新戦力と“原点回帰”で今季初2連勝の秋田ノーザンハピネッツ ここから巻き返しなるか
秋田ノーザンハピネッツの古川孝敏 ©Basketball News 2for1
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 Bリーグ1部(B1)は約3週間の中断期間を経て、11月30日から12月3日にかけて各地でレギュラーシーズンの第9節が行われ、秋田ノーザンハピネッツはアウェイのホワイトリング(長野市)で信州ブレイブウォリアーズと対戦。28日に行われた第1戦を83-64、29日に行われた第2戦を80-70で勝利し、今季初の2連勝を飾った。この結果、秋田は第9節終了時点で5勝11敗とし、東地区5位に浮上した。

カーターとライスナー 新外国籍2人がフィット

 今シーズンの秋田は順調な滑り出しとはならなかった。熊谷航赤穂雷太ら有望な選手を新たに加え、昨季からのステップアップも期待されていた秋田。しかし、バイウィーク前は3勝11敗に終わり、得点力やディフェンスのインテンシティの低さなどが課題が挙がっていた。

 得点面に関しては、昨季の平均得点が17.6得点でクラブリーダーであったスタントン・キッドが信州へ移籍。チームの平均得点も、昨季の78.6得点(リーグ14位)から70.0得点とリーグ最下位に転落した。今季新たに加入した外国籍選手であるジェフリー・クロケットロバート・ベイカーⅡに期待がかかったが、それぞれ平均5.3得点、8.9得点とオフェンス面での貢献が足りず、両者ともにシーズン途中での契約解除となった。

 そんな現状を変えるべく、バイウィーク中に新たに2名の外国籍選手を獲得。秋田でのプレー経験もあるハビエル・カーターとヨーロッパでプレーしていたタナー・ライスナーを新たに加え、信州との2連戦に挑んだ。

 この補強が早くも功を奏すこととなる。第1戦ではチーム戦術にも理解のあるカーターがチーム最多の18得点9リバウンド2ブロックショット、ライスナーが13得点6リバウンドとチームをけん引。翌第2戦では、カーターが10得点7リバウンド2スティール、ライスナーが3ポイントシュート5本を含む、34得点10リバウンド2スティールと大活躍。今季初めて2試合連続で80得点以上をマークし、アウェイで貴重な連勝をつかんだ。

 前田顕蔵ヘッドコーチ(HC)は「ほっとしている。嬉しい」と安堵の表情。第2戦に獅子奮迅の活躍を見せたライスナーについては「とにかく自信を持って打ち続けてほしいだったり、思い切ってやってほしいということを伝えていた」とし、「しっかり身体を張ってハードワークができる。彼が入って間違いなくスティールが増えている。非常に貢献度の高い選手」と賛辞を惜しまなかった。

新加入のハビエル・カーター©Basketball News 2for1
信州との第2戦で34得点を記録したタナー・ライスナー ©Basketball News 2for1

見つめ直したディフェンスのアイデンティティ

 バイウィーク前までの秋田の最重要課題は得点力の向上であったが、前述したようにディフェンスも課題として挙げられていた。スタッツで見てみると、昨季のディフェンシブレーティング(DRtg:100ポゼッションでの平均失点数)が104.8(リーグ6位)であったのに対して、今季は105.6(同8位)とリーグ内での順位を落としている。

  秋田は前線からプレッシャーをかけてボールを奪い、速い展開で得点を重ねるスタイルを得意とする。しかし、スティール数で見ても昨季の7.3(同4位)、一昨季の8.8(同2位)に対して、今季は6.8(同10位)と秋田のディフェンススタイルが体現できているとはまだまだ言えない数字である。1試合当たりの平均ポゼッション数を測るPACEでも昨季の4位から今季は13位に順位を落とすなど、相手のターンオーバーから速い展開に持ち込めていないことが秋田のオフェンスにも影響を与えていた。そういった課題があったことを踏まえて、「自分たちのディフェンスのスタイルは何なのか。原点に戻ってというか、もう一度そこの部分を練習していた」(前田HC)とバイウィークに改善を図ったという。

 その結果、第1戦ではスティールが9本、ターンオーバーからの得点が29得点。翌第2戦は、スティールが14本、ターンオーバーから22得点を挙げるなど、秋田の持ち味が存分に発揮された内容となった。

 「2日間通して20点以上ターンオーバーから得点を取れたことは秋田らしさが出たと思っている。流れが悪くなってもディフェンスで我慢しよう我慢しようとチームでまとまってできたことが勝利の要因だと思う」と指揮官が手ごたえを口にするように、少しずつ秋田のアイデンティティが戻ってきているようだ。

記者会見で話す前田顕蔵HC©Basketball News 2for1

秋田を支えるキャプテン 古川孝敏の存在

 移籍が当たり前のプロスポーツの世界において、築き上げたチームスタイルを継承・体現していくことは容易なことではない。その中で秋田には中山拓哉をはじめ、長谷川暢保岡龍斗など長年チームに在籍しているメンバーが多い。キャプテンを務めて3年目になる古川孝敏もそのうちの一人である。

 「常にリーダーシップを持ちながら、コート上でチームをまとめてくれる」と指揮官から信頼を寄せられている古川は、大事な局面でシュートを決めるプレーでチームを救うだけでなく、コート内外で声を出し続けてチームにエナジーを与えられる選手だ。序盤戦、チームがなかなか嚙み合わないときでも積極的にチームメイトとコミュニケーションを取り、声をかけ続けた。

 「チームがよくなるように自分ができることを最大限できたらいいなと思っている。よくも悪くも自分がどう振る舞うかが、かなりチームに影響してくる部分は大きいと思う。試行錯誤しながら、なんとかチームのプラスになるように頑張ってやっている途中です」

記者会見で話す古川 ©Basketball News 2for1

 古川のキャプテンシーが苦しい状況のチームを支え、新たなメンバーが加入したとしてもチームとして団結できている要因になっていることは間違いない。

 困難な状況下でも初の2連勝を掴んだことに対して古川は「正直ミスはたくさんあったが、なんとか今はチームとして前を向いていきたいという思いが個人的にはある。もちろん改善しなければいけない部分はある中でも、しっかりとみんなが自信を持ってプレーをしていくことが大事だと思う。この2戦を次の水曜日ゲームに繋げていきたい」と語り、さらなる成長を誓った。

 バイウィーク中にチームの立て直しを図り、今季初の2連勝を掴んだ秋田ノーザンハピネッツ。第10節は同地区2位の宇都宮ブレックスと対戦する。新たな戦力も加入し、チームのアイデンティティを取り戻しつつある秋田。宇都宮戦を勝利し勢いをつけ、ここから巻き返しを図りたいところだ。

(芋川 史貴)

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