琉球ゴールデンキングスが接戦に強いワケ チームに浸透する自己犠牲の精神
大阪戦で活躍を見せた琉球ゴールデンキングスの岸本隆一(右)©Basketball News 2for1
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 Bリーグ1部(B1)は6日、各地で第10節が行われ、琉球ゴールデンキングスはアウェーのおおきにアリーナ舞洲で大阪エヴェッサと対戦。試合は終始拮抗した展開が続き、終盤まで大阪がリードを保っていたが、2点ビハインドの残り28秒に岸本隆一が3ポイントシュートを沈め、74-73と逆転。続くディフェンスのポゼッションでは小野寺祥太が値千金のスティールからのワンマンレイアップ。76ー73で試合終了を迎え、前節のシーホース三河戦に続き劇的な逆転勝利となった。

劣勢でも勝ち切れる“経験の力”

 2試合連続で終盤での逆転勝利を手にした琉球。序盤は劣勢ながら第4Qに逆転する試合もしばしばあり、冷静な試合運び光る。昨シーズンに優勝を経験している選手が多く在籍しており、勝負どころを心得ていることも要因の一つだといえるだろう。

 桶谷大ヘッドコーチ(HC)は終盤の試合運びを「接戦になったときはこのチーム(琉球)は、誰でもアグレッシブにシュートを決める勝負強さがある」と評価。接戦を勝ち切るチーム力については「僕は(接戦を制せるポイントは)ディフェンスだと思っていて、結局点数を取っても守れなかったらずっと点差は縮まらないですし、やっぱり一番必要なときに2ストップ、3ストップできるっていうところが僕たちの強さかなというふうに思っているので、シュートが入らなかったしんどい展開にはなりながらも、そういった時間帯に連続ストップが作れるというところは自分たちの強みかなと思っています」とディフェンスの重要性を力説した。

 この日、勝利を決定づける3Pを沈めた岸本は、現状について「よく言われる我慢というか、そういう忍耐的な部分かなと思います。あとは劣勢になっても(選手たち)それぞれがしっかり味方の良さを理解しているので、自分が何とかしてやるというよりも、流れが悪いときこそいかにチームメイトの良さを引き出すか、流れが悪くてもそういうメンタリティで試合を通してプレーできたところが、ここ最近クロスゲームになっても何とか勝ちに繋げられているかなと思います」と分析。アンセルフィッシュなプレーができているチームに手ごたえを感じているようだ。

 「チームとして大きな土台としてやっぱりこれがあるないっていうのは今後戦っていく上で、すごく大きな差を生むと思うので、勝ちながら自分たちのメンタリティみたいなものをより強固なものにしていけたらいいかなと思います」

記者会見で話す岸本©Basketball News 2for1

ケガ人の復帰で本来のラインナップに

 今シーズン、開幕前からケガ人が相次ぎ、なかなかフルメンバーが揃わなかった琉球。約3週間のバイウィーク(休止期間)を経て、夏から戦列を離れていた渡邉飛勇や、約2ヶ月の間試合に出場していなかったヴィック・ローが復帰し、ここ数試合は本来のラインナップでプレーすることが出来ている。

 大阪戦では牧隼利からパスを受けた渡邉が豪快なアリウープダンクで今季初得点を記録。改めて日本人ビッグマンとしての高いポテンシャルを見せつけた。桶谷HCは「復帰して何試合かしかやってない中で、あのようなすごいアリウープダンクを決められるというのはチームにすごくエナジーを与えてくれる」と渡邉を称賛。

 「マッチアップする相手によって相性は絶対あると思うので、ショーン・ロング選手みたいにガンガン来るタイプに対しては、もう少しコンタクトをしっかりできるようになっていかないといけないかなと思います。彼にはポテンシャルがまだまだあるので、だからこそそういったところを求めていきたいと思っています」とさらなる成長へ期待を寄せた。

今季初得点を決めた渡邉飛勇©Basketball News 2for1

 また、この試合でフィールドゴール成功が12本中2本に終わったローについては、まだ本調子には戻っていないと指摘する。

 「ヴィックに関してはやっぱり2ヶ月試合出ていなかったというのもあって、本人はなかなかリズムが取れなくて考え込んでしまっているところはあります。2ヶ月休んでいたというのは結構なブランクがあるので、もう少し僕たちも周りも、本人も我慢しながら少しずつ少しずつステップアップしていけばいいかなと思っています」

 復帰したてということもあり、プレーのクオリティには改善の余地があるものの、チームへのフィットやケミストリーの面では問題ないようだ。岸本が話す。

 「ヴィックもそうですし、アレックス・カークも、一番キングスが何を大切にしてきたのかとか、どういうメンタリティ戦っていくのか、ディフェンスはどういうことをしていくのかっていうことをすごく理解しようという姿勢がチームメイトにもいい部分として伝わっていると思います」

 たとえ本調子ではないとしても、チームへの理解を深めようとする姿勢がチーム全体の成長につながっている。岸本が「チームの幅というのが、今少しずつ、また広がってきたかなという感覚です」と語るように、ようやくそろったメンバーで試行錯誤しながらも勝ち星を重ねられているのはポジティブな兆候だ。

ケガから復帰したヴィック・ロー©Basketball News 2for1

琉球が大切にしている「互いを尊重し合う精神」

 「大きなところで言えば、『尊重し合う』ということですかね」

 岸本が例に挙げたのは、前述のローやカークが理解しようと努めているという「チームの信条」だ。

 「バスケットの試合は、どうしても点数が多く入れる選手が目立つのですが、そこに至るまでに、どうみんなが関わっているのか。もちろん数字に出ない部分もありますが、その部分でチームメートに感謝の気持ちを持ってプレーできるかできないかっていうのは、やっぱりキングスでプレーすることにおいてすごく重要な要素だと思っています」

 チームワークを大切にし、アンセルフィッシュなプレーを貫いたからこそ獲得できた優勝リング。その重要性を誰よりも理解している岸本だからこその視点だ。

 「協調性とか、似たような言葉がいっぱいあると思いますが、(選手)それぞれがしっかり尊重し合って、より自分の良さを出していく。自分の足りない部分を助けてもらう。それが大きなチーム力というものを生んできたと思います。うまくいかないときに隣の選手をしっかり自分たちの輪の中に引き込んで、戦っていくということをずっと続けてきた結果が今に至ると思っているので、そこは大きく変わらないと思いますし、これからもより大切にしていけたらいいな思います」

 ケガ人によるラインナップの入れ替わりなどがありながらも、ここまで13勝4敗と激戦区である西地区で2位につけている琉球。ケガから復帰した選手たちの“伸びしろ”があることに加え、チームのフィロソフィーはすでに浸透している。タフなスケジュールが続く12月でチーム力を高め、さらなる成長を見せてくれることだろう。

(田名 さくら)

©Basketball News 2for1

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