【バスケ日本代表】3P成功率「40%」で世界と戦えることを証明 W杯本番で“課題克服”なるか
スロベニア戦でルカ・ドンチッチ(左)をマークする河村勇輝©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 8月25日に沖縄アリーナなどで開幕するFIBA男子ワールドカップに向け、日本代表(FIBAランキング36位)は19日、東京の有明アリーナでスロベニア(同7位)と国際強化試合を行い、68ー103で大敗した。W杯本番前最後の強化試合で、相手にはNBAのスーパースターであるルカ・ドンチッチがいたこともあり、13,216人もの大観衆が会場に詰め掛けた。

 15日のアンゴラ(同41位)戦、17日のフランス(同5位)戦を含め、本番と同じ、5日間で中一日を挟んで3試合というスケジュールをこなし、成績は1勝2敗。ただ、結果以上に注目すべきポイントは、サイズの小さい日本にとって生命線とも言える3Pの成功率が、3試合とも20%台に低迷したことである。

 この課題を克服しない限り、25日にドイツ(同11位)、27日にフィンランド(同24位)、29日にオーストラリア(同3位)と戦う一次ラウンドで勝利を挙げることは極めて難しい。「3P」の視点からこの3試合を評価し、本番を展望する。

バスケットボール男子日本代表
ワールドカップに臨むバスケットボール男子日本代表©Basketball News 2for1

後半に3P決まらず ドンチッチの活躍で突き放される

 まずはスロベニア戦から振り返る。

 2021年の東京五輪で4位に入った強豪相手に、日本は序盤から持ち味である素早い展開で対抗する。SG馬場雄大がスティールから速攻を仕掛けたり、SF吉井裕鷹のパスカットから馬場がファストブレイクに走ったりする場面も見られた。

 3PもSG富永啓生やPG河村勇輝、PG富樫勇樹らが決め切り、第1Qは成功率も35.7%(14本中5本)で上々の滑り出し。その効果もあり、第2Qの残り4分を切った時点で一時は3点差まで詰め寄った。しかし、そこからドンチッチに華麗なアシストを連発され、短時間で36ー50まで引き離され、前半を折り返した。

 第2Qからフリーで放つ3Pを外す兆候は見られていたが、後半はさらに確率が激減。20本を放って4本(成功率20%)しか沈められず、勢いに乗る時間帯をつくれずにさらに点差を広げられた。

 個人スタッツでは、ジョシュ・ホーキンソンが12得点、12リバウンド、4アシスト、2ブロックと大車輪の活躍を見せ、右股関節の負傷から動きのキレが戻ってきていることをうかがわせた。その他、馬場が13得点、富永が10得点、河村が7得点、9アシスト。吉井は3Pを2本中2本決めて8得点を挙げた。

 試合後、富樫は「自分たちのスタイルだと、外のシュートが入らなければ今日のような展開になってしまう。3Pが入るか入らないかで、W杯の結果にも大きく影響が出る。ノーマークはできているので、勝つためには決めなきゃいけない。ディフェンスにも課題はありますが、オフェンスはリズムをつかむのは厳しい試合でした」と反省を口にした。

スロベニア戦で12得点12リバウンドを記録したジョシュ・ホーキンソン©Basketball News 2for1

3試合と成功率20%台 40%なら競り合える?

 この3試合における、日本の3Pスタッツは以下。

・アンゴラ戦→41本中11本成功(26.8%)

・フランス戦→44本中13本成功(29.5%)

・スロベニア戦→46本中10本成功(21.7%)

 世界トップクラスとの対戦が続く本番を想定し、フランス戦とスロベニア戦について見ていくと、2Pも含めた全体のシュート本数はいずれの試合もほぼ相手と同等だったため、格上相手でもスピーディなバスケでポゼッションの回数を増やすというチーム目標は達成できている。ただ、日本は3Pの試投数が2Pの2倍近くに達するため、上記のような成功率ではどうしても勝つことが難しくなる。

 これが、ホーバスジャパンが目指す「40%」だった場合の点数はどうなるか。本数の小数点以下を切り捨てて計算すると、フランス戦は82ー88(実際は70ー88)、スロベニア戦は92ー103(実際は68ー103)となる。それでも敗れていることに変わりはないが、3Pが高確率で決まるとチームに勢いが生まれ、ファストブレイクやディフェンスの強度の向上につながるため、上振れ要因になることは間違いない。

 つまりこの2試合をポジティブに捉えれば、「3Pを40%の確率で決め切れば世界トップとも戦える」ということを証明したとも言えるのではないだろうか。

3Pシュートの精度がワールドカップでの日本の生命線となる©Basketball News 2for1

積み上げてきた「自信」をボールに

 ただ当然ではあるが、世界レベルのプレッシャー強度や高さのある相手を前に高確率で3Pを決め続けることは容易ではない。日本はサイズ不足を補うためにオールコートプレスを度々仕掛け、ハーフコートでは大柄な選手に激しくインサイドで体を当てたり、目まぐるしくローテーションをしたりするため、後半にかけて体力の消耗が激しい。それもあってか、後半に3P成功率が下がっていく傾向がある。

 ただ、この3試合で3Pを10本決めた富樫主将はそれを言い訳にしない。

 「これだけ前から当たってプレスをしている中で、もちろんそういう状況はあると思いますが、相手も一緒で、それを言い訳にしていては何も始まらない。ディフェンスをハーフコートで守れと言われても高さとかのディスアドバンテージがあるので、やり切る以外ないと思います」

 チームとして3P成功率が上がらない原因を問われると、こう言った。

 「いろいろ試合の状況が変わる中でも、常にシュートの準備をして、自信を持って打つことが大事だと思います。練習も長くやってきていますし、練習量を自信に変えて、それぞれが反省を生かして本番を迎えたいと思います」

 一昔前まで日本では「シュートは水もの」との言葉が当たり前のように使われていたが、日本代表が短期決戦のW杯で世界トップから金星を挙げるためには、シュートは「決めないと勝てないもの」である。こうすれば入る、という明確な答えはもちろんないが、選手たちが積み上げてきた“自信”をボールに込め、高確率でゴールを射抜くしか道はない。

 いざ、”決戦の地”沖縄へ。「ホーム」沖縄アリーナの声援を力に変え、最大の武器である長距離砲を炸裂させて世界を驚かせたい。

(長嶺 真輝)

スロベニア戦後、会見で話す富樫勇樹©Basketball News 2for1

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