激動のオフを乗り越えた”新生”信州ブレイブウォリアーズ 勝久HC「“信州一丸”で特別なことを成し遂げたい」
信州ブレイブウォリアーズの勝久マイケルHC©Basketball News 2for1
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 22日から24日にかけて、第99回天皇杯全日本バスケットボール選手権2次ラウンドが全国8会場で開催された。Bリーグ1部の信州ブレイブウォリアーズはホームのホワイトリング(長野県長野市)で愛媛オレンジバイキングス(B2)を66-59、しながわシティバスケットボールクラブ(B3)を75-63で下し6回戦に駒を進めたが、今季からB1に昇格した長崎ヴェルカに64-97で敗れた。

 昨季のメンバーから8選手が入れ替わるなど大きくチームが変化した信州は、10月7日と8日にホームで茨城ロボッツを迎え、開幕戦を戦う。

新加入・星野京介が天皇杯で躍動 攻守でチーム支える

 長崎戦、今シーズンからチームに加入した星野京介はプレシーズンゲームに引き続きスタメンで出場。相手のハードなプレッシャーに対して果敢にリングにアタックし、第2クォーター(Q)にはバスケットカウントを獲得するなど10得点をマークし、チームに熱と勢いを与えた。またディフェンスでは身体を張った激しいプレッシャーをかけ続け、相手のオフェンスのリズムを崩すといった場面もあった。

 そんな活躍ぶりについて勝久マイケルヘッドコーチ(HC)は試合後のインタビューで「5対5もひとつひとつの練習ドリルもちゃんとゲームに繋げようと、毎日集中して取り組んでいる選手。クイックネスもあって身体も強くてドリブルもつけるのでポテンシャルがある」と評価。

 また星野は「信州に移籍してきて、マイケルさんからハンドラーなど色々な役割を任せてもらえて、少しずつだが相手を見ながらバスケットができるようになってきた。後半相手がアジャストしてきたときに何も対応ができなかったので、細かいところまでこだわってしっかり練習していきたい」と自身のプレーを振り返った。

新加入の星野京介©Basketball News 2for1

チーム完成度はまだまだ「バスケットは習慣のスポーツ」

 長崎ヴェルカとの試合を振り返ると、信州は生原秀将が脳震盪の影響でインジュアリーリスト入り、新加入のスタントン・キッドデオン・トンプソンは「登録手続き遅延のため」ロスターに名前を連ねなかった。そんな中、前半は48-47とリードをして折り返したが、第3Q残り1分27秒で大黒柱のウェイン・マーシャルが負傷交代するとチームは失速。後半ではわずか16得点しかスコアができず終わってみれば33点差の大差で完敗した。

 信州の指揮官として6シーズン目を迎えた勝久マイケルHCは「前半アグレッシブなディフェンスプレッシャーをアタックすることができていたが、後半はターンオーバーが増えた。ウェインを戻さなかったあとの時間帯は、彼みたいな主力がいないときに、できることと、やらなければならないことを遂行するほどのセイムページ(※チームが同じ方向を向いていること)ではないことが証明された。これがいま我々がいる場所なので、やるべきことの理解を深めていかないといけない証拠でもあった。『3連戦の3日目だから』とかではなく40分間やるべきことをやるっていうのが課題の1つ」と総括。

 続けて「もちろん選手たちは(反省やスカウティングを)聞いていて、それを遂行しようとしていたが、バスケットは習慣のスポーツ。開幕まで2週間あるので、我々の目標である日々成長することをシーズンを通して、本当に良い習慣をつけるためにやっていかないといけない。よいところもたくさんあった3日間だったが、課題や練習に対する意識もみんな分かった3日間でもあった」と天皇杯3日間の収穫を述べた。

