クラブ史上ワーストから東地区首位に 福島ファイヤーボンズの大改革をけん引する渡邉拓馬GMとライアン・マルシャンHCが語るチームづくりの要諦
福島ファイヤーボンズの渡邉拓馬GM(左)とライアン・マルシャンHC©Basketball News 2for1
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 昨季の成績は15勝45敗でクラブ史上ワースト。そんなチームが今季、24勝4敗(第15節終了時点)で東地区首位を走っている。

 Bリーグ2部(B2)福島ファイヤーボンズの変貌ぶりは今季のサプライズの一つといってもいいだろう。今季から地元・福島県出身の渡邉拓馬氏がGMに就任し、ロスターを大幅に刷新。台湾リーグ2連覇の実績を持つライアン・マルシャン氏を指揮官に据えると、クラブ最多となる18連勝を達成するなど、快進撃を続けている。

 12月1日のライジングゼファー福岡戦ではBリーグ史上初となる4度のオーバータイムを制するなど、リーグの歴史に名を刻む戦いぶりを見せている福島。ロスターのほぼ全員が入れ替わったチームで、なぜここまで勝てているのか――。粘り強いチームを作り上げるキーマンとなった渡邉GMとマルシャンHCに話を聞いた。

(取材日:12月24日、※インタビューの一部を抜粋)

練習で笑顔を見せる福島の選手たち©Basketball News 2for1

渡邉GM「情熱を持った人を探すことが最優先だった」

ーー今シーズン、福島ファイヤーボンズのGMに就任した経緯は

渡邉拓馬GM 昨シーズンは京都ハンナリーズでGMをやっていました。契約更新のオファーが京都からありましたが、自分の中でなんとなく次に進まなきゃいけないような雰囲気もありつつ、とはいえあと数年京都でも…という考えもありました。そこでちょうど福島ファイヤーボンズの西田社長からオファーが届いて、それが自分の中で「おぉ」というスイッチが入った感じがあり、(昨シーズンの)チーム状況もあったので、「これはチャレンジしなくてはいけないな」という感覚になりました。京都も(昨季で)4シーズン目で(チームが)いい形になってきて、なぜかは分からないのですが何となく節目のような感じもしていた。自然と次の自分のやりがいというか、生きがいを選ぶタイミングで地元の福島からオファーがきたというのは、「まぁそういうことだな」と自分の中で解釈して決めた感じです。

ーー今シーズンのチームづくりで重視したことは

渡邉GM (福島県郡山市は)大都市ではないので、この福島にどれだけ情熱を注いでくれるか、どれだけ情熱を持ってきてくれる人がいるかというところをまず探さなければなりませんでした。そういったモチベーションが溢れているような、エネルギーが溢れているような選手、スタッフを探すというのが一つ。あとは、キャリアをもう一回右肩上がりにしたいとか、復活したいとか、そういう思いを持っている人を探さなければいけないというのが最優先でした。

インタビューに答える渡邉GM©Basketball News 2for1

ーー来シーズンから新リーグなどが開幕するが、今の日本のバスケットボール界についてはどう見ているか

渡邉GM 自分が代表だった時と比べるとバスケットボールを楽しくやる選手がすごく増えてきて、それがすごく嬉しい。世界との差ってそういうところだと思っていて、自分がGMになる前の普及活動をしていた時には、「どれだけバスケットボールを子供たちに好きになってもらうか」というのを課題にして全国各地をクリニックでまわっていました。

やっぱり、馬場雄大(長崎ヴェルカ)や富樫勇樹(千葉ジェッツ)、渡邉雄太(千葉J)、八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)、河村勇輝は「バスケット好きなんだなぁ」というふうにプレーしますし、たぶん海外の選手はその延長上でNBAやユーロリーグで活躍していると思う。自分たちの世代はちょっとやらされてたというか、怒られるからとか、そういうのが最初にきていたと思うので、そこを変えないと日本のバスケットの根本が変わらないと思っていた。

どれだけ指導者というか、大人が変わって、子供たちに接していけるかというのがキーだと思っていますし、いくらBリーグが人気が出たとしても、まだBリーグ(のチーム)がない地域や、あったとしても都道府県の奥の方だったりするところは本物の選手と出会う機会がない人がたくさんいる。そういうところにまで本物が、選手やOBが会いに行く回数を増やして、「バスケットって、スポーツって楽しいんだよ」というのを子供だけではなくて、保護者やコーチにも伝えることが必要だなと思っていました。

そういった意味では楽しくやってくれる選手が増えてきて、少しずつ広がっていると思いますが、世界と比べると普及の部分では、大人に対しての普及の仕方がまだ足りないのではないかなと感じています。大人になればなるほど頭が凝り固まってくるので、なるべく早くそういうことが大事ということを、協会やリーグから発信していくことで、もう少し深みのある日本代表チームになるのではないかと。

スペインとか韓国とか、中国とか、コーチや人が変わってもバスケットの軸があるような気がします。日本の場合はHCが変わると全部が変わるようなことを感じるので、そういった底辺の努力というか、そういうところがもっと必要なのではないかと感じます。

マルシャンHC「何もないところから積みあげて勝つ」

ーー福島ファイヤーボンズのHCに就任した経緯は

マルシャンHC 実はここ4、5年くらい、日本のいくつかのB1のチームと面談していました。ただ、タイミングがすごく大事だと思っていて、タイミングが合わず、なかなか日本に来ることができませんでした。

(福島の前に)台湾でニュー台北キングスのコーチをしていて、アジアの中でも強豪チームに育て、(台湾リーグの一つであるTPBLで)2年連続で優勝しました。(優勝するチームは)最初どのチームもチャンピオンシップレベルの、優勝できるようなロスターがそろっていると思われていますが、実はそうでもない。「何もないところから積みあげて勝つ」というのは本当に難しいのですが、それを実際に台湾で成し遂げて、2年連続で優勝しました。(優勝という一区切りの)そのタイミングで、日本に縁があって来ることになりました。

インタビューに答えるマルシャンHC©Basketball News 2for1

ーー18連勝というクラブ史上初の記録について、ここまでの成績は想像していたか

マルシャンHC 18連勝については、シーズン前に僕に「18連勝できると思いますか?」と聞かれたら、たぶん「無理だろう」と言うと思っています(笑)。ですが、実際に18連勝ができて本当に素晴らしいことですし、このクラブも今までそこまでいい成績を残したことがない中で、選手たち自身もおそらく18連勝なんてなかなかできない数字です。それを成し遂げたことが本当に嬉しいですし、シーズン序盤で達成するなんて誰も思っていなかったことなので、そうやって勝てたことが本当に嬉しいです。

ーーオン・オフの切りかえが大事だと思っている理由は

マルシャンHC オンとオフの切り替えは、バスケットボール選手としてだけではなく、人としても成長するために大事だと思っています。オンの時、仕事にきた時は頑張って仕事をする、逆にオフの時は家族と時間を過ごしたり趣味に時間を使ったり、そうやってバスケット以外のこと、仕事以外のことで自分の時間を持てる方が絶対仕事(オン)の時にそのクオリティーも上がると思っています。だからこそオンとオフの切り替えはすごく大事にしています。

(東北支局)

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