快進撃の長崎&名古屋D、北海道は「最大のサプライズ」 石崎巧氏が振り返るBリーグ2025-26シーズン序盤戦
(左から)名古屋ダイヤモンドドルフィンズの齋藤拓実、長崎ヴェルカのイ・ヒョンジュン、千葉ジェッツの渡邊雄太、レバンガ北海道の富永啓生©Basketball News 2for1
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 2025年11月27日、バスケットボールニュース2for1のYouTubeチャンネルにて、バスケットボール解説者の石崎巧氏をゲストに迎えた生配信が行われた。Bリーグ2025-26シーズンの序盤戦(18試合消化時点)を振り返る今回の配信では、東西各地区の上位チームを中心に、石崎氏ならではの視点で分析が展開された。

【西地区】新戦力がハマった長崎と名古屋Dの2強体制

 西地区は18試合を終えた時点で首位・長崎ヴェルカと2位・名古屋ダイヤモンドドルフィンズがともに16勝2敗と好成績を残している。石崎氏は両チームの躍進を高く評価した。

 平均92.6得点とリーグトップのオフェンス力を誇る長崎については、NBA経験者である新加入のスタンリー・ジョンソンの活躍を快進撃の要因に挙げる。「超一流の選手にとっては日本リーグへの適応期間はあまり関係ない」と石崎氏。個人能力の高さを評価し、「インサイド陣が外にストレッチすることで(他の選手の)ドライブが生まれ、スリーポイントにつながる。シンプルな破壊力がある」と分析した。また、アジア特別枠のイ・ヒョンジュンを含む全体的なサイズアップにより、「ゴール下のプロテクトに安心感が生まれ、ボールマンへの積極的なプレッシャーが可能になっている」と高く評価する。

 同じく好スタートを切った名古屋Dについては、アーロン・ヘンリー獲得が最大の成功要因だという。「開幕前の愛知セントラルカップでは齋藤拓実とのフィットに時間がかかると予想していたが、いい意味で予想外だった」と石崎氏は振り返る。3番ポジションにヘンリーを配置することで、全体的なサイズアップを実現。リバウンドが強化されたことに加え、「名古屋はもともとディフェンスの強いチーム。小さいながらも激しいフィジカルディフェンス。そこにアーロン・ヘンリーが加わり、スティールを狙うスピーディーなディフェンスがさらに機能している」と評価した。

名古屋Dのアーロン・ヘンリー©Basketball News 2for1

 4位・琉球ゴールデンキングス(12勝6敗)の開幕連敗については、「横浜BCが非常に調子良かった。どのチームにも勝てるような試合だった」と冷静に分析。「基本的な戦力は昨シーズンから大きく変わっていない。問題なく上位に行けるのではないか」との見通しを示した。5位・広島ドラゴンフライズ(11勝7敗)については「ビッグスリーで押していくスタイル」と表現。メイヨニックの帰化でビッグラインナップの形成が可能となり、インサイドが充実したが、「相手もスリービッグで来た場合、ミスマッチが作れない。日本人選手が他の強みをどう生かせるかがポイント。(その部分では)上位陣とはまだ差がある」と課題も指摘した。

 すでに昨年の総勝利数を超える勝ち星を挙げている滋賀レイクス(9勝9敗)については、「前田健滋朗HCがやりたいバスケットが一貫している」と評価。ペースを上げて3Pシュートを多投する現代的スタイルは長崎時代から継続しており、オフにはライアン・クリーナーなどスタイルにフィットする戦力補強に成功している。石崎氏は「ヘッドコーチのコンセプトと選手の特徴が合致するかどうかで結果は段違いに変わる」と強調した。

 ここまで7勝11敗と負け越している三遠ネオフェニックスについては、「スモールなスタイルでスリーポイント多投するチームは、短期的に見れば振り幅が大きくなる。序盤の負けは驚くことではない」と冷静な見方を示した。一方で最大の問題はけが人の多さだと指摘。特に「三遠はヤンテ・メイテンのチーム。彼が抜けるとチームのスタイルを維持できない」と語り、ゾーンディフェンスの長時間使用については「苦しい台所事情の表れ」と分析した。

【東地区】千葉Jはナシール・リトルが鍵 群馬も「安定感」

 東地区は千葉ジェッツ(15勝3敗)が首位、宇都宮ブレックスレバンガ北海道(ともに14勝4敗)が千葉Jを追う展開となっている。石崎氏が「最大のサプライズ」と評価するのが北海道だ。

 北海道について石崎氏は、開幕前から「チャンピオンシップに行けるレベル」と評価していたが、「宇都宮と同じ勝率でここまで来るとは予想していなかった」と驚く。成功の要因としては、ジャリル・オカフォーの加入を挙げる。「富永啓生がいることはもちろん大きいが、オカフォーのおかげで富永が得点を取れている。オカフォーがインサイドで脅威を与え、ディフェンスを収縮させるから外がうまくいく。実際、チーム全体のスリーポイント比率(33.2%)はリーグで下から数えた方が早い。インサイドが良くて勝っているチーム」と分析した。

 特にオカフォーへの評価は高く、「チームプレーヤー。あれだけの能力がありながら出しゃばらない。判断が良く球離れも的確。あのサイズと得点能力があって、あの判断ができるのはチームにとって大きなプラス」と絶賛。桜井良太GMの手腕も「素晴らしい補強」と高く評価した。

 千葉Jについては「昨シーズンからの強さに加え、ナシール・リトルの加入でより安定感・脅威性が増している」と評価。リトルについてはシーズン開幕前から注目しており、「ハイライト映像しか資料がなく勘でしかなかったが、実際にプレーを見ると日本にフィットしている。極端に言うとジェフ・ギブスっぽい。身長はスモールだが、フィジカルでフットワークもあり、NBAでやれるだけのスキルの幅広さがある」と称賛した。

千葉Jのナシール・リトル©Basketball News 2for1

 王者・宇都宮は昨季に続き、3P比率52.6%でリーグ1位になっている点に注目。「シュートの半分以上がスリーポイントという世界線が実現するとは思っていなかった」と石崎氏。「D.J.ニュービルは外からも打つし、警戒されたら中に入っていく。それに合わせてインサイドの選手が外に出てスリーポイントを決める。チームスタイルと選手構成の相乗効果が出ている」とその強さをひも解いた。

 8連勝中の群馬クレインサンダーズ(12勝6敗)については「安定感がある。ミリングHCはディフェンスの構築がうまい」と評価。「ヘルプサイドのポジショニング、ローテーションがスムーズ。ゾーンの用意や仕掛けの部分も整理されている」ケリー・ブラックシアー・ジュニアについては「中継点になってプレーメイクができ、ピックアンドロール後に自分で得点も取れるし、収縮させて外に出せる。判断の質が高い」と高く評価した。

下位チームに必要なのは「尖り」

 川崎ブレイブサンダース茨城ロボッツ秋田ノーザンハピネッツ(各3勝15敗)などの下位チームについては、けが人の影響に加え、資金面・リクルート面での劣勢を苦戦の要因に挙げる。

 また、チームのスタイルについても「王道のバスケットボールスタイルをやっていいのは、個人能力が最も高い最強のチームだけ。それ以外のチームはどこかで尖らないと超えられない」と指摘。「ものすごいディフェンスプレスをかけるとか、スリーポイントの比率を極端に高めるとか、何かしらの尖り方がジャイアントキリングには必要。下位チームにはその部分が見えにくい」と課題を挙げた。

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