Bリーグ1部(B1)は20日、各地でレギュラーシーズンの第26節が行われ、中地区3位の川崎ブレイブサンダースはホームのとどろきアリーナで同地区首位の三遠ネオフェニックスと対戦。川崎は第1クォーターに藤井祐眞が3Pショット3本を沈め9得点、第2Qには野﨑零也が10得点を挙げるなど、53-41で折り返す。後半は第3Qに一時3点差まで差を詰められるも、再びランで引き離し、最終的には101-78と大勝した。
川崎は藤井が自己最多タイとなる3P6本を決め22得点9アシスト、2月3日の京都ハンナリーズ戦以来およそ1カ月半ぶりに復帰したジョーダン・ヒースが16得点8リバウンド、野﨑が15得点、ロスコ・アレンが15得点、ニック・ファジーカスが11得点と5選手が二桁得点を記録した。
先発起用の野﨑零也15得点「誰が出ても強度高く」
2016-17シーズン以降、中止となったシーズンを除いてチャンピオンシップ(CS)に皆勤賞の川崎ブレイブサンダース。だが、今季はここまで24勝19敗で中地区3位、第26節を終えてCS圏外に位置するなど、苦しいシーズンを過ごしている。
シーズン開幕直後こそ12勝2敗とスタートダッシュに成功したものの、その後は主力のファジーカスやヒースらが相次いでケガに見舞われ、Bリーグ開幕以降チーム初となる5連敗を二度経験した。レギュラーシーズン17試合を残してCS圏外にいるのは初めての経験であり、文字通り負けられない戦いが続いている。
そんな中、同地区首位の三遠相手に100点ゲームで勝利をつかんだ今節。カギとなったのは、チームの「変化」だった。冒頭で触れたとおり、前半に試合の流れを作ったのは1Qに9得点を挙げた藤井と2Qに10得点を挙げた野崎のガードコンビ。特に野崎は今季わずか5度目となる先発に抜てきされ、23分26秒の出場で15得点(いずれもシーズンハイ)と素晴らしい活躍を見せた。そんな野崎の姿に触発されたかのように、同期の飯田遼も3Pを2本沈め、約40日ぶりの出場で存在感をアピールした。
試合後、佐藤賢次HCは「バイウィーク期間取り組んだことは、チーム内で競争すること」だったと話す。終盤戦は各チーム出場選手が固定化されていく傾向にあるが、川崎は特に長年チームに所属する主力選手が多いチーム。長期間にわたって同じメンバーでプレーをしていると、どうしても競争意識が薄れがちになる。マンネリ化打破へ、そしてCS進出に向けてチームに発破をかけるため、佐藤HCはチーム内での競争を促したのだろう。
実際にバイウィーク中の競争で存在感を発揮した野﨑や飯田にはプレータイムが与えられ、チャンスを最大限に生かした。佐藤HCもその点については高く評価している。
「スタメンに抜擢した(野﨑)零也もそうですし、久しぶりに登録した(飯田)遼もいいところを見せてくれました。今日登録しなかった益子も練習でバンバンいいプレーを出して、チーム内競争も激しくなって、そこはいい効果かなと思います。また、練習、試合の1つ1つが大事なので、いい時間を積み重ねていければと思います」
続けて、「(野﨑、飯田、益子らが)練習でもバチバチにやりあって遠慮せずにやっていたので、(藤井)祐眞も練習中熱くなってそういうものが試合にいい効果を生んだと思います」と語り、チーム内の激しい競争がチーム全体の活性化につながっていることは間違いない。
三遠戦で活躍を見せた野﨑、飯田にも同じようにチーム内の競争意識について聞いてみた。
「バイウィークは1人1人の競争意識を持つことが大事ということで、誰が出ても強度高く保たないといけないというのは皆感じていますし、練習してきたことがこの試合に出たかなと思います」(野﨑)
「プレータイムを勝ち取るためには、チーム内の競争をまず勝ち上がらないといけないという部分はありますし、だからといってミスを恐れていてはもったいないと思いますし、いい結果にはつながらないと思います。自分にできるディフェンスとスリーポイントを思い切ってやろうと準備して試合に入ったことはよかったなと思います」(飯田)
チーム内の競争意識が高まり、選手一人一人が危機感を持ってプレーするようになったことは、終盤戦のチームの成長へとつながるだろう。
今季引退のファジーカス「CS進出が最大の目標」
初年度から昨シーズンまで全てのシーズン(2019-20短縮シーズン除く)で40勝以上を記録し、CS進出を果たしている常勝軍団の川崎。だが、長年チームを支え、今シーズン限りでの引退を発表しているニック・ファジーカスもチームの現状には危機感を抱いているようだ。
「(今シーズンは)いつもとは違った状況です。いつもは地区首位を争ったり、地区首位をどう守り切るかがいつもの川崎です。ただ、今シーズンは色々なアクシデントもあり、現状ではCSには出られない状況です。今はどうにかしてCSに進出することが最大の目標であり、考えるべきことだと思っています。あと何試合で引退、何試合残っているというふうに考えるのではなくて、あとどれくらい勝てばCSに出られるのか、何をすればCSに出られるのかを考えながら日々過ごしています」
年々レベルが上がり、チーム数も増加しているB1でCSに進出するのは簡単なことではない。特に今シーズンは混戦を極めており、現時点で24チーム中14チームが勝率5割以上を記録するなど、例年以上にCS争いも激しくなっている。
とはいえ、CS進出圏内にいる同地区のシーホース三河とは3ゲーム差、ワイルドカード下位の島根スサノオマジックには1ゲーム差と好位置につけている川崎。特に島根とは直接対決でタイブレーカー(同じ勝率になったときに順位が上になる権利)を勝ち取っており、三河とも直接対決を2試合残しているため、まだまだCS進出のチャンスは十分にある。
今まではファジーカスや藤井がチームをけん引する場面が多かったが、今シーズンはロスコ・アレンやトーマス・ウィンブッシュ、野﨑ら新加入選手が活躍を見せ、勝利に貢献する試合も多い。常勝軍団の川崎が、“新陳代謝”によってもう一段階成長することができるか。ファジーカスのラストシーズンを飾るため、川崎がCS進出に全てをかける。
(吉本 宗一朗)