Bリーグの2023-24シーズンは全60試合のレギュラーシーズン(RS)を終え、熱戦を勝ち抜いた8チームがトーナメント形式で年間王者を争うチャンピオンシップ(CS)が10日に幕を開ける。2戦先勝方式で、セミファイナルまではRSの全体順位で上のチームのホームで開催。ファイナルは25から28日に横浜アリーナで行われる。
RSは各地区、ワイルドカードとも順位の確定がRS最終盤までもつれ込み、稀に見る混戦となった。リーグのレベルが底上げされている証左の一つと言えるだろう。RSとは「別の大会」とも称されるCSでも激しい戦いが予想され、アップセットも十分にあり得る。一戦たりとも目が離せない。
CS初戦となるクォーターファイナルの対戦カードは以下。
宇都宮ブレックス(東地区1位)vs千葉ジェッツ(東地区3位)
アルバルク東京(東地区2位)vs琉球ゴールデンキングス(西地区2位)
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(西地区1位)vsシーホース三河(中地区2位)
三遠ネオフェニックス(中地区1位)vs広島ドラゴンフライズ(西地区3位)
目次
「歴代優勝チーム」と「愛知×3+広島」の山に分かれる
トーナメント表は特徴のある二つの山に分かれた。
同じ山に入った宇都宮、千葉J、A東京、琉球は、CSが行われた過去6シーズン(2019-20シーズンはコロナ禍で中止)の歴代優勝チーム。これまでにBリーグでチャンピオントロフィーを掲げたクラブはこの4チームしかいない。
もう一方の山には、広島を除いて三遠、名古屋D、三河と愛知県に本拠地を置くクラブが3チーム入った。名古屋D対三河は“愛知ダービー”となっており、同県がバスケ界のホットスポットになっていることが伺える組み合わせとなった。
クラブ名だけを見ると前者の山の方がパンチ力があるが、今シーズンのパワーバランスを見ると、どちらの山の方がレベルが高いかというのは単純には言えない。例えば全体1位の宇都宮は、反対側の山に入った広島、三遠とはRSの対戦成績がそれぞれ1勝1敗となっており、星を分けている。全8チームに優勝を狙えるだけの力があることは間違いない。
4カードとも見どころ十分、個性が際立つ8チーム
一戦ずつ見ていくと、51勝9敗の全体1位でCS進出を果たした宇都宮は千葉Jをホームの日環アリーナ栃木に迎える。RSの直接対決で4戦全勝の宇都宮は比江島慎とD.J・ニュービルのコンビが得点、アシストの両面で強烈な存在感を放ち、3P成功率が40%を超える遠藤祐亮も外に構えているため、穴が少ない。さらに平均失点が69.2点とリーグで最も少ないため、既にEASL(東アジアスーパーリーグ)と天皇杯の2冠を獲得している千葉Jは、富樫勇樹やクリストファー・スミスを中心に持ち前の爆発力を発揮することが勝利の条件となるだろう。
東西の両地区をけん引してきたA東京と琉球のカードは、A東京のホームとなる有明コロシアムが舞台。RSの対戦成績は1勝1敗。テーブス海やライアン・ロシターを中心に攻守で緻密な連係を武器とするA東京に対し、2連覇を狙う琉球はジャック・クーリーやアレン・ダーラムといった重量級のインサイド陣に強みを持つ。A東京はレオナルド・メインデルや安藤周人、琉球は岸本隆一や今村佳太など、互いに3Pで乗せたくないであろう選手もいる。ディフェンスとリバウンドでいかに我慢をできるが勝敗を分ける鍵になりそう。
“愛知ダービー”として注目を集める名古屋D対三河は、名古屋Dのホームであるドルフィンズアリーナで行われる。RSは1勝1敗で星を分けた。名古屋Dは齋藤拓実やスコット・エサトン、三河は西田優大やジェイク・レイマンなど、どちらも得点力の高い選手がいるためオフェンスに目が行きがちだが、名古屋Dはさまざまなスタイルを駆使するチェンジングディフェンスを武器とし、三河もライアン・リッチマンHC体制の1年目でハードなディフェンスを身に付けた。シーズン中に好不調の波があったことも似ている。泥臭く体を張り続け、遂行力を高めたチームに軍配が上がる。
