Bリーグ1部は5月12から15日にかけてチャンピオンシップ(CS)2022-23クォーターファイナル(QF)を各地で行い、24チームの中から出場権を勝ち取った8チームがしのぎを削った。アルバルク東京(東地区2位)はアウェーの松江市総合体育館で島根スサノオマジック(西地区2位)と対戦。昨季のクォーターファイナルと同一カードとなった両者の対決は、こちらも昨シーズンと同様第3戦までもつれ込む展開となったが、A東京が第3戦を83-82で制し、雪辱を果たした。
20日から23日にかけて行われるCSセミファイナル(SF)に進出したA東京は、レギュラーシーズンに史上最高勝率を記録した千葉ジェッツと対戦する。
第3戦までもつれる激闘 全員がステップアップ
2年連続でCSで戦うことになった両者。昨季は第3戦にまでもつれ込んだ末、A東京が1勝2敗で涙を飲む結果となった。A東京は今シリーズを迎えるにあたりジャスティン・コブス、藤永佳昭がケガで戦線を離脱しており、田中大貴はロスター入りはしたものの試合には出場せず、実質10人体制で初戦に挑むことになった。
昨季のリベンジに燃えるA東京だが、第1戦は島根のペリン・ビュフォードに33得点17リバウンド14アシストとモンスター級の活躍を許し、黒星を喫してしまう。さらにこの試合ではライアン・ロシターが負傷し、残りのシリーズを9人で挑むことに。
後がなくなった第2戦、持ち前の堅守とリバウンドでロースコアの展開に持ち込むと、第3Q、安藤周人が2本の3ポイントショットを含む12得点をあげチームをけん引。このクォーターで32-14とアドバンテージをつかむと、第4Qは島根に追いあげられるも、小酒部泰暉、セバスチャン・サイズ、安藤らが着実に得点を重ね、82-72と勝ち切った。
1日のオフを挟み、1勝1敗で迎えた第3戦。試合は第1Q、A東京が4本の3Pを含む22得点をあげ22-10でリード。しかし、ホームで負けられない島根もビュフォード、ニック・ケイを中心に差を詰め、A東京が40-34と6点リードで後半へ。
第3Q、アレックス・カークやサイズのインサイドや小酒部の3Pで得点を重ねていくが、残り3分にはリード・トラビスのフリースローにより島根に一時逆転を許してしまう。しかし、残り2分39秒には平岩玄の得点によりリードを取り戻し、クォーターの締めにはザック・バランスキーがブザービーターでディープスリーを沈め、55-50と5点のリードで最終クォーターへ。
運命の第4Q、堅い守備とバランスの良いオフェンスで74—63と11点にリードを広げオフィシャルタイムアウトを迎える。しかし、青く染まった会場に後押しされた島根は谷口大智の2本3Pを皮切りに勢いをつかむと、ビュフォードの7得点で残り1分で81-81の同点に。直後のポゼッションでバランスキーがトラビスからファールを得ると、フリースローきっちり2本沈め、83-81で再びリードを取り戻す。残り43秒、今度はビュフォードがインサイドにアタックし小酒部からファールを奪うと、フリースローを1本決めて83-82と1点差に迫る。続くA東京はバランスキーが3Pを外し、島根は安藤誓哉がリバウンドを確保。最終ポゼッション、島根はビュフォードに最後のオフェンスを託す。トップからドライブを仕掛けたビュフォードだが、バランスキーにボールを弾かれアウトオブバウンズで仕切り直しに。残り11.7秒。トップでボールを受けたビュフォードは再度ドライブを仕掛けるも、A東京のダブルチームによりボールコントロールを失い、痛恨のターンオーバー。最後はA東京の安藤がボールを確保すると、激闘の末、83-82でA東京が勝利をつかんだ。
試合終了後、涙を見せる場面もあった安藤。勝利が決まった瞬間の心境についてこう話す。
「最後、自分のところでボールを保持してゲームが終了した瞬間というのは、本当にこみ上げるものがありました。去年はあそこで負けたので。自分のところにボールが来て勝った瞬間というのはすごくうれしくて涙が出てきましたし、チームでも何人かうれし涙を流している選手もいたので、この試合に懸ける思いというのは、チーム全員が何としてでも勝ちたかったんだなと思わせてくれる瞬間だったなと思います」
A東京は安藤が19得点4リバウンド2アシスト、サイズが17得点12リバウンド3アシスト、小酒部が16得点、バランスキーが14得点3リバウンド3アシスト、カークが12得点10リバウンドを記録。主力選手の多くをけがで欠く中、残るメンバー全員がステップアップし、昨シーズンの雪辱を果たす形となった。
第1戦で課題となった3P成功率が向上
負ければシーズン終了という大きなプレッシャー、そしてケガ人が多い中でのプレーについてデイニアス・アドマイティスヘッドコーチ(HC)はこう語る。
「選手にとって身体もですがメンタル的にも疲労が非常に溜まっているシリーズです。特に不慣れなポジションで戦わなければいけない傾向ですので、やはりケガ人が数多いので、選手の負担が非常にあったと思います」
