Bリーグ1部(B1)は19日から21日にかけて、各地でレギュラーシーズン(RC)の第34節が行われ、信州ブレイブウォリアーズ(中地区7位)はアウェイで富山グラウジーズ(同8位)と対戦。信州から多くのファンが駆けつける中、第1戦は71-62、第2戦は最後までどちらに転ぶか分からない中で、富山の小野龍猛のシュートが外れ、74-73とそれぞれ勝利した。
第1戦ではアンガス・ブラントが両チーム最多の23得点、石川海斗が3ポイントシュート4本を含む18得点とチームの勝利に貢献。第2戦ではウェイン・マーシャルがチーム最多の20得点、石川が3ポイントシュート3本を含む14得点、三ツ井利也がフィールドゴール成功率100%(4/4)の10得点や要所のディフェンスでおよそ5か月ぶりとなる連勝に大きく貢献した。
富山戦の連勝で信州は9勝47敗(リーグ全体23位)とし、残留争いを繰り広げている茨城ロボッツ(11勝45敗、同22位)とのゲーム差を2に縮めた。
石川海斗が見せた意地「絶対勝たなきゃいけなかった」
主力選手の度重なるケガなどもあり、シーズンを通して苦戦してきた信州。そんな中、大黒柱であるウェイン・マーシャルの復帰などもあり、直近数試合では勝利をつかんだり、負けたとしても終盤まで競り合う試合展開が増えていた。
しかし、チームの状態が上向いてきた中で迎えた17日の三遠ネオフェニックス戦では、キャプテン栗原ルイスの欠場の影響もあり、75-95と惨敗。同日、秋田ノーザンハピネッツに勝利した茨城とのゲーム差は「3」となり、B1残留を目指す信州は残り6試合で1つも落とせない状況となっていた。
そんな中で挑んだアウェイでの富山との2連戦。第1戦は信州が出だしから激しいディフェンスを仕掛け、相手のターンオーバーを誘発。オフェンスではブラントを中心にペイントで得点を重ね、石川も3ポイントシュートを4本沈めるなど富山を寄せ付けず。試合終盤には0-15のランを許す場面もあったが、最大24点差をつけた信州がしっかりと勝ち切った。
石川は第1戦後、「富山さんのホームで、順位が近い相手というところで、僕らはまだ下位2位が確定してないので、やっぱり自分たちは勝たなきゃいけない。その上でも最初の試合は絶対勝たなきゃいけなかった」と振り返る。
続けて「チームとしてここで勝つか負けるかで僕らの運命はすごく変わってくる。それはコーチもいってましたし、社長も試合前にロッカールームに来て言っていました。『誰かのため』というわけではないですが、(栗原)ルイスもこの場所で戦いたかったと思うし、同じポジションの生原はずっとプレーできてないので。やっぱり彼がまたB1でプレーできるように、自分の体を削ってでも、やっぱそこ(勝利)にしがみつく気持ちっていうのは試合前から持っていた」と思いを述べた。
3Pにルーズボール 三ツ井利也が見せた勝利への執念
勝利から一夜明けた21日の第2戦。富山は第1戦の第4クォーター(Q)終盤に15-0のランを成功させたメンバーを先発に据えて試合をスタート。ハードにプレッシャーをかけながら、課題となっていた信州のペイント内での得点を抑え、オフェンスではゴールへのアタックを強調していた。その勢いに押された信州はミスを連発し、33-34と1点ビハインドで前半を折り返す。
第3Qでも一時6点ビハインドを負っていた信州だったが、ミスマッチを突き、マーシャルを中心にペイントへアタック。徐々にペースを取り戻すと、56-52と4点リードで最終クォーターを迎える。だが第4Q開始直後に小野とクインシー・ミラーに連続得点を決められ、再度逆転を許す。残り7分31秒にはミラーのフリースローで7-0のランとなり、56-59と流れは富山に傾いた。
この嫌な流れを断ち切ったのが、三ツ井利也だった。残り7分15秒で左コーナーから3Pシュートを沈めて同点に追いつくと、残り4分33秒に同じ位置から再び3Pシュートを決め、66-62とリードを4点に広げた。
貢献を見せたのはオフェンス面だけではない。残り3分38秒には激しいディフェンスから相手のボールをスティール。床に転がったボールに頭から飛び込み、信州のポゼッションへとるながるジャンプボールシュチュエーションを獲得した。さらにその後のディフェンスポゼッションでも水戸健史からボールをはじき、フロアにダイブしてマイボールに。どちらのポゼッションでも信州のフリースローへとつながっており、リードを広げる追加点となっていた。
