「全て勝つつもりで」琉球ゴールデンキングス、残り4試合で“西”首位に 島根を得失点差で上回る
大きく手を挙げる琉球ゴールデンキングスのジャック・クーリー(左)と今村佳太©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 Bリーグ1部西地区2位の琉球ゴールデンキングスが23日、ホームの沖縄アリーナで中地区4位のサンロッカーズ渋谷に90ー84で勝利し、連勝を8に伸ばした。この日、西地区1位の島根スサノオマジックが同7位の京都ハンナリーズに82ー87で敗れたため、琉球と島根が通算45勝11敗で並び、両チームの直接対決の得失点差により琉球が西地区1位に躍り出た。

 レギュラーシーズンは残り4試合。東地区は千葉ジェッツ、中地区は川崎ブレイブサンダースが地区優勝を既に決めている中、西地区の頂上争いは琉球と島根の2チームのどちらかに絞られ、最後まで行方の分からない状況が続いている。

勝利を喜ぶ琉球ゴールデンキングスのメンバー©Basketball News 2for1

試合前の一報にも冷静「自分たちの仕事を」

 ティップオフの約1時間前、午後5時ごろ、徐々に客席が埋まり始めていた沖縄アリーナが一瞬どよめいた。スマートフォンなどで島根対京都の試合を固唾を飲んで見守っていた琉球ブースターが、島根の敗北に反応したのだ。

 桶谷大HC「みんな(島根戦の)映像を見ていました」と振り返る通り、試合のライブ動画を観戦していたのは琉球の選手やスタッフも同じだった。島根が負けた時点で、直後に始まる渋谷との一戦に勝てば地区1位に返り咲くことが決定。さもすれば、余計な力が入りそうな状況ではあったが、指揮官は冷静だった。

 「やっぱりフォーカスしないといけないのは自分たちの試合だったので、しっかり集中して、まずはディフェンスで高い強度から入ろうという話をしました」

 その方針は選手もしっかりと共有していた。今村佳太の言葉である。

 「(地区1位は)意識しないわけではないですが、そこは自分たちがコントロールできるわけではないので、自分たちの仕事をやろうということはチームでも話をしていました」

 

最終盤で驚異のリバウンド力発揮 独壇場のジャック・クーリー

 迎えた渋谷戦。琉球は個々の高い強度のプレッシャーやビッグマンへのトラップなどディフェンスで流れをつかみにいこうとするが、渋谷も負けじとスティールを連発したりして流れが行ったり来たりする展開に。それでもジャック・クーリーを中心にインサイドで優位に立つ琉球が徐々に点差を引き離し、第4Q序盤には松脇圭志のスリーや渡邉飛勇の豪快なダンクなどでこの試合最大の14点にリードを広げた。

 しかし、渋谷のタイムアウト後に流れが急転する。石井講祐と盛實海翔に連続スリーを沈められると、ここから猛追を許して接戦となり、残り1分41秒でベンドラメ礼生にバスケットカウントワンスローを決められてついに80ー80の同点に追いつかれた。

 今度は琉球がタイムアウトを請求し、流れを切る。この苦しい場面で消沈する琉球ブースターを救ったのは、やはりこの男。いずれもチームトップの26得点20リバウンドという驚異的なダブルダブルを記録したクーリーだ。

“20-20”でチームを救ったクーリー©Basketball News 2for1

 試合再開後のオフェンスで今村が外したレイアップをもぎ取り、ゴール下を難なく沈める。直後の守備でディフェンスリバウンドを掴むと、今度はアレン・ダーラムが外したシュートでオフェンスリバウンドを奪取し、獲得したフリースローを確実に2本決めて点差を広げた。

 その後も最後までゴール下を支配し続け、勝利の立役者となったクーリーは「この試合は自分たちを西地区1位に押し上げる重要な試合でした。試合の鍵になる終盤で自分がチームに貢献できることを考え、それを実行しました」と振り返った。 

重視する「ホームコートアドバンテージ」

 西地区1位に浮上したことで、全体順位が4位から2位に上がったキングス。この状態をキープしてチャンピオンシップ(CS)に突入した場合、クオーターファイナル(QF)とセミファイナル(SF)のホーム開催が確約される。

 今村はドウェイン・エバンスの劇的なブザービーターで第2戦を制し、球団初のファイナル進出を決めた昨シーズンの島根とのホームSFを念頭に「アウェーで勝ち切る力も必要だとは思いますが、やっぱり沖縄アリーナで試合ができることは非常に大きなアドバンテージです。ですので、自分たちとしては何としてもホームコートアドバンテージを勝ち取らないといけないと考えています」と語った。

 現状では西地区2位でCSに進出すると、QFはホーム開催となるが、優勝候補最右翼の千葉ジェッツがQFを勝利した場合は、SFで千葉Jと当たり、アウェーで対戦することとなる。それを念頭に、桶谷HCは「自分たちが(SFまでの)ホームコートアドバンテージをつくるのか、SFで千葉Jのホームに行くことになのかで全然状況が違う。西地区1位というよりも、ホームコートアドバンテージを取るためにも、4試合全てを勝つつもりで戦いたいです」と気を引き締めた。

©Basketball News 2for1

次節は今シーズン未勝利の“難敵”大阪エヴェッサ

 一方で、琉球の残り4試合のカードを見ると、難しい試合が続くことは一目瞭然だ。今月29、30の両日に大阪エヴェッサ(西地区5位)をホームに迎え、最後は5月6、7の両日にアウェーで広島ドラゴンフライズ(同3位)と対戦する。

 西で上位争いを繰り広げてきた広島も当然簡単に勝てる相手ではないが、大阪に至っては今シーズン2戦2敗の難敵だ。特に絶対的エースであるディージェイ・ニュービルは、今月大阪が琉球、島根、川崎、名古屋DというCS進出チームから白星を挙げる原動力となっており、どう対策するかが勝負の鍵を握る。

 今月5日にホームであった大阪戦の最終盤で、ニュービルとの1対1の場面を頻繁につくられ、連続得点を決められたクーリーは「彼を止めるためには、個人よりもチームとしてどう対策を練っていくかが大事になってくると思います。今シーズン大阪とは2回対戦していますので、そこから学んだことを生かし、ニュービル選手への対策を含めて準備をしていきたいと思います」とリベンジを誓った。

 昨シーズンは地区5連覇を果たして初のファイナルに進出し、“西の雄”の名を欲しいままにしてきた琉球にとって、負けられない戦いが続く。

(長嶺 真輝)

関連記事

Twitterで最新情報をゲット!

おすすめの記事