河村勇輝が見せた「覚悟」 横浜ビー・コルセアーズが満員のホームで大きな白星
横浜ビー・コルセアーズ河村勇輝©Basketball News 2for1
バスケットボールニュース2for1代表。スポーツニッポン新聞社の編集者・記者を経て、2020年に現メディアを立ち上げる。日本代表やBリーグからNBA、WNBAまで国内外さまざまなバスケイベントを取材。スポーツライターとしても活動している。

 Bリーグ1部第3節は10月14日から16日にかけて各地で行われ、横浜ビー・コルセアーズはホームで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦した。

 15日に行われた第1戦は名古屋Dのアップテンポなオフェンスを止められず84-91で敗北。翌16日の第2戦は前半で12点ビハインドと苦しい展開になるも、堅いディフェンスと22得点12アシストを記録した河村勇輝を中心としたアグレッシブなアタックで第3クォーター(Q)に逆転。第4Qも集中力の高いプレーを続けた横浜BCが88-78で第2戦を制し、今シーズンホーム初白星を手にした。

強豪・名古屋ダイヤモンドドルフィンズを後半26得点に抑える

 名古屋Dの破壊力のあるオフェンスを止められるかどうかが勝利の鍵だった。

 第1戦を終えた時点で、名古屋Dの平均得点は90.4。リーグNo.1の攻撃力を誇るチームを相手に、第1戦では91失点、フィールドゴール成功率54.2%、スリーポイントシュート成功率42.9%を許し、あと一歩のところで勝利をつかむことができなかった。

 続く第2戦。第1戦と同じく小気味よく得点を重ねていく名古屋Dを相手に、横浜BCは河村やチャールズ・ジャクソンを中心にオフェンスを組み立て食らいついていく。

 第1Q終盤にはキャプテン森井健太の左コーナーからのスリーが決まり、28-26とリードを奪ってクォーターを終える。第2Q、両者譲らず一進一退の展開が続くも、名古屋Dは須田侑太郎やコティ・クラークのスリーが決まりだし、徐々にリードを広げていく。残り44秒には速攻からクラークがダンクを叩き込み、40-52と横浜BCは12点ビハインドで試合を折り返すこととなった。

シュートを決める河村©Basketball News 2for1

 勝負の第3Q。序盤、クラークの連続スリーで42-58とこの日最大となる16点のビハインドを背負うも、そこから横浜BCのスイッチが入る。河村が切れ味鋭いドライブから名古屋Dのディフェンスを崩し、中へ外へパスを供給。森川正明がこのクォーターだけで12得点を記録するなど攻撃をけん引すると、チーム一丸となって粘り強い守備で名古屋Dの得点を12点に抑え、65-64と逆転に成功。第4Qも攻守に隙のないプレーを見せ、満員の観客にホーム初勝利を届けた。

第3Qに12得点と気を吐いた森川正明©Basketball News 2for1

タフだった序盤戦「勝敗以上に得るもの多い」

 横浜BC・青木勇人HCは試合後の記者会見で「どれだけ(名古屋Dの)トランジションポイントを減らせるかっていうところが今節のテーマだった。後半に関してはトランジションポイントをだいぶ減らすことができ、自分たちのディフェンスを遂行することができた。平均90得点のチームを(後半)26得点に抑えたなかで、自分たちはしっかりとアタックし続けられたところは大きな収穫だったと思います」と試合を総括。「今までだったらずるずると負けたり、10点離れたときに下を向きそうなこともあったと思いますけど、うちの今のチームは10点開いても戦い続けられる、そんなチーム構成になっている。しっかりとそれを証明してくれた、選手による素晴らしい勝利だと思います」とハードワークを見せた選手たちをねぎらった。

記者の質問に応じる横浜BC・青木勇人HC©Basketball News 2for1

 開幕からの3節で広島ドラゴンフライズ(アウェー)、島根スサノオマジック(アウェー)、名古屋Dと西地区の強豪チームとの対戦が続いた横浜BC。2勝4敗ながら、負け試合でも最後まで接戦を演じるケースが多くあり、チームとしての成長が感じられる序盤戦となっている。

 ホームでの勝利で締めくくった強豪との3連戦について「収穫は大きかった」と青木HCは振り返る。

 「勝敗以上に得るものが多かった。自分たちでできることとできないこと、改善しなきゃいけないところ、(強豪チームとも)しっかり戦えるところというのをしっかりと表現することができた時間帯もたくさんあったと思います。

