オーストラリアに89-90で惜敗
バスケットボール男子日本代表(FIBAランキング26位)は22日、きたえーる北海でオーストラリア(同5位)と国際強化試合の第1戦を行い、89-90で惜しくも敗れた。
20人が参加していた強化合宿を経て、パリ五輪の代表候補が16人まで絞られた今回の北海道大会。22日の第1戦、日本は昨夏のワールドカップ出場メンバーである河村勇輝、比江島慎、馬場雄大、吉井裕鷹、ジョシュ・ホーキンソンの5人がスターターを務める。
第1クォーター、ホーキンソンのフローターで日本が先制点を決めると、ベンチから出てきた富樫勇樹と富永啓生が合計15得点を挙げ、27-15と12点のリードをつかむ。続く第2Qも渡邉飛勇のダンクや富永の3Pなどで流れを譲らない日本が終始リードを保ち、47-38と9点リードで折り返す。
後半、オーストラリアの高さとフィジカルに苦しみ、徐々にファウルがかさんでいく日本。第3Qを61-58で終えると、第4Q残り6分58秒にはターンオーバーから相手に3Pを沈められ、66-68とこの試合で初めてのリードを許す。その後は一進一退の展開が続き、残り1分32秒で6点ビハインドの状況から馬場や富永のフリースローで同点まで追いついたものの、オーストラリアに勝ち越し3Pを決められ万事休す。パリ五輪に向けた強化試合は黒星スタートとなった。
日本はロスター入りした12人全員が出場し、富永がチーム最多の18得点、富樫が16得点4アシスト、ホーキンソンが15得点、馬場雄大が11得点8リバウンド4スティール、吉井が10得点を記録。カギとなる3Pはチームで12本沈めたものの成功率は34.3%と伸びず、リバウンドでも32-47とオーストラリアに差をつけられた。
トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)は試合後、「当たり前に勝ちたかった」と悔しさをにじませながらも、「これは本当にプレシーズンゲーム(のような感じ)。すごく勉強になりました」と前を向いた。
無得点も5分54秒の出場で4リバウンド
第1Q残り1分49秒。ある選手がコートインすると、会場が大きく沸いた。背番号27、山ノ内勇登である。
207㎝100㎏の恵まれた体格を持つ山之内は、NCAA(全米体育協会)1部のポートランド大でプレーする21歳。今秋からは同じくNCAA1部の強豪・ネバダ大への転校が決定しており、さらなる飛躍が期待されている。
今回の代表合宿では5月のディベロップメントキャンプからコールアップされており、激しい競争を勝ち抜いて北海道大会への切符を見事につかんだ。A代表デビューとなったオーストラリア戦では得点こそなかったものの、5分54秒の出場で4リバウンドを獲得。サイズの大きいオーストラリアのビッグマン相手でも奮闘を見せた。
「すごくうれしいです。ここまでこられて、北海道に連れてきていただいて、(ホーバスHCに)すごく感謝しています。試合にも出られてすごくうれしい」
試合後、ほっとした表情を見せる山ノ内。
「いい経験だった。リバウンドはよかったけど、自分ができることを全部は見せられなかった。(試合を見直して)ここがダメだったとか勉強して、もっと良くプレーできるようになりたいです」
ファウルトラブル反省「すごく勉強になった」
207㎝の長身ながら、複数のポジションをこなせる器用さや万能性を持つ山ノ内。代表合宿では「このサイズでこれだけ動けるんだという部分を見せたい」と意気込んでいたが、実際にプレーしてみると「(強みを出せたのは)ちょっとだけ。緊張していたから、考えすぎて時々悪いプレーをしてしまった」と反省点も見つかった。特に約6分の出場時間ながらファウルを4つ犯しており、トップレベルでプレーするにはディフェンス面でのアジャストメントやフィジカル面の強化が必須になってくるだろう。
「(NCAAの)ディビジョン1ではたくさん大きい選手いるから(ビッグマンとマッチアップする大変さ)少しは分かるけど、オーストラリアの選手(と対戦して)すごく勉強になりました。この試合からもっと学んで、いいプレーをゲームで出来るようになりたいです」
まだまだ若く粗削りな部分もある山ノ内だが、トム・ホーバスHCはそのポテンシャルを高く評価する。
「勇登は(ポジションが)4番、5番です。1ヶ月ぐらい勇登はやっているんですよ、ディベロップメントキャンプから。彼はすごくいいバスケをやっています。リムプロテクション、リバウンド、シュート、パッシングの判断も。今日は多分、初めてA代表に入ったから、ちょっと分からないけど緊張したかなと思っています。今日は普通の勇登じゃない感じです。本当にいい選手だと思います。いい選手になると思います」
憧れ八村塁&渡邊雄太と共闘「夢です」
世界のトップ12が集うオリンピックの舞台では、各国が強力なビッグマンを抱えており、日本はサイズの面で不利になることが予想されている。ホーバスHCがパリ五輪への課題としてリバウンドの強化を掲げているのもそのためだ。
ワールドカップではホーキンソンに大きな負担がかかっていたが、よりレベルの高いオリンピックではインサイドの層の厚みが必要になることは間違いない。リバウンドはもちろん、ディフェンスや外からのシュートなどでも貢献できれば、山ノ内が日本代表としてメンバー入りする可能性は十分にある。
約1か月後に迫ったパリ五輪。今月下旬からは渡邊雄太と八村塁のNBA組も合流する予定であり、8強入りという目標に向かって本格始動する。山ノ内と同様にアメリカの大学に進学し、NBAでも結果を残している渡邊や八村の存在は大きな刺激となっており、一緒にプレーすることが目標だという。
「(渡邊と八村は)NBA選手。いつも塁と雄太はテレビで見ていたから、目の前で見たら信じられないと思います。(パリ五輪で一緒にプレー)したいです。夢です」
12の代表枠からNBA組やワールドカップでの主力選手を除くと、残されたスポットは多くない。ここから来月上旬の韓国戦に向けて、代表争いもさらに激化していくことだろう。持ち前の万能性を武器に、山ノ内はアカツキジャパンのユニフォームをつかむことができるか。若きビッグマンの挑戦は続く。
(滝澤 俊之)