【バスケ日本代表】ジェイコブス晶と山ノ内勇登の“新生代”コンビ 強みを生かしパリ五輪でのプレー目指す
代表合宿で練習するジェイコブス晶(右)と山ノ内勇登©Basketball News 2for1
バスケットボールニュース2for1代表。スポーツニッポン新聞社の編集者・記者を経て、2020年に現メディアを立ち上げる。日本代表やBリーグからNBA、WNBAまで国内外さまざまなバスケイベントを取材。スポーツライターとしても活動している。

 来月26日に開幕するパリ五輪に向けて、都内で強化合宿を行っているバスケットボール男子日本代表。今月22日と23日に北海道で行われるオーストラリア戦、7月に都内で行われる韓国戦を経て、14人程度までメンバーが絞られていく予定だ。

 激しい代表争いが繰り広げられている中、注目を集めている若手コンビがいる。ジェイコブス晶山ノ内勇登だ。ともに5月のディベロップメントキャンプを経て、A代表の合宿に招集されている2選手である。

 渡邊雄太八村塁のNBA組、河村勇輝ジョシュ・ホーキンソンなど昨夏のワールドカップで活躍したお馴染みのメンバーが代表入りを期待される中、最年少の2人がパリ五輪での日本代表入りを狙う。

最年少20歳のジェイコブス©Basketball News 2for1

ともにNCAA1部でプレー ホーバスHC「経験させた方がいい」

 20歳のジェイコブスは203㎝のスモールフォワード。現在はNCAA(全米体育協会)1部のハワイ大でプレーしており、昨夏のワールドカップ直前合宿にも招集されるなど、将来の日本代表として期待されている選手の一人だ。

 21歳の山ノ内は207㎝のセンター。ジェイコブスと同様、昨シーズンはNCAA1部のポートランド大でプレーし、来シーズンは同じくNCAA1部の強豪・ネバダ大への転校が決定している。207㎝と長身ながら機動力に優れ、3Pシュートも軽々と決めることができる山ノ内もまた、将来を嘱望されているビッグマンだ。

 パリ五輪での8強入りという目標を掲げているアカツキジャパンだが、トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)はその目標を達成するための強化ポイントとして「シュートとリバウンド」を挙げている。世界的に見ればサイズで劣る日本代表にとって、ジェイコブスや山ノ内のようなサイズとシュート力があり、機動力にも優れるビッグマンはチームを助ける存在にもなりえる。

 ホーバスHCは「山ノ内勇登とジェイコブス晶はディベロップメントキャンプから。(A代表での活動を)経験させた方がいい選手もいる。あの2人だけじゃないですけど、ちょっと経験させた方がいいかなと思いますね」と合宿に招集した経緯を説明し、2人の成長に期待を寄せる。

トム・ホーバスヘッドコーチ
記者の質問に答えるトム・ホーバスHC©Basketball News 2for1

ジェイコブスは9キロ増で課題のフィジカル強化

 昨年はW杯前の代表合宿に参加していたものの、最終選考で惜しくもメンバーを外れていたジェイコブス。W杯での日本代表の躍進から刺激を受け、パリ五輪での代表入りの思いが強くなったという。

 「(W杯は)ハワイで見ていました。(試合が)夜中ぐらいだったんですけど、(日本の躍進は)すごく嬉しいし、僕は合宿で一緒に戦ったメンバーで、すごく近い感じがしたので。次のオリンピックの舞台で自分も(日本代表として)戦いたいなと感じた」

 日本代表入りをモチベーションに、自身の武器である3Pシュートに磨きをかけ、課題であったディフェンスやフィジカルの強化に努めた。ウェイトトレーニングに注力した結果、W杯前は93キロだった体重が102キロまで増加。「プロ相手にもフィジカルで負けていない。1年前と比べてそういう当たりが強くなっているというのが一番大きい」と自信をのぞかせた。

 ホーバスHCからはシューターとして「フロアスペーシング(を広げること)を一番求められている」といい、「一番大事なのはシュート。『毎回打てる場面があれば打ってください』ということをいわれています」と話す。代表合宿では「いい感じ」にシュートを決められており、コーチ陣へのアピールも上々だ。

記者の質問に答えるジェイコブス©Basketball News 2for1

動けるビッグマン山ノ内「細かい部分を頑張りたい」

 山ノ内もジェイコブスと同様にアメリカからW杯を見守っていたといい、「それ(日本代表入り)をモチベーションに頑張っていた」と振り返る。

 「ワールドカップのメンバーに入りたかったけど、それは叶わなかった。だからこそ、パリ五輪への思いが強くなりました。ディフェンスでしっかり守ること、リバウンドにしっかりと絡むこと、オープンのシュートをしっかりと決めること。細かい部分をしっかりと頑張りたい。チームには八村選手など得点を決められるメインの選手がいるので、そういった選手たちをしっかりと支えられるように頑張りたいです」

 207㎝の長身ながら、フォワードの選手にもマッチアップできるようなクイックネスが武器の山ノ内。チームにどのように貢献したいかという問いに対しては、「自分の万能性やこのサイズでこれだけ動けるんだという部分を見せたいです。僕のサイズがあって、これだけ動ける選手はなかなか日本にはいないと思います」と自信たっぷりに答えた。

 「日本代表で戦うことは自分の夢です。今まではここまで合宿に残ることができなかった。この夢をかなえるために、できることをしっかりやっていきたいと思います」

記者の質問に答える山ノ内©Basketball News 2for1

パリ五輪出場「夢をかなえられると思っている」

 22日から始まる北海道での強化試合を経て、代表選考も佳境に入っていく。7月からは渡邊や八村らNBA組も合流が期待されており、最終メンバー12人の枠を巡る争いはさらに激しくなるだろう。最年少コンビにとってはいばらの道ともいえる代表争いだが、ジェイコブスや山ノ内が見せるポテンシャルの高さは日本代表にとって大きな魅力でもある。

 「前に(代表合宿を)経験したことがあるということが、今の自信にすごくつながっていいます」

 ジェイコブスは話す。

 「オリンピックはスポーツの中で一番大きな大会なので、自分の中ではオリンピックに出たいという気持ちがある。何年か前に横浜ビー・コルセアーズに入ったときは、2028年のオリンピックをすごく目指していた。でも、1年前にU18から代表(合宿)に呼ばれて、その夢が思っているよりも近かった(と気づいた)。なので、2024年のオリンピックに、自分の中では『ここに入りたい』という気持ちが上がってきています。実際、合宿に来てからその夢も叶えられると思っています」

 代表経験が豊富なベテラン選手たちに混ざりながら、日本代表に新たな風を吹かせている2人。山ノ内は「ジェイコブスや僕などの若い選手たちもこの合宿ではよくプレーできていると思うので、僕たち2人も最後まで残れるように頑張っていきたいです」と意気込みを見せる。

 若手2人の奮闘を目にし、23歳の河村勇輝は「自分ももう若くないんだなと思った」と笑顔を見せる。河村に加え、ジェイコブスや山ノ内ら“新世代”の選手たちがパリ五輪でプレーする機会をつかむことができれば、その経験がその後の日本代表にとっても大きな収穫になるはずだ。し烈な代表争いを勝ち抜き、パリへの切符を手にすることができるか。若手コンビの成長に期待したい。

(滝澤 俊之)

シュート練習に励む山之内©Basketball News 2for1

関連記事

Twitterで最新情報をゲット!

おすすめの記事