2018-19シーズンに当時B2だった信州ブレイブウォリアーズのヘッドコーチ(HC)に就任した勝久マイケルHC。ディフェンスからリズムを作るスタイルをチームに浸透させ、2020-21シーズンにはB1に昇格。昨季は28勝26敗(西地区5位)とチャンピオンシップ(CS)にあと一歩と迫る好成績を残した。
B1で迎える3年目のシーズン。「日々成長」をスローガンに掲げる勝久HCは、成長を続けるチームの「旅」をどのように捉えているのだろうか。昨シーズンの振り返りや今シーズンへの思い、新加入の生原秀将やサイモン拓海の印象などについて話を聞いた。
けが人続出の昨季「60ゲーム以上戦えるように準備を」
―まずは昨シーズンのお話から聞かせてください。昨シーズン28勝26敗ということで、貯金2でシーズンを終えました。収穫や課題などはありましたか。
役割が大きくなる新加入の選手たちが入って、もちろん新しいチームなので最初は少し時間がかかったと思うんですけど、彼らが我々のバスケットを理解した上で自分たちの良さができるようになってからは、とてもチームの調子は良くなりました。
そこからけが人が増えてしまい、(12月の)9連敗がやっぱり最後まで響いたシーズンだったと思います。けがはスポーツの一部ですけど、怪我しにくい体作りっていうのも1からやらなきゃいけないと思います。また一からしっかりと60ゲーム以上戦えるように準備をすることが大切になってきます。
上位チーム相手の勝率というのは決して良くはなかったので、その時「誰が怪我でいませんでした」とか、そういう試合もありましたけど、対戦相手によっては相手も同じ条件だったときもありました。なので、やっぱり日本一を目指すためには、もっともっと成長が必要で、一つ一つのディテールを40分続ける。そういったことは今年も大事だと思います。
新加入・生原秀将は「リーダーシップを持っている」
―ありがとうございます。そういったシーズン中でも、最後5連勝で終えられたとか、一昨シーズンよりも勝ち星を積み重ねてこられたという部分はどのように評価していますか?
「B1」1年目から修正してチームでやることを少しアジャストして、プラス新しい力が加わったので、大きく見てクラブとしての成長だったんですけど、ピンポイントでこのチームの成長はまだまだこれからだと思っています。
今年は去年新加入だった選手たちの2年目っていう意味ですごく期待しているのと、生原の加入っていうのは本当に大きいと思います。ずっと、「もっともっと(チームに)リーダーシップが欲しい」と思っていて、彼はリーダーシップを持っていると信じていますし、彼のハートとタフさはすごいと思っています。もちろんメンバーが出ていったことに対してとても悲しい気持ちっていうのもありながらも、生原が来てくれたっていうのは非常に大きいと思います。
―生原選手のお話がありましたが、勝久HCとは栃木時代からすごく良い関係性を築けていたと聞きました。どういった思いがあって生原選手に声をかけていたのでしょうか
(生原をチームに誘って)3回ぐらい断られたんですよ。3回ぐらい「来いよこいよ」「絶対いいと思うよ」って言って、3回目も断られて1回諦めて(笑)。1年飛ばしで今年もう1回誘って、ようやく来てくれました。
一緒に働いていたときは特別指定を終えたルーキーで、まだまだこれからっていう選手でした。そこからいろんな場所に行って、いろんなバスケットをして、ベテランになってきた。ですけど、まだまだ彼のポテンシャルは最大限に出ていないんじゃないかなと思っています。
もう1回、本当にリーグトップクラスのガードになるというマインドと自信を持って欲しい。いつも「僕なんかハッスルだけですよ」とか言うんですけど、本当素晴らしい選手だと思うので、自信を持ってプレーしてもらいたいですし、生き生きとしてやってほしいです。最初からずっとそのハートやタフさがあった選手なので、ここで何か新たなスタート、まだまだこれから、みたいなプレーを見せてほしいと期待しています。
―生原選手のことはいつから「いい選手だな」と思われていたんですか
栃木(現・宇都宮)にいたときに、その時アシスタントコーチとして練習前後のワークアウトとか、彼と一番一緒にやったんじゃないですかね。そのときから、上手なのは分かっていましたし、あのとき(栃木は)ポイントガードの層が非常に厚かったので、彼が思うようなプレータイムはもらえなかったのはしょうがない部分もあったんですけど、やれる選手だということは分かっていました。自主練習の量も多かったですし、必ず体を張って、必ずハッスルをして、腐ることなくプレータイム関係なしにいつもハートを持って戦っていたので。そのときからその部分が本当にいいなと思っていました。
新人サイモン拓海にも期待「シュートは抜群にいい」
―サイモン拓海選手も新加入ということでインタビューさせていただいたら、今年の6月に勝久HCと初めてお会いしたとお話がありました。その時の印象などを聞かせていただけますか
6月に「Tokyo Samurai Showcase」があったんですけど、その前に彼のことを知ってからグアム代表の試合を何試合か見させてもらいました。その試合では29点くらい得点をとっていて、とにかくボールを触ったら打って、打ったら入って。もうこの子はピュアシューターだなっていうのが伝わってきました。ディフェンスでも頑張ってはいたので、オファーするつもりで準備をして、ショーケースに行きました。実際(プレーを)見ないといけないので、実際見て話をしてみて、オファーは予定通りという感じです。
その夜、自分と久山コーチと井上コーチと拓海と拓海のエージェントと5人で食事しながら我々のバスケの話をしたりして、オファーをしました。その時、とても印象的だったのが、封筒を出すじゃないですか。ウォリアーズのロゴの入った封筒があって、中にオファーが入っていて、それを彼に渡して。プロが夢だったこの若い選手の夢が叶う瞬間に立ち会うことができて、彼のあのときの笑顔がすごかったんですよ。言葉にも出していて、「嬉しすぎて、言葉が出ない」とか、「今お父さんに電話したいお母さん電話したい」とか。我々3人もすごく嬉しくなっちゃって、その夢が叶った瞬間を目撃したことがとても印象的でした。とてもいい子だと思います。
―サイモン選手の役割としては、シューターとしての期待が一番大きいですか?
はい。ルーキーですし、しかも経験が多いルーキーというわけでもないので、正直結構時間はかかると思います。いろいろ学ばなきゃいけないことがある中で、たくさん頭を使ってシーズン中きっと悩んだりもすると思います。それはルーキーにとって通らなくてはいけないプロセスではあるんですけど、シュートに関しては本当に抜群にいいと思っているので、そこだけは他の部分でたくさんミスがあったとしても、最初から誰にも負けないぐらいの自信を持って、考えずにとにかく打ってほしい。それはもうトレーニングキャンプ1週目から既に彼には伝え続けていることです。(ルーキーシーズンは)多分、タフなプロセスになると思うんですけど、そこだけは最初からバンバンスリーポイント打ってほしいです。
―最後にファンやブースターへのメッセージをお願いします
今年も我々は成長を続けられるように、もっともっと楽しんでいただけるように、チームとして頑張っていきます。昨シーズンも良いときも悪いときも応援してくださって、今までもずっとそうですけど本当に感謝しているので、今年もきっとアップダウンもある旅になると思いますが、また一緒に戦っていただければと思います。
近い将来、新B1というものができるときには、もう本当にソールドアウトな会場を作っていかないといけないんですけど、皆さんのお力も絶対に必要なので、本当に一緒に全員で信州一丸となってこのクラブを日本一にしていきましょう。よろしくお願いします。