極めつけは、残り13秒72-71と迫られた場面。富山はフルコートでプレスを仕掛ける中、裏をかいてゴールへと走っていた三ツ井は、ジャスティン・マッツからパスを受け、リードを3点に広げるレイアップを決めた。最後は富山も意地を見せて逆転のシュートを放つもリングに弾かれ、信州が辛くも逃げ切り連勝をつかんだ。
試合後、連勝を呼び込むビッグプレーを連発した三ツ井に、勝久マイケルHCは惜しみない賛辞を送った。
「何人もビッグプレーをした選手たちがいますけど、やっぱり(三ツ井)利也のビッグスリーと、ディフェンスのミスがあった後に、それを取り返そうと何度もルーズボールをしっかりと床に飛び込んでルーズボールを取った。あれがウイニングプレー。ああいうのが本当に大きかったです」
泥臭いプレーも含めて、チームの勝利に貢献した三ツ井。自身のプレーに関しては「ここ数試合、競った展開で勝ち切れない試合が多くて。ルーズボールであったり、一つのリバウンドをどれだけ欲しがるかという戦いだと思う。終盤も終盤ですけど、(シーズンの)前半はあまりうまくいってなかったですけど、ああいう試合の終盤でチーム全体としてそういうところが最後の最後まで出せたというのは、非常に大きい」と語り、接戦を勝ち切ったチームの成長についても手ごたえを感じているようだ。
次節は20連敗中のホーム最終戦「勝ちたくてしょうがない」
富山戦を2連勝で終え、残留への望みを首の皮一枚で残している信州。次節はホームで横浜ビー・コルセアーズと対戦する。アウェイでは直近4戦3勝と調子を上げている信州だが、ホームでは昨年11月の富山戦で勝利して以来、目下20連敗中。B1残留のため、そして横浜BC戦はホーム最終戦となるだけに、何としてでも勝利を手にしたいところだ。
指揮官も、ホーム最終戦での勝利に意欲を見せる。
「我々はずっとホームで勝っていなくて、もちろんみんなホームで勝ちたくてしょうがない。少なからずホームで勝っていないなとはみんな分かっていて。ロッカールームでもいったが、今日(富山との第2戦)見て分かる通り、信州のブースターのみなさんは、とにかく我々を応援している。この2日間ブースターの皆さんの後押しがなかったら、この2連勝はなかったかもしれないし、負けられないという同じ気持ちでの応援。『本当にみんな我々のサイドにいるんだよ』と(選手たちに伝えた)。ホームで勝てていないことをプレッシャーに感じるのではなく、一緒に絶対ホームで2連勝しようというふうに思っている。今回アウェイであんなに多くの方に来てもらって、ホームではもっともっと多くの方に、チームと一緒に戦っていただきたいと思っている」
三ツ井も同様に、ホームでファンに勝利を届けたいと意気込む。
「長らくホームで勝てていないし、まずはみなさんのためにも勝ち試合を見せないといけない。間違いなく今日、最後の最後まで戦い抜けたのは、配信も含めて現地でも応援してくれたファンのおかげ。僕自身、あのルーズボールもしんどい状況ではあったが、ファンの皆さんの声援があって飛び込めたと思っている。シュートもあの後押しのおかげで決められたと思っている。たらればだが、最後の(富山の)シュートももしかしたらファンのみなさんの圧力が外させてくれたと思っている。しっかりホームで2連勝できるように頑張りたいので、ぜひまた共に戦っていただけたら」
B1残留へ、まだまだ厳しい戦いが続く信州ブレイブウォリアーズ。上述の通り、4試合を残して茨城とのゲーム差は2となっており、これをひっくり返すために信州に残された道は勝利しかない。残りの4試合すべてに勝ったとしても、茨城の結果次第で降格が決まる可能性もあり、苦しい状況には変わりない。富山に連勝したものの、「クロージングに課題がある」と三ツ井が述べたように乗り越えなければいけない課題も残っている。スローガンの通り、チームに必要なのは最後まで「日々成長」すること。課題を克服して、まずはホームでの横浜BC戦に連勝し、B1残留に望みをつなげていきたい。
(芋川 史貴)