【バスケ日本代表】吉井裕鷹が考える「目に見えない点数」を防ぐ“ファウルの使い方”
フランス戦で好守を見せた日本代表の吉井裕鷹(中央奥)©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 「僕自身、ファウルが多くなって出られない時間が長くなってしまいました。そうなるとリズムがつくれないので、そこは課題ですね」

 18日午後、有明アリーナ。スロベニア戦前日の公開練習後、フランス戦の振り返りをSF吉井裕鷹に聞くと、第3Qまでに4つに達したファウルについての言葉が真っ先に口を突いた。自身の反省点を挙げた後、チームの課題にも触れた。

 「チーム全体として、もうちょっと使えるところでファウルを使っていかないといけないと感じます。それが増えていくと、簡単にダンクされることも少なくなる。チームの決まり事をもっと明確にしていかないといけないと思います」

 この「ファウルの使い方」については、17日の試合直後にキャプテンのPG富樫勇樹も触れており、チーム全体で問題意識を共有しているようだ。吉井は速攻やダンクなどの簡単な失点をすることで「目に見えない点数がかさんでいく」と独特な表現を用いてその必要性を説明した。どんな意味を込めたのかー。

ファウルを使っていい場面とは ダンク、速攻…

 まず、ファウルを使っていい場面とはどういう時なのか。先発で出場した吉井が第1Q序盤に記録した二つのファウルを例に挙げる。

 開始から1分ほど、SG馬場雄大のドライブからのキックアウトがカットされると、フランスはそのまま速攻へ。すかさず吉井がハーフライン付近でボールマンに体を当てて、ファウルで止めた。

 約1分後。試合の流れ上、この場面でミスマッチとなっていたフランスの216cmのCルディ・ゴベールに面を取られ、ボールが入る前から背中でゴール下付近まで押し込まれた。吉井は両手を真っ直ぐ上げてシュートにプレッシャーを掛けたが、腕に引っ掛けるようにシュートを打たれ、笛が鳴った。

 二つ目のファウルについては、自身が「ゴールラインを開けてしまうと一発でダンクまで行かれるので、押しながらゴールラインから外していく意識で付きました。それでも高さがあったので、1回後ろに引いて、押して、ということをしましたが、ファウルになってしまった。もうちょっとうまくできたと思います」と振り返る通り、意図したファウルではなかった。序盤での2ファウルは出場時間を制限してしまうため、当然だろう。

 ただ、この時のシチュエーションだけを見れば、ファウルは必ずしも間違いではない。ゴベールはNBA2022-23シーズン、フィールドゴール成功率が65.9%だったのに対し、フリースロー成功率は64.4%と若干下回っているため、イージーなダンクより「2点」を取られる可能性はより低くなるからだ。

17日のフランス戦、フリースローを放つルディ・ゴベール©Basketball News 2for1

メンタルへのダメージを軽減

 話が戻る。冒頭の表現が出てきたのは、一つ目のファウルについて触れた時だ。

 「速攻でダンクをされると、一番自分たちのメンタルにきますし、相手の流れも良くなってしまう。そうすると『目に見えない点数』がかさんでいくと思うので、そこはどんどん使っていいと思います」

 少し長いが、「目に見えない点数」とはつまり、相手に簡単なシュートを許して自分たちのメンタルにダメージを負い、流れを持って行かれて取られる点数、という意味だろう。「速攻とかイージーなバスケットに行かれた時、どれだけ早めにファウルを使えるか。目に見えないですけど、そういう点数は結構効いてくるので」とも続けた。

 この試合ではファストブレイクからの失点は4点に抑えたが、ペイントエリア内での失点はちょうど日本の倍となる44点を取られた。一方、フランスのフリースローによる得点は17本中10本で成功率58.8%と高くはなかった。日本のファウルは吉井が4つ、C川真田紘也とPG河村勇輝が3つで、それ以外の選手は余裕もあったため、ゴール下の簡単なシュートをファウルで止めてフリースローを打たせれば、もう少し失点は抑えられたかもしれない。

 W杯本番で当たる、サイズのあるドイツやオーストラリアを念頭に、吉井は「ハーフコートディフェンスで高さを使われることはもちろんあったけど、全員が収縮し、うまく守れている時間はありました。ただ速攻やダンクを止めるためには、シンプルに体を張るか、ファウルを使って切るか、どっちかを意識しないといけない。本番でも、ガード陣ももっとファウルを使えるところは使っていかないといけないと思います」と指摘した。

18日の公開練習でシュートを放つ吉井 ©Basketball News 2for1

流れを重視「なんでも打つわけじゃない」

 「流れ」を重視する思考は、オフェンスにも向いている。

 「チームとしてなるべくポゼッションを増やしたいのは間違いないですが、何でもかんでも3Pを打つというイメージはありません。例えば、ターンオーバーした後の次のオフェンスで簡単に3Pを打って外すと、流れが相手に行ってしまう。いい流れに持ってけるタイミングが来るまで待つということもやっていかないといけないと感じます」

 この辺りはガードがコントロールする傾向があるが、フォワードの吉井はどのようなアプローチを考えているのか。

 「4番をしているとボールが回ってくる回数も多いです。一回のピック&ポップで3Pをぽんって打っちゃったりすると、もっと使いたい場面が後から出てくることもあります。場面にもよりますが、シュートを高確率で決めきれる2番の選手もいますし、うまくそういうところにつなげていきたいです」

 長らくホーバスジャパンに定着し、攻守ともに戦術を熟知している吉井。40分間の中で目まぐるしく入れ替わる試合の流れをどう読み、どうプレーで表現していくのか。注目だ。

(長嶺 真輝)

©Basketball News 2for1

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