Bリーグ1部・西地区首位の琉球ゴールデンキングスは4月29、30の両日、ホームの沖縄アリーナに今シーズンこれまで2戦2敗だった難敵・大阪エヴェッサを迎え、第1戦は75ー64、第2戦は86ー72で白星を重ねた。連勝を10に伸ばしたと同時に、地区優勝マジックを「1」まで減らして西地区6連覇に王手をかけた。2試合とも「1クオーター平均18点以下」というチーム目標をいずれも達成し、チャンピオンシップ(CS)を目前に武器である堅守が安定してきた印象だ。
ピックプレーの守備に手応え ニュービルを「3Pゼロ」に
大阪がセンターのショーン・オマラを負傷で欠く中、琉球にとって最大のテーマは絶対的エースであるディージェイ・ニュービルをいかに抑えるかだった。今シーズン、12月28日のアウェー戦では27点、4月5日のホーム戦では34点を許し、多彩なピックプレーに手を焼いてきた相手だ。
琉球は第1戦からニュービルに対しショーディフェンスやスイッチで対応する。特にジャック・クーリー、ジョシュ・ダンカン、アレン・ダーラムのインサイド陣がスリーポイントライン付近まで張り出してチェックし、今季38.0%という高い成功率を誇るニュービルの3Pにプレッシャーをかけ続けた。結果、第1戦は放ったスリー8本全てを落とさせ、わずか10得点に抑え込んだ。
第2戦は27得点を奪われたものの、同様な守備を貫き、またもスリーは一本も許さず。アシストは1戦目10本、2戦目7本とプレーメークはされたものの、勝負強いスリーを決めまくる“ニュービルタイム”を最後まで防ぎ、大阪を勢い付かせる時間帯は2試合を通して極めて少なかった。
30日の会見で、桶谷大HCはニュービルに対するディフェンスをこう評した。
「ニュービル選手に対してガード陣がプレッシャーをかけたり、ビッグマンがボールピックの時にしっかり前に出たりすることができていました。ウィークサイドの選手もドライブレーンに入り、彼に簡単に打たさないようにすることがチームとしてできました。今日は27点を取られましたけど、スリーを決めて、楽にチームメートにボールをはたいて点も取らせる、という彼がやりたいことを防ぐことは遂行できたと思います」
ダンカンも「スイッチも含め、彼にゆとりを与えない強固なディフェンスをコミュニケーションを取りながらできました。全体を通し、チームとしていいディフェンスができました」と手応えを語った。
存在感を増す“日本代表センター”渡邉飛勇
第2戦では大きな収穫もあった。日本代表のセンターとしても活躍する渡邉飛勇が持ち味を遺憾なく発揮したことである。
第1Qの残り2分44秒でこの試合初めて出場すると、1分を切った時間帯に2本連続でオフェンスリバウンドを奪取。さらに第2Qもスタートからそのままコートに立ち、オフェンスで華麗なボールムーブメントからフリーのウイング選手にキックアウトしたり、素早いリムランからのレイアップやプットバックで得点を決めたりと躍動した。
ディフェンスでもリバウンドやブロックショットに堅実に飛び続け、存在感を示した。いつもは前半のみの出場にとどまることが多かったが、この試合は最終第4Qまで各クオーター全てで出場し、自身最長となる12分34秒のプレータイムを得て6得点、6リバウンド、2アシスト、1ブロック、1スティールを記録。その選手が出場している時間帯の得失点差を示す「+/−」(プラスマイナス)の項目は、チームで最も高い「+16」に達した。
試合後、渡邉は「リバウンドやボールを動かしてチームメートにシュートをさせることなど、エネルギーを持ってプレーし、自分の役割を徹底できたことはよかったです。走ることやブロックショットなどの働きも、今後もやっていきたいです」と振り返った。