三遠のホームである豊橋市総合体育館で行われる三遠対広島は、矛盾対決と言える。コティ・クラーク、ヤンテ・メイテン、大浦颯太らによるハイペースなオフェンスで平均得点が89.5点とリーグで断トツトップの三遠に対し、シーズン終盤にかけてディフェンスの完成度がさらに向上した広島は河田チリジや船生誠也といった仕事人も活躍し、平均失点がリーグで3番目に低い73.4点。RSの直接対決は三遠の2勝0敗で、そのうちの一戦は100点ゲームの完勝だった。ハイスコアゲームになるか、それともロースコアゲームになるか。いかに自分たちの土俵に相手を引きづり込むかが勝負のポイントとなる。
A東京「琉球のイージーな3Pは消したい」
これまで記したようにどのカードも激戦必死だが、中でも2016年のBリーグ発足時の開幕カードと同じA東京対琉球は、今シーズンのホーム平均入場者数のトップ2(琉球1位、A東京2位)による対決となるため、注目度が高い。A東京はリーグで唯一2連覇を経験しており、琉球は今季を含めてこれまで7度行われたCSに全て出場し、昨シーズン初めて戴冠した。
東西の“横綱対決”にふさわしい盛り上がりが期待される中、両チームは8日にメディアの取材に応じた。
A東京はオンラインで会見を実施。初めに顔を見せた所属3シーズン目のライアン・ロシターは、CSのクォーターファイナル途中で負傷離脱した昨シーズンを念頭に、こう意気込みを語った。
「今シーズンは健康でプレーできるということで、非常にエキサイティングな気持ちです。怪我でプレーできないことはチームに貢献できず、申し訳ない気持ちになる。ファイティングスピリットを全面的に出し、チームの勝利に貢献したいと思います。アルバルクの優勝のみを考えてます。まずクォーターファイナルからしっかり準備していきたいと思います」
デイニアス・アドマイティスHC、各選手とも重量級の選手が揃う琉球のインサイド陣を警戒し、リバウンド争いや、いかに相手のセカンドチャンスポイントを防ぐかを試合のポイントに挙げた。また、琉球のウイング陣を警戒する声も多かった。以下はエースガードを務めるテーブス海のコメントである。
「琉球は中と外で本当にいいバランスを持っているチームだと思います。自分もペリメーターの選手として、イージーなアウトサイドシュートは消したいです。岸本選手や今村選手のように1対1でステップバックをしたりして3Pを決め切るような選手がいますが、そこはなるべくタフなシュートを打たせることしか正直できないので、トランジションやコミュニケーションミスからのノーマーク3Pをいかに消せるかが大事だと思っています」
A東京にとっては、平均失点がリーグで2番目に少ない70.0点という持ち前のディフェンス力を生かし、主導権を握れるかどうかが勝利のポイントになりそうだ。
琉球「A東京のディフェンスを見極めたい」
一方の琉球は8日に沖縄アリーナサブアリーナで練習を公開後、桶谷大HCと選手がメディアの囲み取材に応じた。琉球はRS最終盤で4連敗を喫するなどして名古屋Dにまくられ、西地区7連覇を逃し、厳しい状態でRSを終えた。それでもチームの大黒柱であるジャック・クーリーは前を向く。
「レギュラーシーズンでは苦しむところはあったんですけど、プレーオフとなったらまた1からのスタートだと思っています。ファイナルまでに6勝したチームが優勝する。また新しい気持ちを持ち、プレッシャーに打ち勝ちながら、シーズンの逆境を跳ね返したいです」
ハーフコートでピックを使ってディフェンスのずれをつくりながら、確率の高いシュートを堅実に決めていくA東京に対し、桶谷HCや選手は個の得点能力が高いメインデルを警戒選手に挙げた。他方、A東京の堅守を突破するポイントとしては、桶谷HCが以下のように語った。
「ターンオーバーをしないというところが一番重要で、そのためには相手のディフェンスがハーフショーかハードショーかや、他にもスイッチをしてるのか2ー3ゾーンを敷いているのかなど、全員が見分けて共通認識を持ってプレーすることが大事です。また、ボールピックでずれを作ってからジャックやアレックスにいい状態でボールをつかませ、そこから自分たちのボールムーブメントができたらおのずと攻略できると思います」
琉球にとっては、強みであるインサイド陣でアドバンテージを生み、そこを起点にフリーのシュートシチュエーションをつくれれば波に乗るきっかけをつくれそうだ。
(長嶺 真輝)