欲を言えばそれを勝利に繋げたかったという思いはありますけど、最初に開幕節からの対戦相手を見たときに『おお、タフだな』という印象がありました。そこに対してどうやって準備していくか、この開幕節から続く試合をどうやって戦っていくかというのは、今シーズンを占う試合だったと思います。

そこでぶらさずにしっかりと自分の戦い方を追求できた、遂行できたというところは、選手たちも見えてきたものがあるんじゃないかと思っています」。

チケットは連日売り切れ 森川「幸せな時間だった」

 選手たちの頑張りを後押しするように、ホーム開幕節の横浜国際プールにはファンが集結。2日間ともチケットは完売となり、連日約4,000人の観客が全力でチームをブーストした。4Q、名古屋Dの選手のフリースロー時には割れんばかりのハリセンがアリーナにこだまし、シュートが外れるとさらに大きな拍手が響き渡る場面も。

森川は満員のファンの前でのプレーについて「幸せな時間だった」と笑顔で振り返る。「これだけの応援を受けて、『これを無駄にしたくない』っていう気持ちがあったので。昨日(第1戦)は負けてしまいましたけど、今日(第2戦)は何とかカムバックして勝ち切ることができたので、ほっとしてるというのが正直な感想です」と胸をなでおろした。

満員の横浜国際プールではファンがビーコルカラーに会場を染める©Basketball News 2for1

齋藤拓実とのマッチアップ「絶対やられないぞと」

 チーム最多22得点12アシストと大車輪の活躍を見せた河村勇輝。プロとして挑むことになった今シーズンは、ここまで6戦で平均15.2得点、11.2アシスト(リーグ1位)、2.5スティール(同2位)と素晴らしい活躍を見せている。

 獅子奮迅の活躍を見せている河村について青木HCは「一言で表すと『覚悟』だと思います」と分析。「このチームで勝ちたいという気持ちでこのチームを選んでくれると思いますので、誰かに勝たせてもらうのではなくて、自分が勝たせる。そんな気持ちでプレーしているというふうに思います」とエースに最大限の賛辞を送った。

 この試合では、前日の第1戦で20得点7アシストの活躍を見せていた名古屋Dの齋藤拓実をぴったりとマークし、11得点5アシストに抑えるなどディフェンス面でも貢献した河村。横浜BCは河村を中心に齋藤を徹底的に狙い、7ターンオーバーを誘発。相手の司令塔のリズムを狂わすことで、ディフェンスから勝機を見出していった。

齋藤拓実(左)へのディフェンスでも貢献した©Basketball News 2for1

 日本を代表する若手ポイントガードのマッチアップについて河村は「今日もやられた部分たくさんありましたし、やっていて本当に学べるものがたくさんある」とコメント。

 「昨日(第1戦)すごくやられて、自分の中ではもう完敗でした。ガード同士の対決だけでいえば『もうやられたな』という感覚があったので、『今日は絶対やられないぞ』と。(名古屋Dは)齋藤拓実選手を起点としているバスケットをしているので、ディフェンスでしっかりとマークして、その起点をうまく使わせないようにしようという気持ちで(第2戦に)臨みました。やられた部分もあると思うんですけど、こういった選手とマッチアップできてすごく自分の中でもいい経験だったと思います」と齋藤へのリスペクトを示した。

青木HC「まだスタート地点」目指すのはCS出場

 赤穂雷太やパトリック・アウダなど主力選手のケガに見舞われながらもタフな序盤戦を勝利で終えた横浜BC。強豪相手の勝利に手ごたえを得るも、チームが目指す目標にはまだまだ遠い。

 「これは全くまだスタート地点なので、まだまだここで満足するような選手たちではない」と指揮官はチームの様子を語る。「バスケットの面白さ、横浜ビー・コルセアーズの面白さを伝えるのが(チームの)仕事。この2日間でその部分を少しでも見せられたんじゃないかというふうには思っています」と自信をのぞかせた。

 今シーズンの目標は「チャンピオンシップ(CS)出場」。この序盤戦では、昨季CSに出場した島根や名古屋Dを相手にも十分戦えることを証明した。スローガンの「BEAT ALL」のもと、若き海賊たちは幾多の荒波を超えていくに違いない。

(滝澤俊之)

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