強力なインサイド陣を抱える琉球のインサイド陣だが、トランジションでいち早く相手ゴールに突進できる走力や、相手を背後からでもブロックできるリムプロテクターとしての能力は際立っている。その個性は、自身も自らの強みとして自覚しているようだ。
「JD(ダンカン)のスリーや、AD(ダーラム)のような身体能力を生かした得点、ジャックのリバウンドと比較する訳ではないですが、自分は機動力があると思っています。コート上で正しい位置を走り、素早く動く。このチームは素晴らしいセンスがある外国人選手がいる中、自分も強みを出したいです」
ベンチにいる時間もチームメートの好プレーに立ち上がって大きくリアクションし、コート内でも笑顔を見せながら常にポジティブなパワーをチームに注入している渡邉。ダンカンの言葉に、仲間からの信頼度の高さもうかがえる。
「彼はプレータイムが長くない時でも常に練習中から全力で準備をし、チーム練習以外でのワークも重ねています。チャンスが訪れた時に活躍ができることが彼の準備を表していますし、チームとしても素晴らしい財産になっています」
最終節・広島戦のポイントは「ゾーンDF」
CSを目前にチームディフェンスの完成度の向上、“第4のビッグマン”の台頭と好材料が続き、西地区6連覇も掴みかけている琉球だが、地区優勝は決して安泰な状況ではない。5月6、7の両日にアウェーであるレギュラーシーズン最後の連戦は同じくCS進出が決まっている西地区4位の広島ドラゴンフライズが相手であり、仮に2連敗し、西地区2位の島根スサノオマジックがファイティングイーグルス名古屋との最終2戦を連勝すれば島根が地区優勝をさらう形となる。
広島とは前回、3月8日に沖縄アリーナで対戦した際は86ー78で琉球に軍配が上がった。フィリピンの“至宝”と称される220cmのカイ・ソットのBリーグデビュー戦で、琉球はゾーンディフェンスも使って対応し、それがはまった。この試合を念頭に、桶谷HCに次節のポイントを聞くと、こう返ってきた。
「前回はソットが出てきて3ビッグの時にゾーンDFがはまって、エバンスが外に出ないといけなくなり、彼のインサイドアタックがなくなっていいディフェンスができた。ただ、最近広島は3ビッグを使う時、エバンスではなく外のシュートが入るビッグマン2人を使っているところがあるので、ゾーンとマンツーマンをうまく併用しながら対策できたらいいかなと。オフェンスはボールムーブさえしてれば相手が2ビッグでも3ビッグでもアドバンテージは取れると思います」
この話の前段として「広島さんにゾーンディフェンス対策をいっぱいさせたい」と話していた指揮官。笑顔で語り、半分冗談ぽかったが、おそらく本気の部分が大きいだろう。そう推測できる理由は二つある。
一つ目はチーム事情だ。
現在、琉球は外国籍の3人に加え、サイズのある渡邉とアジア特別枠のカール・タマヨがいるが、重量級のビッグマンが多い琉球は5番タイプの渡邉を3ビッグで起用することはほぼない。3番タイプのタマヨは3ビッグで起用されることはあるが、まだタマヨがチームにフィットしきれておらず、琉球はサイズの大きい相手に対して今後もゾーンDFのカードが必要になる場面が出てくることが予想される。つまり、広島は現在のゾーンDFの出来を試すには格好の相手となる。
もう一つは、CSの組み合わせである。琉球はこのまま西地区1位でレギュラーシーズンを終えた場合、帰化選手のニック・ファジーカスを擁し、リーグトップ級の強烈なビッグラインナップを武器とする川崎ブレイブサンダースとセミファイナルで対戦する可能性がある。そこでゾーンDFを使うことも十分にあり得る。初の年間王者を目指す中、桶谷HCの念頭にそこまであってもおかしくはないだろう。
地区6連覇が懸かり、CSの結果を占う上でも重要な意味を持つ広島との2連戦に注目だ。
(長嶺 真輝)