新潟アルビレックスBB、敵地で2戦大敗も”成長の肥やし”に 若手中心のチームが描く将来像
指示を送る新潟アルビレックスBB澁田怜音(左)©Basketball News 2for1
沖縄を拠点とするフリーランス記者で2for1沖縄支局長。沖縄の地元新聞で琉球ゴールデンキングスや東京五輪を3年間担当し、退職後もキングスを中心に沖縄スポーツの取材を続ける。趣味はNBA観戦。好物はヤギ汁。

 開幕戦以来、白星から遠ざかっている中地区の新潟アルビレックスBBは15、16の両日、アウェーの沖縄アリーナで昨季準優勝の琉球ゴールデンキングス(西地区)に挑んだ。

 結果は第1戦が53-93、第2戦が65-99といずれも大敗。昨季B1の22チーム中最下位(7勝45敗)で、今季はロスターの半分ほどが新加入選手で若手も多く、再建中の新潟は地力の差を見せつけられた格好だ。それでも第2戦でキャリアハイの21得点を挙げた木村圭吾は「下を向いてたら去年と同じになる。前を向いて頑張らないといけない」とポジティブさを失わない。「若い選手が多いので、こういう試合はすごいいい経験になる」とも語り、強豪との対戦を成長の”肥やし”にしてチームの成熟度を高めていく考えだ。

ターンオーバー減少 2戦目でチームオフェンス改善

 第1戦は29得点、14リバウンドを記録したジャック・クーリーを中心に琉球の強烈なインサイド陣にゴール下を支配され、チーム全体のリバウンド数で30対44と大きく水を開けられた新潟。強度の高いディフェンスを仕掛けられてオフェンスのリズムも悪く、ターンオーバーは22に上り、40点差で敗れる大きな要因となった。

 第2戦も序盤から追う展開となったが、第2Qに2-3ゾーンやマッチアップゾーンなどを織り交ぜたチェンジングディフェンスで琉球の攻撃リズムを狂わせることに成功。その間に木村やケヴェ・アルマらが得点を重ね、このクォーターは21-13と優位に立った。

 後半、ディフェンスの強度を上げ、ゾーンを崩してスリーを高確率で沈めた琉球に突き放されたが、第1戦に比べてターンオーバーは4つ減少。フリーのコーナースリーを演出する場面も多く、一晩でチームオフェンスの改善が見られた。

苦しみながらも琉球のディフェンスに立ち向かった©Basketball News 2for1

 2戦目終了後の会見では、平岡富士貴HCも手応えを語った。

 「1戦目は一人一人が『自分がやろう、やろう』となり、決められた場所ではなく、ボールに近付き過ぎてしまったり、オフボールでボールの受け手の駆け引きが全くなかったりしましたが、2 戦目はボールをもらうまでの動きが改善できました。ピック&ロールからいいダイブもありましたが、そこにボールを入れられるスキルのある選手がなかなかいないので、それができるようになるとさらに中、外のバランスが良くなると思います」。

 一方、敗因については「後半の最初で相手のセカンドチャンスから入ってしまった。その後にやりたいオフェンスが遂行できず、ターンオーバーから走られた。ガードがもっと流れを理解しながらコントロールできるようにならないとこういう展開になるのかなと思います。あと、琉球さんが強度を上げてきたところに対応できなかったのが一番の敗因です」と分析し、力の差を感じたようだった。

木村圭吾キャリアハイ21得点「ドリブルでクリエイトできた」

 大敗の中で気を吐いたのは、21歳の木村だ。1戦目は「相手は昨シーズンファイナルまでいってすごくディフェンスがいいチームで、プレッシャーに負けてしまった」と無得点だったが、2戦目はスリーを6本中5本沈めてキャリアハイの21得点。「今日は取られてもいいから自分で行く、という意識でやりました。ドリブルから得点をクリエイトできたので、そこは成長したかなと思います」と納得の表情を浮かべた。