新加入キッド「チームとして正しい方向に進んでいる」

 今季はエリエット・ドンリーや星野、練習生から契約を勝ち取った小玉大智山本楓己といったエナジー溢れる若手選手が多く加入。B2優勝の立役者で、5季ぶりにチームに戻ってきた石川海斗、昨季は秋田でエースとして活躍したキッドや経験豊富なトンプソンなどのベテラン勢、昨季韓国リーグ(KBL)で新人賞を受賞した24歳のロン・ジェイ・アバリエントスなど、楽しみなピースが新たにやってきた。昨季の大半をケガで欠場した大黒柱ウェイン・マーシャルも復帰し、既存選手と新加入選手がいかにケミストリーを築けるかがカギとなる。

 今季で信州8年目の生え抜き選手である三ツ井利也は「他のチームと比べて全然完成度は違う。(開幕までの)2週間、危機感を持ちながら自分たちのアイデンティティを見つめ直してやれるかどうかはとても大事なので、チーム全体で意思統一をしながら開幕に向けて準備していきたい」と危機感を口にしていたが、表情は決して暗くはない。新加入のキッドは「チーム全員が揃い、毎日ハードにプレーしています。コーチのフィロソフィーや決まり事を学んでいるところではありますが、『日々成長』して、チームとして正しい方向に進んでいることは間違いないです。試合ではいいプレーをお見せしたいと思います。開幕戦が待ち切れません」と徐々にチームとしてまとまったきた手ごたえを口にする。

新加入のスタントン・キッド©Basketball News 2for1

いよいよ開幕「このメンバーでよかった」

 昨季29勝30敗で中地区3位の成績を残したチームは、今オフに主力選手の多くが退団。他のチームに比べて今季の編成も苦しんだことから、チーム状況を厳しく思っているファン・ブースターも多い。確かに、チームを支えていた熊谷航、前田怜緒、岡田侑大の「三銃士」、日本代表での活躍も記憶に新しいジョシュ・ホーキンソン、チームを支え続けた大黒柱の一人であったアンソニー・マクヘンリーなど主力が去った影響は大きいだろう。

 しかし、勝久HCは「最終的にこのメンバー(でシーズンを迎えられること)はよかった」と自信を見せる。Bリーグの中でもトップクラスに緻密な戦術を組み立て、難易度の高い遂行力を選手に要求する勝久HCのバスケを理解するのはどの選手にとっても容易ではない。実際、勝久HCも「一から(のチームづくり)なので、本当にそれは今キャンプで感じています。戦術以前に、『日々成長』がどういうことなのか、どういうメンタリティを持って毎日(練習に)来なければいけないのか、ということを伝え続けないといけないです」と新たなチームづくりに難しさを感じる場面もあるようだ。

 それでも、「成長さえしてれば、ポテンシャルはあるチーム」と指揮官は断言する。「人間性の部分で一つとなれるはずだと思っているチーム、日々成長できるはずだと思っているチーム。あとは、若い新加入選手は化けると信じているので、すごく楽しみです。そのチームが1年目からこの信州の未来を背負っているシーズンを託されてるというのがまたすごく重いですけど、そういった良いチームになれるとは信じています」。

新チームにも自信を見せる©Basketball News 2for1

 売上12億円・平均観客数4,000人以上などの審査基準があり、2026年から開幕する新リーグ「Bリーグプレミア」を目指すうえでも非常に重要になる今シーズン。勝久HCは「いつも『一緒に戦ってください』といっていますが、“信州一丸 となってみんなでそれ(新リーグ基準クリア)を成し遂げたら、この先何十年の信州のバスケの将来が変わる。『みんなでそれを勝ち取った』ということに関われたら、特別な気持ちになれるんじゃないかなと思います。ぜひそんな特別なことを成し遂げたいなと思うので、一緒にやりましょう」とブースターにメッセージを送る。

 日々成長を重ね、10月7日の開幕戦にはどのような成長が見られるのか。またシーズンを通してどのようなチームを作り上げるのか。”新生”ブレイブウォリアーズの成長に期待が膨らむ。

(芋川 史貴)

練習生から契約を勝ち取った山本楓己©Basketball News 2for1
ルーキーの小玉大智(右)と井上裕介AC©Basketball News 2for1

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