21日に全国で最も早く梅雨入りした沖縄。ひどい湿気は人々を陰鬱とさせるが、琉球ゴールデンキングスが横浜に降らせた“雨”は、多くの沖縄県民、琉球ファンの心を晴れやかにしたに違いない。
2戦先勝方式で行われるBリーグ2023ー24シーズンのチャンピオンシップ(CS)ファイナル第1戦が25日、横浜アリーナで行われ、西地区2位の琉球が同3位の広島ドラゴンフライズを74ー62で下して先勝。強度の高いプレッシャーディフェンスで先手を取り、さらに成功率45.5%で15本もの3Pの雨を降らせ、一度もリードを許すことなく快勝した。
クラブ初の2連覇に向けて好発進を切った琉球。第2戦は26日午後1時10分から行われる。
広島の“速い寄り”に対応 昨季優勝の経験も生きる
試合は今村佳太の3Pで幕開け。ジャック・クーリーのポストアップやアレン・ダーラムのドライブでインサイドを攻めながら、効果的にキックアウトし、岸本隆一や松脇圭志も長距離砲で続いた。第2Qの開始早々には、広島の帰化選手である河田チリジをファウル三つに追い込み、リバウンド争いでも優位に立った。
ディフェンスでは小野寺祥太が山崎稜をフェイスガードで守ったり、ビッグマンが高い位置でプレッシャーを掛けたりして、広島に度々タフショットを打たせた。
43ー25の大差で折り返し、第4Qには河田、ニック・メイヨ、ケリー・ブラックシアー・ジュニアの3ビッグに手を焼いたが、勝負所でまたも今村、岸本、松脇らが3Pを決め続け、追い上げを許さなかった。3Pの成功数は今村が5本、岸本は4本に上った。
チーム屈指のシューターながら、CSに入ってからシュートタッチに苦しみ、セミファイナルまでの6試合で3Pは1本のみの成功にとどまっていた松脇も3本を成功。ヘルプやローテーションが速い広島のディフェンスに対し、松脇はチーム全体として攻略できたことを高確率の要因に挙げる。
「試合前から、広島はオーバーヘルプというか、結構寄ってくるチームという話をしていました。そこをチームのみんなが認識していて、横から横のパスがすごい出て、それでいいシュートが打てたのかなと思います」
ダーラムや岸本、ヴィック・ローがドライブで仕掛けてからのキックアウトでフリーをつくる場面も多く、スカウティングがはまった印象だ。桶谷大HCが「セイムページ(同じ方向性でプレーできている状態)でしっかり相手のウィークポイントを突くことできました」と評価したように、琉球は高いレベルで共通認識を持てていたのだろう。
松脇と同じくセカンドユニットの牧隼利も3本中2本の3Pを決め、勢いを生んだ。「後から出てくるメンバーがシュートを決めたり、盛り上げることはチャンピオンシップでより大事になってくると思います。そこでチームがいい雰囲気になることは、僕たちにとっていいことです」と松脇。2人は昨シーズンのファイナルでも要所で優勝を呼び込む活躍をしており、「去年を経験している分、追い上げられても焦りとかはなかったです。我慢できていることは、前回のファイナルがチームとして生きているんじゃないかなと思います」と手応えを語った。
ローの“高速カバー”と松脇のフィジカルが生きる
CSに入ってからより磨きが掛かっている「攻めるようなディフェンス」も大きな勝因の一つだ。
序盤から高いディフェンス強度をセットした小野寺は「CSに入ってからガード陣が激しいプレッシャーを掛けられています。なぜそれができているのかというと、ビッグマンがハードに出てくれるからです」と語り、ビッグマンが高い位置からプレッシャーを掛け続けたことがチームディフェンスの精度を高めた要因に挙げる。
桶谷HCはビッグマンの献身的な守備に加え、フィジカルの強い松脇の貢献にも触れた。「ビッグマンが体を張ったと思いますし、広島が3BIGになった時のミスマッチシチュエーションで松脇が体を張り、ペイントエリア内で簡単なレイアップを決めさせなかった印象があります」。ミスマッチの場面をつくることが上手い広島に対し、ここでも対応力の高さを見せた。
指揮官が「今日はヘルプや寄りも速かったです」と評価した通り、全体としてディフェンスのローテーションもスムーズだった。特に印象的だったのは、ローのカバーディフェンスだ。カークやクーリーがスピードのミスマッチを突かれてドライブやダイブで交わされた時などに素早くゴール下に入り、何度もブロックに飛んでシュートを落とさせた。
岸本が「今日も自分たちのチームディフェンスが生きたと思いますし、その前の段階でそれぞれが責任を持って守ることができ、ローテーションがしやすくなりました」と振り返った通り、個のディフェンスとチームディフェンスが高いレベルで噛み合った。
第2戦へ「出だしの強度」と「3BIGへの対応」が鍵に
多くの点で広島の上を行った琉球だが、第4Qでは目に見えて流れが停滞した時間帯があった。河田を含めた広島の3BIGに対してオフェンスでボールの流動性が減退し、ディフェンスでは河田のゴール下へのダイブやオフェンスリバウンドからのセカンドチャンスポイントで得点を重ねられた。
第2戦に向け、桶谷HCも「第4Qで2BIG(クーリーとカーク)とヴィックになった時のオフェンスで停滞したり、ターンオーバーがあったりしました。あと後半は相手のオフェンスリバウンドとターンオーバーからの失点も増えたので、自分たちがしんどい展開に持って行ってしまったと思います。これが課題になっているので、もう1回修正して、明日の試合に臨みたいなと思います」と気を引き締める。
小野寺も同じ危機感を共有した上で、試合の出だしを勝利のポイントに挙げる。
「やっぱり第4Qみたいなやられ方は絶対にされてはいけない。明日の試合、最初から第4Qのような勢いで来られたら難しい試合になってくると思うので、また今日みたいな出だしで試合に入り、相手に1戦目と同じシチュエーションだと思わせるようなインテンシティの高さでやっていきたいなと思います」
12,969人もの大観衆が詰め掛けた第1戦。海を隔てた沖縄からも多くのファンが会場に駆け付け、「ゴーゴーキングス」の応援で声を枯らし、「横浜アリーナがホームのような雰囲気」(今村)で戦った琉球。セミファイナルの3試合と同様に、ベンチに入った12人全員がコートに立った。クラブ初の2連覇を懸けた運命の第2戦。チームが掲げる「団結の力」で、歴史的な一勝をつかみに行く。
(長嶺 真輝)