第3戦の前に1日の休養日を挟んだことが大きなリフレッシュになったと安藤は話す。
「昨日(休養日)はチームミーティングもありましたし、ここ(アリーナ)にきてシューティングもありましたし、あまり(試合のことについて)深く考えず、リラックスして体を休めることに集中した。ほかの試合を軽く流しながら気持ちを切らさず、かなりリラックスしたかなと思います」
第1戦では3Pの成功率が28.6%(12/42)と低調。島根にインサイドを固められた結果、アウトサイドからのシュートを選択せざるを得ない場面が多かった。レギュラーシーズンはリーグ最下位の平均21本だった3P試投数も42本と増え、それをなかなか得点に繋げられず苦しい時間帯が多く見られた。
しかし、インサイドを経由してからのアウトサイドショットを増やしたことにより、第3戦では3P成功率が41.2%(14/34)と向上。ペイント内での得点は20-36と島根に劣っていたものの、外から効率よく得点を重ねることで勝利をつかみ取った。
「オフェンス面でインサイドを中心に攻めて、インサイドからアウトサイド(へボールを出す)。そうすればアウトサイドシュートの確率が必ず上がる、自信を持って打つ、そういったことをずっと話していました」とアドマイティスHCは修正点について語る。
「特に第1戦のあとでも言いましたが、シュートが決まればそれなりに自分たちも楽になりますので、まずはディフェンスで相手の狙いどころを止めてから良い形でオフェンスに繋げる。このポイントを修正しました」
また、第3戦で9本中4本の3Pを決めた安藤も「うち(A東京)にいる選手はシュートが上手な選手がたくさんいますし、チャンピオンシップとレギュラーシーズンは別ものなので」とチームの戦略について言及。
「辻さん(広島ドラゴンフライズ・辻直人)が言ったように、チャンピオンシップは誰かがヒーローになる試合でもありますし、こういった試合もあれば、1戦目のようにシュートが全く入らない試合もあると思うので。本当に今日は全員がどれだけ外れようと気持ちよくシュート打っていましたし、セバス(サイズ)とアレックスがオフェンスリバウンドを頑張ってくれると信頼していたので、本当にお互いがお互いを信頼してこの本数を打てたのかなと思います」とチームメイトとの信頼関係の上で残せた結果であることを強調した。
SFは千葉ジェッツと4年ぶりに対戦
同日に行われた千葉Jと広島の第2戦の結果により、SFでの対戦相手が千葉J(東地区1位)に決まった。今シーズンは終盤の2連敗を含め、レギュラーシーズンでは4回の対戦で1勝3敗と負け越し。2017-18、2018-19と2シーズンにわたってファイナルで優勝トロフィーを争った因縁の相手と4シーズンぶりにCSで対戦することとなった。
指揮官としては初めて千葉JとCSを戦うアドマイティスHCはライバルとの対戦に意気込みを見せる。
「千葉Jさんのチームカラーやはりフィジカルで非常にコンタクトが強いチームだと感じています。それとオフェンスもアップダウンのペースが非常に速いチームです。まず、フィジカル面で負けないこと。彼ら以上の強い気持ちを持ってプレーすること。ペースをコントロールすること。アップダウンでポジションを増やすんではなく、自分たちのペースで主導権を握ってからプレーすること。
千葉Jさんは今シーズン、リーグでナンバーワンのチームですし、オールジャパン(天皇杯)も優勝していますので我々にとってはチャレンジです。ですので、ポイントとしましてはコンタクトに負けないこと。しっかりとペース配分をしてから自分たちのペースでプレーすること。まずは選手たちも疲労が溜まっていると思いますのでしっかりと休養してからまた徐々に千葉戦に向けて準備をしたいと思います」
レギュラーシーズンを負け越して終えたことについて安藤は「レギュラーシーズン最後(4月29、30日)に2連敗していますが、今はもう忘れていいと思いますし、前回(第2戦後)も言ったと思うのですがレギュラーシーズンとチャンピオンシップは全くの別物」と強調。レギュラーシーズンで2連敗していた島根をアウェーで倒した経験があるからこそ、発する言葉からも自信が感じ取れる。
「(CSはレギュラーシーズンと)準備するものも違い、相手に対して何をするべきかというのは本当にこの1週間で各々がしっかりと考えないといけないし、前回どこでやられたのか前回何が悪かったのかというのをまず僕自身も含め、全員が反省をして、週末に向けていい準備ができたらなと思います」
アウェーでの島根とのシリーズを制し、セミファイナル進出を果たしたA東京。ケガ人が多く出た中でも全員でステップアップし、SFへの切符を手に入れることが出来たことは大きな自信に繋がったに違いない。島根に雪辱を果たし、勢いに乗ったA東京は「鬼門」となる千葉J戦で『WE FAZE』を見せることができるのか。2019年以来の王者奪還へ向けて、A東京の挑戦は続く。
(田名さくら)