【バスケ日本代表】「八村と渡邊に頼るバスケは勝てない」馬場雄大が語った“東京”の反省と必要な気構え 仏の224㎝・ウェンビー対策にも言及
日本代表の馬場雄大©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 まもなく開幕するパリ五輪に向け、バスケットボール男子日本代表(FIBAランキング26位)が11日、日本を発った。予選リーグのグループBに入った日本は27日にドイツ(同3位)、30日にフランス(同9位)、8月2日にブラジル(同12位)と対戦する。 決戦の時は近い。

 3年前の東京五輪ではスペイン(現在のFIBAランキング2位)に77ー88、スロベニア(同11位)に81ー116、アルゼンチン(同8位)に77ー97で3戦全敗。予選リーグで姿を消し、全体11位という悔しい結果に終わった。

 今回はNBAを主戦場とし、さらなる成長を遂げた八村塁渡邊雄太を筆頭に、富樫勇樹主将、比江島慎馬場雄大渡邉飛勇の6人が2大会連続の出場。そこに河村勇輝富永啓生ジェイコブス晶ら新進気鋭の若手が加わり、歴代最強の呼び声が高い。目標は予選リーグを突破しての決勝トーナメント進出、すなわち、過去最高のベスト8だ。

 とはいえ、今回も12カ国の中でFIBAランキングは下から2番目。格下を意味する“アンダードッグ”という立場は、東京五輪の時と変わらない。

 下剋上を起こすためには何が必要なのか。東京での悔しさを心身に刻んでいる一人の馬場が、パリでの戦いに向けた気構えや具体的な対策に言及した。

「チームとして戦って強豪国に勝つ」

 今月5日、有明アリーナ。

 韓国との強化試合1戦目を終え、メディアの囲み取材に応じていた馬場。八村と渡邊がまだ出場していない中、2人が不在の期間に他の選手たちで詰めていくべき事はあるか、との問いに、こう即答した。

 「正直、彼らが入ってもやることは今と変わらないです」

 ディフェンスで激しいプレッシャーを掛け、リバウンドを確保し、素早いトランジションでファストブレイクを出す。5アウトで積極的にペイントタッチし、フリーができれば迷わず3Pを狙う。「トム・ホーバス監督が求めるスタンダードをクリアすることが必要かなと思います」。淡々とした口調でそう言った。

 続けた言葉に、「やることは変わらない」というマインドの根源がうかがえる。

 「東京五輪の反省から、彼ら(八村と渡邊)に頼るバスケは勝てないということが証明されたので、チームとしていかに戦えるかが大事です。彼らどうこうじゃなく、チームとして戦って強豪国に勝っていきたいです」

2大会連続で五輪に出場する馬場©Basketball News 2for1

 自国開催ながら、一勝もできずに幕を閉じた失意の東京五輪。

 予選リーグで戦った3試合の平均出場時間は八村が37分33秒、渡邊が35分30秒。次いで多かったのが馬場の28分4秒であり、二大エースのプレータイムが突出して多かった。NBAプレーオフなど短期決戦で主力がほぼフル出場することはよくあるが、得点、リバウンドともに2人だけでチームの半分以上のスタッツを残した試合もあり、依存度が極めて高かったことは否めない。

 当然のことながら、他の選手の存在感が増せば相手はより守りにくくなる。八村と渡邊が使えるスペースも広がり、2人の得点力はさらに生きてくるだろう。

 馬場と同じく、ウイングでの活躍が期待される比江島も同様な気構えを見せる。以下は5日の韓国戦後のコメントである。

 「彼ら(八村と渡邊)がいようがいまいが、僕は変わらない。3Pは意識していますし、ドライブももっとうまくできたという反省があります。(パリ五輪では)彼らにマークが集中するのは間違いないので、その中で他の選手が決めていくと彼らの助けにもなる。2人が中心になるとは思いますが、自分も変わらず、アグレッシブにシュートやドライブをしていこうと思っています」

 11日にあった代表メンバー12人とホーバスHCによる出発前会見で、八村は「前回のオリンピックに出た比江島くん、富樫くん、雄太さん、雄大さん、飛勇。またこのメンバーでやれるのはすごく楽しみですし、若いメンバーの富永くんや河村くんも入った。今までは僕が1番年下だったですけど、年齢も上の方になって、上の年代としてチームを引っ張っていけたらいいなと思っています」とコメント。多くの選手の名前を口にしたことからも、チームで戦うという意識は共有されているのだろう。

10日に記者会見を行ったアカツキジャパン©Basketball News 2for1

仏の規格外の高さ想定「止まることができた」

 本番への気構えの他にも、馬場は自身に求められるプレーにも言及した。

 想定しているのは224cmの“ウェンビー”ことビクター・ウェンバンヤマ、216cmのルディ・ゴベアらを揃え、規格外の高さを誇るフランスである。韓国戦で意識したのは「止まること」だった。どういうことか。

 「ドライブに行っても、ランニングステップでシュートまで行ってしまうとウェンビーやゴベアに(ブロックで)合わせられてしまう。そこでちゃんと止まって、他の選手にフィード(攻撃できる状態の選手にパスを出すこと)するということをずっと練習してきました」

 相手ディフェンスを収縮させるためにペイントタッチの意識を高く持つことは重要だ。ただ、サイズの大きなチームを相手にどこまで深く進入するかは、状況ごとでの精度の高い判断が求められる。韓国戦の馬場は、2試合を合わせてわずか4得点。消極的に見えた人もいたかもしれないが、本人としては明確な意図を持ってのプレーだったのだ。

 「自分のマークマンにどうアタックをするかというところをすごく考えています。韓国はサイズが僕と似てる選手が多い中でうまくできない部分もありましたが、いつもだと流れてターンオーバーになってしまう場面でも止まれたので、やろうとしていることができたのは自分の中で良かったです」

 比江島と同様に「八村と渡邊にディフェンスが寄り、オープンショットは増えると思う。それを決め切れるかは一つ課題だと思っています」とも語り、オフェンスにおける自身の役割を見詰める。

 オリンピックで味わった悔しさは、オリンピックでしか晴らせない。本番に強い男として知られる馬場。強化試合で張った伏線を、パリの地で見事に回収することができるか。各選手が八村、馬場に負けない存在感を発揮し、“東京”との違いを出せれば、3年前に比べてチーム力が格段に上がることは間違いない。

(長嶺 真輝)

パリ五輪でリベンジを目指す©Basketball News 2for1

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