
昨シーズン、クラブ史上初となるBリーグチャンピオンシップ(CS)出場という快挙を成し遂げた群馬クレインサンダーズ。カイル・ミリングHC体制2年目の今季は、エースのトレイ・ジョーンズやヨハネス・ティーマンが残留したほか、機動力のあるケリー・ブラックシアー・ジュニアや若手ホープである中村拓人といった多才な新戦力が加わった。新戦力の加入に層の厚さはさらに増し、昨シーズン以上の戦力がそろった。
そうしたチームの中で静かに闘志を燃やすのが、キャプテンの辻直人だ。36歳を迎えたベテランに、今シーズンのチームの印象や日本代表への思い、自身の支援活動などについて聞いた。(※取材日:2025年8月25日)
「責任感やプレッシャーもある」
ーー昨シーズンを振り返ってみていかがですか?
僕自身、群馬での2シーズン目ということで、メンバーに大きな変化はありませんでしたが、その中で監督も変わって、最初は目指すバスケットができない時期もあり、少し苦しい時間を過ごしました。でも終盤になるにつれて、チームが一つになってきた実感もありましたし、それぞれが役割を理解してそれを全うするマインドになれて、非常に良いチームになれたのではないかと思います。結果、目指しているところは達成できなかったですが、良いシーズンを過ごせたと思います。
ーー東芝時代から14年目を迎えます。あの頃から変わった部分はありますか
考え方はもちろん変わってきますし、最初のシーズンくらいは本当に勢いで、とがっていた部分もありました。先輩方がいて、フォローしてくださる方がいてという中でやらせてもらっていたんですが、代表も経験してまだまだ成長しなきゃいけないなというところもあり、またけがもあり、いろいろなシーズンを過ごしてきました。
その中で、年齢もあまり言い訳にしたくないというか、あまり関係ないというふうに思っているんですけど、とにかく若い選手に負けたくないという気持ちもありますし、まだまだできると思っています。解説の経験も含め、本当に俯瞰的、客観的に見られるようになってきました。焦る気持ちもゼロではありませんが、それでも年々落ち着いてやれているのではないかと思いますし、先ほども言いましたが、優勝したいという思いが強いです。なので、自分のパフォーマンスを出せたらベストなんですけど、それよりも、本当に優勝できればこのキャリアにおいて思い残すことはないと感じています。
ーー今シーズンの目標は?
「優勝」です。やっと今シーズンは「優勝」という言葉を口にできるシーズンになりました。今までのシーズン、広島にいた時もそうですけど、(加入初年度)広島もシーズン最下位だったシーズンでしたし、その2年目はCSに出場して、次の年(2023−24)広島が優勝した年は(群馬に加入して)僕はいなかった。昨シーズンはやっとCSを目指そうという目標を達成できて、だからこそ今シーズンやっと「優勝」ということを口に出して言える。その分、責任感とかプレッシャーもありますけど、そのプレッシャーも非常に久々で楽しく過ごせています。
ーー今シーズン、チームとして、個人として成長していきたい部分は
チームとしては、一年だけ強いとかではなくて、将来的には「強豪」と言われるチームになっていければと考えています。その土台づくりとして、群馬は「これができて当たり前」と言えるような高いレベルを目指したいと考えています。昨シーズンの経験もふまえて、非常に良いチームになりました。昨季の経験を各選手が糧にしているので、新加入の選手にもその良い流れに乗ってもらえれば、間違いなく良いチームになると思います。その積み重ねがチームの基盤になると考えています。
個人としては、昨シーズンにキャプテンを務めた経験は非常に大きかったです。何より今年はもっと意見を言いやすくなるといいますか、リーダーシップというわけではありませんが、周囲の人柄を把握する必要もあり、チームをどうしていくかという課題もありました。今シーズンはそういった経験を生かせると思いますし、キャプテンとしてさらに成長していきたいと思います。あとは3ポイントシュート成功率でリーグ1位になるなど、何かしらタイトルを獲得できればとも思っています。

「群馬全体を盛り上げていきたい」
ーー現在「スリーピース」という支援活動をされていますが、始めたきっかけを教えてください。
川崎時代に、脳の病気を抱えた小学生の男の子がいて、その子が(辻選手の)大ファンだということで、お母さまからビデオメッセージをいただく機会がありました。「元気づけてもらえませんか?」ということで、僕から「元気になって、また会場でお会いできるのを待っていますね」みたいなビデオメッセージを送らせていただきました。するとその子は本当に回復し、実際に試合会場で再会することができました。
その子ひとりではなくて、もっと多くの子どもたちにそういう影響をあたえることができるのではないかという可能性と、与えたいという強い希望が湧いてきて、「スリーピース」を立ち上げました。広島在籍時にも活動しましたし、群馬でも昨シーズン、令和6年能登半島地震に対する募金活動を行い、現地も訪問しました。
この活動は、困難に直面する子どもたちを勇気づけたいという思いで始めましたが、実施することで逆に私が元気をもらい、いつも励まされていますし、そういう困難に立ち向かっている子どもたちに応援してもらえているんだと思うと、より頑張らなければと感じ、僕自身のモチベーションも大きく高まります。
今後は、僕だけではなく、さまざまな競技の選手にもスリーピースに参加してもらえたらと考えています。スリーピースは「辻直人の~」というものではなく、それぞれの選手自身のスリーピースとして活動してもらえればと思います。アスリートであれば誰でも参加できますし、「選手」「子どもたち」「応援してくれるファン・第三者」の三つが揃ってスリーピースという意味もあります。そうした輪を広げていければと思います。
ーーその活動を広げていくためにも持ち味である3Pシュートが重要ですが、今シーズンの目標はありますか?
3Pシュートは100本以上決めたいです。また、何かしらキャリアハイも更新したいと考えています。昨シーズンは3Pシュート成功率でキャリアハイ(成功率43.5%)を記録し、今シーズンは成功率ももちろん狙いつつ、本数の面でも自己ベストを目指したいと思っています。
ーー夏にはアジアカップがありましたが、今の日本代表のバスケットボールをどう見ていますか?
ワールドカップとパリ五輪で日本のバスケットボール熱を高めてくれたことに、本当に感謝しています。今夏のアジアカップは結果的に悔しいものになってしまいましたが、八村選手や河村選手がいないと言われている中で、それまで日本代表であまりプレー機会がなかった選手たちが出場し、良い教訓であり良い経験になったと思います。
ホーバスHCも「アジアカップ優勝」を掲げていましたが、今回は、それまで選ばれなかった選手や若手の選手を試す場でもあったと思います。世間的には結果を非常に重く受け止めていると思いますが、こうした経験は日本代表でしか味わえないものですから、今回選ばれた12人はもちろん、選ばれなかった選手も、この経験をぜひ次へのモチベーションにしてもらえれば、必ず結果につながると思います。
そういうところは、僕自身、苦しい日本代表時代を経験しているので、その気持ちは痛いほど分かります。ぜひ頑張ってもらいたいですし、皆さんのことを心から応援しています。
ーー最後に、今シーズンの目標、意気込みを聞かせてください
優勝を目指して、今シーズン通してどんな困難があってもやり遂げたいと思います。また、チームとしてもクラブ全体としても、まだまだ上を目指せると信じています。今、太田市が非常に盛り上がっていますが、群馬は広い県なので、群馬全体を盛り上げていきたいです。群馬クレインサンダーズは、まだまだ県内全域に浸透しきれていない部分もあると思います。群馬県全体で応援していただけるチームになりたいです。