 主将でPGの澁田怜音が第1Qでファウル3つとなり、出場時間が限られて木村がゲームコントロールする時間帯も増えたが、「正直1番、2番、3番を交代交代でやるのは結構難しいところもあったんですが、ハーフコートからプレッシャーを受けてもあまり取られなかった。ターンオーバーをしてしまうこともありましたが、自信にはなりました」と振り返った。

第2戦ではキャリアハイ21得点と気を吐いた木村圭吾©Basketball News 2for1

 チームオフェンスについては、指揮官と同様に前日からの改善を実感していた。

 「前日はみんながボールに集まってスペーシングが悪いとコーチ陣から指摘があったので、今日はコーナーで我慢してプレーをつくると話をしていました。前日に比べてトップでピック&ロールをしてからボールマンのスペースが広がったので、コーナーにパスを捌ける部分があった。PGで出ていて『ボールが回ってるな』と思ったシーンもあったので、良かったと思います」。

©Basketball News 2for1

開幕前からトラブル続出 5連敗中も前向く

 新潟は今オフ、地元出身でチームの象徴的存在だった佐藤公威が現役を引退し、さらに司令塔だった納見悠仁が川崎に移籍。変革を迫られる中、今シーズンに向けて杉本天昇や澁田ら将来性のある若手を中心に補強して再起をかけた。

 しかし、開幕を目前に立て続けに不運が襲う。一度は選手契約を締結し、新加入の予定だった身長213センチのセンター、ジョニー・ハミルトンが入国前に一時音信不通となり、9月末にまさかの契約解除に。さらに同時期、「スラムダンク奨学金」の第13期生で、高校、大学と米国でプレーしていたルーキーのモサク・オルワダミロラ・雄太・ジョセフが全治4週間のケガを負った。 193センチの長身ガードで、即戦力として期待されていただけに痛い離脱となった。

 ホームで行った開幕戦の島根戦を82-73で勝利し、いい滑り出しとなったが、その後は5連敗と 苦しい状況が続く。それでもチームは、ひたすらに前だけを見詰めている。

 所属2シーズン目となる木村は「トラブル続きではありますが、開幕戦は勝てましたし、下を向いてても仕方がない。負けているけど、チームの雰囲気は悪くありません。反省はしながらも、みんな気持ちの切り替えはできているので、次に向けての心配はありません」と心強い。22、23の両日にある京都戦も敵地に乗り込むが、「アウェーが続き、ケガ人もいる中で体的にしんどい部分はありますが、頑張るしかない。2連勝し、その後のホーム戦で勝てるように練習したい」と意気込みを語った。

インサイドのDFが鍵「1対1で守れるタフさを」

 平岡HCも、現有戦力でいかに戦っていくかに頭をひねっている。特に課題となるのは、高さやフィジカルのある相手に対して、いかにインサイドを守るかだ。

 「次の(外国籍)選手が決まってるわけではないので、しばらくこの状況が続く中で現状のチーム状況を考えると、ダブルチームやゾーンディフェンスを入れながら戦っていくということになります。インサイドの選手が体を張ってないわけではないですが、まだまだソフトな部分もありました。1対1で守れるタフさを身に付けないといけないし、その中でもやられるようならダブルチームをどこで仕掛けるか、誰から仕掛けるかを考えていければと思います」。

©Basketball News 2for1

 シーズン序盤で優勝候補の一角と対戦できたことも、チームにとっていい刺激になったと見ている。指揮官が続ける。

 「若いチームと言われていても、目指すところは琉球さんのような上位チームとしっかり戦えるようになることです。あの強度でバスケができないとBリーグでは上位に行けないと改めて痛感しました。これだけの大差での負けを経験したので、これで何も感じられない選手たちではないと思っています。次回はやってくれると信じて、また頑張りたいです」。

 2018-19シーズンに中地区優勝(45勝15敗)を果たして以降、毎シーズン勝率が5割を割り、低迷が続く新潟。まだ長いトンネルの中にいるが、有望な若手が多く集まる中、今季のクラブビジョンには「人が育つクラブを創る」を掲げる。ひたむきに課題と向き合い、トライ&エラーを繰り返していけば、自然と浮上のきっかけはつかめるはずだ。

(長嶺真輝)

Twitterで最新情報をゲット!

おすすめの記事