富山グラウジーズ、ホーム連敗も上田隼輔ら若手が見せた明るい未来
富山グラウジーズの上田隼輔©Basketball News 2for1
バスケットボールニュース2for1代表。スポーツニッポン新聞社の編集者・記者を経て、2020年に現メディアを立ち上げる。日本代表やBリーグからNBA、WNBAまで国内外さまざまなバスケイベントを取材。スポーツライターとしても活動している。

 Bリーグ1部は16、17日に各地で第31節が行われ、富山グラウジーズはホームで宇都宮ブレックスに連敗。通算成績を20勝31敗とし、2021-22シーズンのチャンピオンシップ進出の可能性が絶たれた。

富山グラウジーズのジュリアン・マブンガ©Basketball News 2for1
富山グラウジーズのジュリアン・マブンガ©Basketball News 2for1

主力4選手欠場で若手の出場時間増

 苦しいチーム事情が試合結果にも反映された形となった。

 新型コロナウイルスなどの影響で、ジョシュア・スミス、小野龍猛、晴山ケビン、飴谷由毅の4選手が欠場となった富山。エースのジュリアン・マブンガも出場時間制限があるなど、万全とはいえない状況の中で粘り強く戦い続けるも、強豪・宇都宮相手にインサイドを制圧され完敗。4連勝の後に悔しい連敗となった。

 「チームとしては非常に苦しい状況だった。4人がいなかったことで、サイズ的に厳しかった。選手たちはできることをしっかりやってくれたかなと思う」。

 第1戦の試合後、富山の浜口炎ヘッドコーチは選手たちを称えた。

富山グラウジーズの浜口炎ヘッドコーチ©Basketball News 2for1

特別指定の野崎由之と上田が躍動

 厳しい連敗となった富山だが、収穫もあった。

 今シーズンは36歳の阿部友和、水戸健史、松井啓十郎の3選手をはじめ、主力選手が高齢化していた富山。スミスら主力4選手が欠場となったことで、若手メンバーの出場機会が増加した。

 特別指定の野崎由之は2試合合わせて約24分出場、8得点を記録。同じく特別指定として加入した上田隼輔も2試合ともに16分以上プレーし、第2戦では自己最多となる9得点をあげるなど、B1の上位チーム相手にも戦えることを証明した。

特別指定選手として活躍した富山グラウジーズの野崎由之©Basketball News 2for1
第2戦で自己最多となる9得点を記録した上田©Basketball News 2for1

 昨季の特別指定選手で、今季は3ポイントシュートの成功率が48.8%と驚異的な成績を残している上澤俊喜も「特別指定の2人が特に果敢にアタックしていてよかった」と後輩たちの活躍に目を細める。

富山グラウジーズの上澤俊喜©Basketball News 2for1

「いい場面で試合に出られるように頑張りたい」

 第2戦の試合後、会見場に姿を現した上田。

 「僕自身がルーキーなので、アグレッシブにやっていこうと考えていました。チームとしては主力の4人がいない中で、いるメンバーで少しでも勝利に近づくようにやっていこうと話していました。負けはしたんですけど、全員の力で戦ったという部分では戦えたんじゃないかと思います」と胸を張った。

 第1戦では8得点、第2戦では9得点を記録するなど、積極的なアタックや献身的なディフェンスが光った上田。浜口HCには「そういう部分をどんどん出していったらいい」とアドバイスされていたという。

 「僕に与えられている役割は点を取ることではなくて、ルーズボールやディフェンスなどをアグレッシブにやっていくこと。少しでもプレータイムを獲得できるように、いい場面で試合に出られるように頑張っていきたい。昨日(第1戦)と今日(第2戦)で10分以上試合に出られたことがいい経験になりました」と充実の2試合を振り返った。

試合後、記者からの質問に答える上田©Basketball News 2for1

「聞く力」 B1上位チームとの対戦で見えた課題

 強固なディフェンスを武器に、Bリーグ優勝の経験もある宇都宮との対戦を経験したことで、新たな課題も見つかった。

 「大学バスケと違って技術の部分や、人間性などバスケ以外の部分でもプロの世界のレベルの高さを痛感しています。宇都宮さんは上位のチームなので、体の使い方やシュートなど技術の高さを試合に出ることで痛感しました。ディフェンスの当たり方でも、まだまだだなと思いました。そういう部分を真似していければなと思います」。

 そんな躍動を見せる若手選手たちが更なるステップアップを遂げるため、「身につけてほしいスキル」があると浜口HCは話す。

 「試合が終わってからも彼らに伝えたんですけど、『聞く力』をもう少し身につけてほしいです。『チームでどうしなきゃいけないのか』『コーチがどうしてほしいのか』ということを考えられるようになるといい。このBリーグに来たということなので、持っているものはすごくいい選手たち。『聞く力』をつけて、それをコートで出せるようになるとすごくよくなっていくんじゃないかなと思います」と期待を込める。

 「やっぱり若い選手はどうしても『得点を取ること=活躍した』というふうになってしまうのですが、『そうじゃないんだよ』ということを私がコーチの間は彼らに教えていかなきゃならないと思っています」。

会見で記者の質問に答える浜口HC©Basketball News 2for1

目標は「日本代表やBリーグオールスター」

 B1という最高峰の舞台で、少しずつ手ごたえをつかみ始めた富山の若手選手たち。見据えるのはローテーションメンバーとしての定着、そして更なる高みだ。

 「今は程遠いですけど、近い将来は僕も日本代表とかBリーグオールスターに選ばれるようなプレイヤーになっていきたいと思っています」と上田は語る。

 「自分の技術としてはまだまだなんですけど、そういうプレイヤーに近づいていけるようにこのB1という素晴らしい舞台で、チームの中や相手チームのいいところをどんどん吸収していければなと思います。このチームだったら外国籍が1番目のオプションになると思うので、そこからの派生の自分のプレーとなるので、まずはチームオフェンスを狙いつつ、自分が活きる場所を見つけていきたいです」。

 ベテラン選手やBリーグ上位チームとの対戦を経て成長を見せた富山グラウジーズの若手選手たち。この終盤戦での経験を、来シーズンの更なる飛躍につなげる。

(滝澤俊之)

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