
Bリーグ2部(B2)東地区の信州ブレイブウォリアーズは13日、ANCアリーナ(安曇野市)でプレシーズンゲームを開催。韓国・KBLの強豪、水原KTソニックブームと対戦し、77-85で敗れた。
今季新たに5選手が加入した信州。さらに、試合当日には練習生だった横山悠人の選手契約と福島ハリス慈音ウチェの特別指定選手契約も発表されるなど、若手中心のロスター構成となった。
そんな若いチームの中でも、活躍を見せたのが小栗瑛哉だ。秋田から新たに加入した小栗は、この試合で自身のレギュラーシーズンのキャリアハイを上回る14得点を記録。勝久マイケルヘッドコーチ(HC)からも信頼を得ており、今後の活躍が楽しみな結果となった。
キャリアハイ14得点 勝久HC「どんどん学んで成長してほしい」
試合は第2クォーター(Q)まで信州がリードする展開が続くも、エリエット・ドンリーや栗原ルイス、渡邉飛勇の欠場に加え、ウェイン・マーシャルが負傷により試合途中にコートを去り、徐々に攻守でリズムを失っていく。それでも信州はマイク・ダウムの連続3ポイントシュートで一時は水原を射程圏内にとらえたものの、高さのある水原にペイントを支配され、最終的には振り切られた。
そんな中でも、先発ポイントガードに抜てきされた小栗のプレーは光っていた。チームで2番目に長い27分43秒間プレーし、3ポイントシュート3本を含む14得点を記録。外角シュートの他にも、ドライブやファールを誘発してフリースローを得るなど、多彩なスコアリング能力を見せつけた。ディフェンスでも前線からプレッシャーをかけ続け、相手のミスを誘うなど、攻守両面でチームに貢献した。それでも、試合後の小栗の顔には悔しさがにじんでいた。その理由を小栗はこう説明する。
「ブースターさんの前で初めての試合で、もちろん勝ちを届けたかったんですが、なかなか厳しい状況でした。その中で全員がファイトしてやれたことはすごく良かったんですけど、結果として負けているので、まだまだ成長しないといけない課題がたくさん見つかったプレシーズンだったなと思います。
ディフェンスのインテンシティーをつくることが僕の仕事だと思っているので、オフェンスにも問題があるんですけど、それ以上に(相手に)85点取られてしまったということは、ディフェンスの部分にも問題はありました。(ディフェンスには)技術はもちろん必要ですけど、それ以上に気持ちだと思うので。先発のポイントガードとして出させもらった時に 、ディフェンスのインテンシティーがつくれてなかったのは、僕の責任なのかなと思います」
反省点を口にした小栗だが、勝久HCは今後の成長に期待を寄せる。
「エナジーは全く心配なく、常に頑張ってくれる選手です。それでもガード陣も急いでしまう場面がありました。一つの例ですけど、マイクがうまくスクリーンをかけられないという場面もありましたが、それは両方がもっとうまくやらないといけないことです。どんどん学んで成長していってくれることを期待しています」

待望の“FLY AGAIN”に歓喜「温かい雰囲気の中でやらせていただいた」
ファンの前でプレーする初めての試合だったのにもかかわらず、強度の高いプレーでチームをけん引していた小栗。チームに合流して間もない時期に行った取材では、戦う姿に関してこう言及していた。
「大事な1シーズンになると思うので、僕としても新加入だからといって控えめに行くのではなく、積極性を出して『チームを引っ張るぞ』ぐらいの気持ちをオンコートでもオフコートでも出していきたいです」
ロスターもなかなかそろわない中、その言葉をプレーで体現した小栗。試合後には「オン・ザ・コート1(コート上に外国籍選手が1人の状態)の時やオール日本人の時にでも『できる』というところは見せられたと思う。日本人でも戦っていけるぞということは見せられたと思います」と胸を張った。
第2Qの残り6分33秒には、小栗が3Pシュートを沈めた直後に生原将秀がダウムにビハインド・ザ・バックでアシストを出し、会場に集まった約1700人のファンを沸かせるハイライトシーンも演出した。事前の取材で「楽しみにしている」と語っていたタイムアウト時の「FLY AGAIN」も体験し、信州ブースターの熱量も肌で感じたという。
「緊張することなく、温かい雰囲気の中でやらせていただきました。みなさんの前でプレーすることが楽しみだったので、無事にけがなくここまで来れて、プレシーズンのコートに立たせてもらったというのは本当に自分の中でも大きな成長だと思います」

Bリーグラストシーズン「良いチームを目指して」
プレシーズンとはいえ、水原戦では2ガードを軸としたプレーや、ペイントアタックからスキップパスを飛ばしてシュート狙ったり、オフボールの選手がカッティングしたりと、昨季とはまた違ったプレーが多く見られた信州。チームが若返った分、プレーも早さを増し、コート上の5人が流動的に動くシーンも多く見られた。
それでも、勝久HCの目指すレベルにはまだまだ道半ばだという。指揮官は話す。
「今、我々が取り組んでいる『どういう原理原則を持ってプレーしたいか』『どういうファンダメンタルを持ってプレーしたいか』『どういう習慣をつけたいか』というところが(まだできていなかった。)みんな楽しみにしていた試合で興奮もしていたと思いますし、ウェインのケガもあったりして、コートに出したことないラインナップになったりもして、何をしていいかわからないようなポゼッションもありました。
何があっても我々の原理原則を持ってプレーできるという場所に行きたいので、何か一つ(アクシデントが)あるとそれができない(ということがあれば)、それは習慣づいていない証拠なので。開幕まで時間はあまりないので、危機感を持って、取り組もうとしていることが習慣づくまで続けたいと思います」
シーズン開幕前にファンの前でプレーするのは水原戦が最後であり、次にファンの前でプレーするのは10月4日の山形ワイヴァンズとの開幕戦となる。上場の「信州デビュー」を果たした小栗も、開幕戦に向けてさらなる意気込みを見せる。
「勝ちを届けないとブースターさんにも気持ちよく帰ってもらえないなと思います。気持ちよく帰っていただけるように、まだまだチームとしても、個人としても努力して、良いチームを目指していきたいと思います」
来季は新リーグ「Bプレミア」に参戦することが決定している信州。B2でのラストシーズンとなる今季は、「B2優勝」で有終の美を飾れるか。新たな司令塔としてチームをけん引する小栗の活躍にも期待したい。

(芋川史貴)






