではあるが、今のラインナップやコーチの考えで自分はシックスマンという立場にある。アップから時間が空いたり、流れが相手に渡ったりした中で試合に出ることは非常に難しいことだが、流れを変えるってことは好きだし面白いのでそこは楽しんでやっている」と新たな挑戦も楽しんでいる様子だ。
直近10試合中5試合で20得点以上を記録し、直近8試合は全試合で2桁得点、平均20.0得点と調子を上げている岡田。アシスト数はチーム最多の4.2を記録しているものの、シーズン序盤は外角のシュートタッチに苦しみ、得点面だけで見たら「らしさ」が影をひそめる試合も少なくなかった。
最初の17試合で成功率21.9%と精彩を欠いていた3Pショット成功率も、直近8試合では48.9%と絶好調。シュートタッチが戻ってきたことで「自分の得意なペイントタッチも生かせるようになった」と手ごたえを口にする。
新加入モズリーとも相性抜群「最後まで駆け引きができる」
もう一つ、岡田のオフェンス能力を最大限に引き出している要素がある。チームメイトのウィリアム・モズリーの存在だ。大黒柱ウェインマーシャルの離脱によって、11月からチームに合流したモズリーは、ディフェンスやリバウンドでの献身的なプレーや身体能力を生かしたダンクなどでチームに大きく貢献。早くも信州のインサイドを支える存在となっている。宇都宮との第2戦では、4Qの重要な場面で岡田のパスからモズリーがアリウープダンクを叩き込むなど、オフェンス面でも信州の武器となりつつある。
モズリーとのプレーについて岡田は「最後にロブ(パス)を放れるというのは、最後の最後まで駆け引きができます。自分が富山にいたときには(リチャード)ソロモン選手とはいい2メンゲームができましたし、それと似たような感じでプレーできるのでやりやすい」と語り、早くもいいケミストリーを構築できている様子。パスか自分でスコアを狙うかを最後まで選択肢として残しておくことで、ディフェンダーにとっては非常に守りづらい状況を生み出すことができている。
初のCSも射程圏内 勝久HC「5割で我慢できていることは本当にいいこと」
マーシャルの長期離脱や主力選手の相次ぐケガなどもありながら、ここまで13勝13敗の勝率5割で中地区3位につけている信州。チャンピオンシップ(CS)圏内の同地区2位横浜ビー・コルセアーズには2ゲーム差に迫り、初のCS出場を射程圏内にとらえている。
26試合消化時点で昨シーズンよりも勝ち星を3つ多く積み重ねている状況について勝久HCは「ケガ人が増えて(試合に)出られるメンバーが変わり、アジャストしなければならないことが多い中で、選手たちが遂行力を上げようと常に取り組んでいる。今(勝率)5割で我慢できていることは本当にいいことだと思います」と評価。CS進出に向けて必要なことは何かという問いに対しては「いつも言う、『日々成長』です」と姿勢はブレない。「『〇勝』という目標よりもよほどハードルが高いと思うが、1つ1つの経験から学んで成長し続けることができれば結果はついてくると思う。全員の意識の高さ、チーム力、日々成長することが鍵です」と力強く語った。
大黒柱のケガや新メンバーの加入、エースの復調などを経て、チームとしての厚みが増している信州ブレイブウォリアーズ。全員で「日々成長」をしながらCS進出、そして目標である日本一を目指していく。
(芋川史貴)