Bリーグ2023-24シーズン開幕からおよそ一か月。1部(B1)はここまで9試合を消化し、西地区は8勝1敗の大阪エヴェッサを筆頭に5チームが7勝以上を挙げるなど、混戦を極めている。
激戦区の中で、3勝6敗(地区7位)と後れを取っているのが広島ドラゴンフライズだ。昨季はB1昇格後チーム史上最多となる41勝を挙げ、初のチャンピオンシップにも進出した広島だが、今季は220㎝のカイ・ソットが開幕直前に負傷離脱。ドウェイン・エバンスらその他の外国籍ビッグマンのコンディションが万全とはいえず、司令塔の寺嶋良が日本代表としてアジア大会に参加していたこともあり、ファイティングイーグルス名古屋との開幕節で2連敗を喫するなど苦しいスタートとなった。
そんな広島に吉報が届いたのが10月26日。昨季から練習生としてチームで活動していたチリジ・ネパウェが日本国籍を取得し、リーグ登録が「外国籍選手」から「帰化選手」へ変更となったのだ。その結果、ソットのインジュアリ―リスト入りによって空いていた広島の帰化・アジア特別枠を埋めることができるようになり、選手契約を締結。登録名も「河田チリジ」へと変更し、晴れて日本人としてプレーすることが可能となった。
インサイドのテコ入れが急務となっていた広島にとってこれ以上にないタイミングで現れた“救世主”。デビュー戦となった第5節横浜ビー・コルセアーズ戦での活躍とともに、河田がチームに与えるインパクトの大きさについて触れていく。
28日横浜BC戦でデビュー インサイドで存在感
28日の横浜BC戦。第1クォーター残り2分25秒、日本人として初めてコートに足を踏み入れた河田チリジ。アイザイア・マーフィーのフリースローがリングに弾かれると、いきなりオフェンスリバウンドをもぎ取り、リングにねじ込む。この日は横浜BC・河村勇輝の終盤の活躍もあり76-80で惜敗したものの、河田は12分51秒のプレーで7得点9リバウンド(うちオフェンスリバウンドは5)とインサイドでの存在感を十分に発揮した。
試合後、記者会見に登場した河田は「(日本人として出場できて)とても気分がよかったです。昨シーズン丸々を練習生として活動していたので、プレーができず辛かった。またコートに戻ることができてうれしかったです」と日本人としてのデビュー戦を振り返る。自身の強みについては「オフェンス・ディフェンス両サイドでのリバウンドとインサイドでの存在感。ディフェンスではビッグマンを抑えることができること」と語り、「チームを助けることができてよかった」とおよそ1年ぶりの公式戦出場への手ごたえを口にした。
カイル・ミリングHCは新ビッグマンの活躍について「チリ(河田)は素晴らしいスタートを切りました。彼は非常にフィジカルで強さがあります」と評価。期待する役割については「たくさんリバウンドを取ってフィジカルにプレーし、ペイントを制すること」と語り、「今日(28日)はそれをよく遂行してくれました」とねぎらった。
リバウンドとディフェンスでアドバンテージ
リバウンドとディフェンス。河田に期待される役割は明確だ。広島はエバンス、ケリー・ブラックシアー・ジュニア、ニック・メイヨと3人の外国籍を擁するが、それぞれアウトサイドのシュートもうまく、3Pラインの外でプレーすることが多い。インサイドで河田が奮闘することで、その他の選手たちもより快適にプレーできることだろう。
28日は敗れはしたものの、リバウンドでは横浜BCの33に対して広島は48本を獲得(オフェンスリバウンドでは9対18)。90-65と大勝した29日の第2戦でも横浜BCのリバウンド数を9本上回った。また、ペイント内の得点でも第1戦で(44対20)、第2戦で(48対22)と圧倒。
黒星を喫した22日の宇都宮ブレックス戦(リバウンドで34対42、ペイント内得点で24対38)や25日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦(リバウンドで34対49、ペイント内得点で40対36)と比べてアドバンテージを取ることが出来ている。相手の2FG%(2ポイントショット成功率)でも前述の宇都宮戦(69.0%)や名古屋D戦(60.5%)と比べて、横浜BCとの2試合では45.6%に抑えることに成功。早くも“河田効果”が随所に現れていることが分かる。
スペーシングに課題もビッグラインナップは「助けになる」
河田を含めたビッグラインナップについては「チリが出た(28日の)後半の時間帯ではビッグマンが多すぎてスペーシングがうまくいかなかった」(ミリングHC)と課題も浮き彫りになったが、間違いなくチームとしての“厚み”が増した広島。
「これからは間違いなく彼が我々の助けになってくれるでしょう」
自信に満ち溢れた言葉で締めくくった指揮官の明るい表情は、広島の逆襲を予感させるものだった。
(滝澤 俊之)